ノースちゃんコンビニに行く!

「ノースちゃんって貴族なの?」

 食事が終わりまったりしながら千春が問いかける。


「ノースちゃんって気品あるよねぇ。」

 頼子が千春とチラッと見ながら言う。


「はい、貴族でした。」

「でした?」

「没落しました。」

「えぇ~?今は?」

「・・・使用人として今回指示した貴族の元で働いております・・・働いておりました。」

「ひどいなぁ。」

「いえ、元からその貴族の娘に何か有れば身代わりにされる身でしたから。」

「尚更ひどいな!」

 千春はプンプンと音が出るかのように怒る。


「元貴族だからチハルには無い気品があるのかぁ。」

 麗奈がポツリと呟きながらノースを見る。


「まぁ私は貴族経験ないからしゃーなし!」

 千春が言うとノースが驚く。


「え!?王女殿下で御座いますよね?」

「あー、うん、お母様もう言っちゃって良いんですよね?」

「えぇ、これからの事を考えればチハルの事は知ってもらった方が良いわ、勿論他言無用よ?」

「はい、分かっております。」

 マルグリットが言うとノースは頷く。


「えっとぉ、私は異世界から来た女子高生なの。」

「・・・はい?」

「チハル、女子高生って言葉わかんないっしょー。」

「異世界もなー。」

 美桜と青空が千春に言う。


「あ、千春、ジュースある?」

「んー、オレンジジュースとかならあるよ。」

「炭酸は?」

「無いね。」

「マジか、コーラ飲みてぇ。」

「うちもー!」

「私買って来るわ、チハルあっちに送ってー。」

「あ、私も行くよ。」

 千春が立ち上がり他のメンバーも立ち上がる。


「皆行くの?」

「お菓子買う。」

「プリン食べたい。」

「コーラ飲みたい。」

「ポテチー。」

「ビェリー荷物持ちよろ~。」

「まかせりー。」

「千春、ノースちゃん連れて行ったら?異世界の意味わかるっしょ。」

「んー、そだね、ルプ、コン付いて来て。」

「おう、護衛は任せろ。」

「はーい。」

 皆は門の部屋に行く。


「これは何ですか?」

「異世界の門だよ、私とアイトネしか通れないんだけどね。」

 千春はクローゼットの扉を開ける。


「はーい皆通ってねー。」

 千春が手を出し次々と日本に送る、ノースはおそるおそる千春の手を取り門を通る。


「凄い!」

「ノースちゃんコレ付けてね。」

 千春はノースの手を取りブレスレットを付ける。


「言語が違うから言葉通じないんだよ。」

「わかりました。」

 皆は靴を履き替えると玄関を開け外に出る。


「もう暗いねぇー。」

「日が落ちるの早くなったねー。」

 テクテクと歩きながら頼子達が話す、千春はノースと一緒に歩く。


「地面が・・・黒い?」

「アスファルトで出来てるんだよ。」

「あすふぁると?」

「えっとー、黒い・・・石?」

「石じゃないっしょ。」

「説明できないんだもん!」

「ま、私も分かんないけどね。」

 頼子がケラケラ笑いながら答える、そしてコンビニに到着するとノースはポカンとしている。


「明るいです。」

「電気だよ、あっちには無い科学って魔法みたいな物。」

「はぁぁぁ~~~。」

 そして自動で開くガラスの扉で驚き、中はさらに明るい、皆はそれぞれ買い物かごを手に取ると目的の物を入れて行く。


「アイトネとモートさんにおやつ買って行こ、ノースちゃん何か欲しいの有る?」

「いえ!そんな滅相も御座いません!」

「気にしなくて良いよー、これから長い付き合いになりそうだし?」

 千春はそう言うとケーキやシュークリームをポイポイと入れる。


「うちニャニャチキ買お。」

「えーまだ入るの?」

「こういうの別腹じゃん?」

「いや、ニャニャチキは重いでしょ。」

「私にくまーん。」

「あ!私も肉まん食べたい!」

「何個あるー?」

 中華まんコーナーを見ると色々な種類が陳列されていた。


「お母様とユラも食べるかな、すみませーん、これ全部くださーい。」

 店員は一瞬驚くが、直ぐに他の店員と中華まんをつめていく。


「皆選んだー?」

「ういー。」

「すみませんこれ全部カードでお願いします。」

「千春、これくらい出すよ。」

「そだよ、自分たちのくらいは買うよ。」

「良いの良いの、最近こっちの買い出ししてないから問題無いって。」

「いや、ギョースーで結構買ってると思うが?」

「そうだっけ?」

 頼子に突っ込まれ千春は笑いながら答える、一部始終を見ていたノースはずっと呆け顔だ。


「ノースちゃん大丈夫?」

「はぃぃ!?大丈夫です!」

「ノースちゃんって魔法つかえんの?」

「生活魔法だけです。」

「そっか、こっちは魔法使えないんだよね。」

「そうなのですか?」

「ルプ、スキルは使えるんだっけ?」

『あぁ、ロイロが使っていたからな、多分使えるぞ。』

 姿を消したルプが答える、そして買い物が終わり幾つもの袋を皆は受け取りコンビニを出る。


「ビェリー。」

「そこ置いちゃってん。」

「ほーい。」

 皆は袋を置くと地面に吸い込まれていった。


『千春酒は?』

「帰って来た時に受け取ってるよ、心配しなさんな。」

 ルプに答えながら歩き始めるJK達。


「ノースちゃん、今誰も居ないからちょっと私に変身してみて。」

「はい。」

 ノースはそう言うと千春の姿になる。


「おー!スキルって魔力関係無いんだね。」

『ロイロが言うにはそうらしいぞ。』

「代わりに学校行ってもらえるな。」

「千春、それすると授業わかんなくなるよ?」

「それなー。」

「そもそも文字分かんないだろうし、何も出来なくない?」

「チッ・・・無理か。」

 皆とだべりながら家に戻る、ノースはハァとため息を吐く。


「どうだった?ノースちゃん。」

「不思議でした。」

「まぁそうだよね。」

「千春の代わりをするならこっちの生活も知ってた方が良いかもね。」

 頼子がそう提案すると千春が首を傾げる。


「なんで?」

「ほら、ノースちゃんって千春っぽくないじゃん、見た目だけで。」

「まぁそうだね、ハルトもアリンも一発で見抜いたし。」

「そういう千春らしさってこっち特有だと思うんだよね~。」

「うちらも人の事言えないもんね。」

「そうそう、多分ウチに化けてもらってもエーデルさん気付きそう。」

 麗奈も美桜もウンウン頷く。


「・・・学校一回連れて行きたいな。」

「それは流石に無理っしょー。」

「いや、イケるかも。」

 美桜はそう言うとコンを見る。


「姿消したり出来たよね?」

「はい、僕が付いていれば1人くらいは消せます!」

「それじゃ本物の女子高生を見てもらう?」

「それ楽しそう。」

 JK達は盛り上がる、そしてノースはオロオロとしている。


「わっちも行くけん気配も消しとくばい。」

「俺もついて行くか。」

「ルプ達が居たら問題ないっしょ、最悪ルプに乗せてもらって逃げれるし。」

「誰から逃げるんよ。」

「・・・先生とか?」

「大丈夫です!見破れる人はあの学校には居ませんから!」

「そうだな、何度も行ってるが俺達の気配を感じる者は居ないな。」

「問題無いばい。」

 ペット達のお墨付きと言う事で急遽明日の学校にノースを連れて行くことになった。



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「と言う訳で、女子高生体験してきてもらいます!」

 千春はマルグリットに報告する。


「ルプ達が居るなら問題無いでしょうけれど・・・大丈夫?」

「あっちなら私達もフォロー出来ますし、普段の私達を見てもらえばノースちゃんも私の真似しやすくなるかなーと思いますので。」

「・・・そうかしら?」

「多分!」

「まぁ試してみても良いわよ、でも私が必要としているのは王族の公務をしてもらうチハルなのよ?別にチハルの普段の真似を覚える必要は無いんじゃないかしら。」

「いえ!目標はハルトが・・・せめてアリンが見分けつかないレベルです!」

 拳を握る千春。


「あー、よっぽど悔しかったんだ。」

「チハルぅ、チハルが王族の作法覚えた方がはやくねー?」

「ミオ、それは言ってはいけない。」

「無理でしょ、チハルだよ?」

「チハルも無理ってわかってるからノースちゃんに・・・。」

「私はあっちで教育受けてますわよぉ~?」

 揶揄う頼子達、そして既にブルーワグ国で次期王妃としての教育を受けている日葵は余裕の表情で言う。


「・・・でゃまらっしゃい!ノースちゃん明日学校行こうね~♪」

「・・・はい。」

 笑顔に隠れる千春の圧に素直に返事をするノース。


『チハル~この中華まん食べて良いのー?』

「いいよー、モートさんも食べてくださいね!」

「ありがとうチハル、頂くよ。」

 神様二柱はペッパーライスを1皿ではなく、1プレートずつ食べても余裕で中華まんを食べ始めた。






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