ノース学校に行く!

「おはよー!」

 千春はウキウキで応接室に入る。


「おはようチハル、元気ね。」

「なんかさー、いつもと違う事するときって楽しくない?」

「ノースが一緒に行くだけでしょ?」

 サフィーナは何が楽しいのかわからないが楽しければ良いかと笑みを浮かべる。


「朝食はどうします?」

「まだ余裕あるし皆起きる前に何か作るよ。」

 千春はそう言うと制服の上からエプロンを着け厨房に移動する。


「何つくるんですぅ?」

 モリアンが興味深そうに千春に問いかける。


「何食べたい?」

「え~っと~、ご飯です?パンです?」

「んー、今日はパンって感じかな。」

 千春はそう言うとアイテムボックスから焼き立てのパンを取り出す。


「ルノアーさんの食パンでサンドイッチでも作るか。」

「はーい!玉子サンド食べたいです!マヨたっぷりで!」

「それマヨ玉子パンじゃん、良いけど。」

 鍋に水を入れ玉子を浮かべると火にかける。


「いつも思うんですけどぉ。」

「なに?」

「なんでいつも水から玉子茹でるんですか?」

「割れやすいから。」

「割れるんですか?」

「割れやすいんだよ~、あと黄身が真ん中に来やすいから綺麗。」

「へぇ~。」

 野菜を取り出し水で洗い、食べやすい様に千切っていく千春。


「こっち手伝いますねー。」

 モリアンはサラダを担当で準備を始める、後ろではラルカとマクリが皿を準備していた。


「ラルカ、レナ兄とどんな感じー?」

「ほぇ!?えっとぉ、動物園に行きました!」

「へぇ~、デートしてんだ。」

「はい、今度ゆうえんちと言う所に連れて行ってくれるそうです。」

「・・・リア充してるねぇ。」

 楽しそうに話すラルカに千春は微笑む、そして手は動かしパンを薄く切っていく。


「バター塗りますね。」

 サリナも手伝いに来ると、パンを並べて行く。


「あとはお任せください。」

 ナッテリーは千春に言うとパンを切る。


「やることないなった。」

「チハルがする事無いのよ?これだけ侍女が居るんだから。」

「んー、料理が趣味だから別に良いんだけどねぇ。」

 手持無沙汰な千春はプチトマトのヘタをプチプチと千切る。


「良くおかぁさんの料理手伝ってたなぁ。」

 プチトマトを転がしながら呟く千春。


「料理上手だったの?」

「うん、ものすっごく上手だった。」

 思い出しながら千春は微笑む。


「おはよう千春!手伝うよ!」

 頼子が厨房に顔を出す、後ろから申し訳なさそうにノースも顔を出す。


「あのぉ私もお手伝いしたいです。」

「それがねぇ・・・。」

 千春は侍女達を見る。


「やることないなったんよ。」

「ないなったんな。」

「うん。」

 やる事が無くなった事を伝え応接室に戻ると、皆が制服に着替え終わり学校に行く準備をしていた。


「ノースちゃんも着替えてね。」

「はい。」

 千春の予備の制服を頼子達が着替えさせる。


「おー可愛いな。」

「ノースちゃん歳いくつなの?」

「19ですが。」

「年上だった!」

「まさかの年上!?」

「15歳とかそれくらいかと思ったよ。」

 千春達と身長も変わらず、こちらの世界の人としては小さいノースは幼く見える。


「その・・・あまり食事も頂けませんでしたから、成長が止まったみたいで。」

「マジか、ノースちゃん沢山食べな!」

 美桜は運ばれて来たサンドイッチを手に取りノースに渡す。


「良いのですか?」

「よきよき、みんなも食べよー。」

「ほーい頂きまーす!」

 テーブルに並べられたサンドイッチやサラダ、果実ジュースで皆は朝食を取る。


「チハルさーん!」

「シャリーちゃんおはよー。」

「今日のお弁当お持ちしましたー!」

「沢山ごめんねー。」

「大丈夫です!チハルさんの昼食作りはルノアーさん達も楽しんで作ってますから!」

「今日は8人分とペット3匹分だからねぇ。」

「わっちが預かるばーい。」

「ビェリーよろ~♪」

 ビェリーはカートの上にある弁当を影に落とす。


「ごちそうさまでした。」

「「「「「「ごちそうさまでしたー。」」」」」」

「ごちそうさまでした?」

「ノースちゃん、こっちでご飯食べる時は頂きます、食べ終わったらごちそうさまでしたって言うんだよ。」

「わかりました。」

 コクコクと頭を振り頷く。


「さて、それじゃいきまっしょい。」

「うぃーっす。」

 皆は門を通り玄関を開ける、そして学校へ向かった。



----------------



「くるま怖いです。」

 ビクビクしながら千春達の後ろを付いて来るノース。


「コン、今ノースちゃんは消えてるんだよね?」

「はい!」

「私達には見えてるよ?」

「見えた方が楽しいと思って千春さん達には見えるようにしてます!」

「そんな事出来るんだ、凄いな、ルプは?」

『いるぞ。』

「ルプは見えないのね。」

『コンのような器用な事は出来ねぇなぁ。』

『わっちも無理やねぇ。』

 ルプとビェリーは一緒に消えているようで見えないが声は聞こえた。


「はい!ここが学校です!」

「千春、恥ずかしいよ?」

 思わず声を上げた千春、門を通る学生がチラリと千春を見る。


「・・・てへっ。」

「やめてよねー、気持ちはわかるけど。」

 麗奈も苦笑いする、そして皆は教室に移動すると学生たちがワイワイと騒いでいた。


「おはよー。」

「おっはよーチハル、ヨリ。」

「ミオ!アレ持って来たよー!」

「ソラおっはー。」

 女子がそれぞれ皆に声を掛け話始める。


「コン、ノースちゃんよろしくね。」

「了解でっす。」

 千春はこそっとコンに言うと、コンは返事をし部屋の隅に移動する。


『気配と音を消しておく、少しくらい動いてもバレないから安心しろ。』

 ルプも一緒に居る様でノースに話しかける。


『ついでにこっちには人が寄って来んようにしとるけん、心配せんでよかよ。』

 ビェリーも何かしらの術を掛けているようで、安心するように話しかけている。


「それじゃ学園生活を見学してもらいましょー。」

 千春はノースに言うといつもの様に朝の騒がしい会話に入って行った。



----------------



「やっと昼だぁ!」

「お腹空いたー。」

「何処で食べる?」

「中庭で良くね?」

「食堂は多いだろうからねー。」

「ノースちゃん、私に変身して、コン私消してみて。」

 千春はそう言うとノースが変身する、そしてコンが千春の頭の上に飛び乗り姿を入れ替える。


「良いのですか?」

「大丈夫っしょ、何か言われたらヨリ達がフォローするし。」

「ま、返事してニコニコしてたら大丈夫じゃん?」

 頼子も気にせず中庭に移動する、チラホラとグループが座り食事を取っていた。


「さ、今日は何弁当かな!」

 青空と大愛が楽しそうに弁当を受け取ると蓋を開ける。


「うぉー!焼肉弁当!」

「すっご!この肉アレじゃん!?」

「魔国牛・・・ヤバいヤツだ。」

「ルノアーさんお弁当に力入れすぎじゃん?」

 キャッキャと喜ぶJK達、そしていただきますと皆で言うと箸を付ける。


「んめぇ!!!!!」

「昼にコレは贅沢すぎる。」

「んまいぃぃぃ。」

「ノースちゃんも食べなー?」

 日葵は弁当をじっと見つめたまま動かない。


「あ、はい、えっと・・・この2本の棒で食べるんですか?」

「・・・あ!箸使えないのか!」

「そう言えば昨日のペッパーライスはスプーンだったね。」

「他国はまだ箸普及してなかったかぁ!」

「ビェリースプーンかフォークある?」

『あるばーい。』

 声が聞こえるとフォークだけがピョコっと現れる。


「はい、ノースちゃん。」

「有難うございます・・・。」

「どうしたの?」

「・・・昨日から物凄く美味しい物ばかり頂いて、私は首を切られても仕方ないと思っていたのに・・・。」

 悲しそうな顔をするノース。


「ノースちゃん・・・お願い、泣かないで・・・私が泣いてるようにしか見えないんだよ。」

 千春は姿を消しているが皆からは見えている、そして他の生徒から見えているのは泣いている千春の姿をしているノースだ。


「申し訳ありません。」

 ハンカチで涙を拭き笑みを返すノースすると声が掛けられる。


「チハルどうしたー?」

「ヨリ、チハル泣かせたらダメじゃん。」

「どうしたん?いじめられたん?」

 友達と思われる女子高生が声を掛けて来る。


「いえ!大丈夫です!」

 ノースは笑みを返し答える。


「・・・チハル、どうしたん?」

「大丈夫なのは分かったけど・・・大丈夫じゃ無い返事が返って来たんだが?」

「なに?チハルどうした?」

 友達は千春の様子と言うよりも、いつもと違う千春に戸惑う。


「罰ゲームで今日一日お嬢様設定なんよ、それでさっき笑いすぎて泣いてただけだよ。」

 麗奈が友達に説明をする。


「はい、そうなんです、面白すぎて涙が止まらなくて。」

 ノースはそう答え微笑む。


「・・・マジでお嬢様じゃん。」

「えー!?演技でこんなに?女優じゃん。」

「すげぇ、チハルそんな才能あったんだ。」

「有難うございます。」

 友達に答えるノース、そして友達は食事が終わったようでそのまま離れて行った。


「やっぱり話し方かね。」

「いや、なんだろう、ノースちゃんに漂う雰囲気が違うんだよね。」

「わかる、チハルには無い何かがあるんだよね。」

「いや!逆じゃん?チハルにしか無い物がノースちゃんに無い!」

「ダイア、何それ。」

「えっと・・・粗暴さ?」

「酷い!」

 大愛の一声に千春は顔を手で隠し泣き真似をする。


「うぇーん。」

「おーよちよち、チーちゃんはそのままでいいんだよ。」

「チーちゃん言うなしぃ・・・シクシク。」

 頼子によしよしされながらも文句を言う千春、そして皆はのんびりした昼休みを過ごした。








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