坂本異世界に行く!

「遅いね坂本。」

「もうすぐ着くっぽいけど、返信ないね。」

 頼子と千春はまったりと異世界でお茶をしながら呟く。


「アイツ職員室行ってたからね。」

「スマホ取りに行ってたね。」

「坂本の家どこなの?」

「「「しらね。」」」

 青空達は帰り、職員室にガンダしている坂本を見て大笑いしていた。


ピロン


「お!きたきた。」

「よーし!行くぞ!」

「お迎え行きますかぁ。」

 千春が言うと、美桜、麗奈も立ち上がる。



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「ココ・・・だよな?」

 坂本は表札を何度も見返しLIMEで連絡する。


「・・・あ、既読付いた!」

 玄関前に行くが物音がしない、不安になっていると急に中が騒めく、そして勢いよく扉が開く。


「らっしゃい!」

「おせーよ坂本!」

「早く入りなー。」

 JK軍団のテンションに驚きつつも坂本は玄関に足を踏み入れる。


「お邪魔しまぁーす。」

 部屋に入りキョロキョロと部屋を見渡す坂本、普通の家だなぁと思っていると、クローゼットが目に入る、クローゼットは開かれていた、そしてクローゼットの奥には・・・。


「坂本コレ付けて。」

「何だこれ?」

「翻訳の魔道具、言葉がわかるようになるから。」

「おぉぉぉ!!!」

「早く付けなよ、あっち行くよ!」

「坂本ぉ!行くよ!」

「まって!向井まって!」

 急かす頼子と美桜、坂本は渡されたブレスレットを手に嵌めると腕を掴まれクローゼットの中に押し込まれた。


「すげぇ!・・・この部屋は?!」

「今は通路だね。」

「通路?こんな綺麗な部屋が?」

「うん。ここ1人死んでるから落ち着かないんだよね。」

「へ?」

 千春は説明しながら応接室の扉を開く。


「坂本そこ座ってて。」

「はい。」

 荷物を抱きかかえた坂本はソファーに座ると、ラルカがお茶を出す。


「ウサ耳カチューシャ?なに?メイド居るの?」

「侍女だよ、千春は王女殿下だからね。」

「結婚したら王妃様だよ。」

 坂本の対面にポスンと座る頼子と美桜が説明する。


「お、王女?」

「私達全員貴族籍だから無礼な事したら不敬で処すぜ?」

 ケラケラ笑いながら青空が言う。


「きぞくぅ!?」

「驚いてるとこ悪いけど、取り敢えず紹介するね。」

「あ、はい、藤井様。」

「こっちじゃチハル・アル・ジブラロールだから、チハルって呼んで良いよ。」

「はい!チハル様!」

「様いらないけどまぁいいや。」

「私達も名前で良いから。」

「え?いいの?」

「こっちで苗字呼びされると違和感しかないからねぇ。」

 大愛と日葵がそう言うと千春が声を掛ける。


「ルプ、ビェリー、コン、リリ。」

「おう、坂本よろしくな。」

「ビェリーばい、わっちは教室で見とるけど一応初めましてやね。」

「僕はコンです!僕も教室で会ってます!」

「リリよ♪」

「え?」

 大きな狼、白蛇、狐、妖精に挨拶された坂本は驚かずキョトンとしている。


「あとは・・・。」

 千春か目線を変えると、猫が日本人形を乗せてテクテクと歩いてくる。


「人形と猫?」

 そう言うと人形の首がグルンと周り笑みを浮かべる。


「ぎゃぁぁ!!!!」

「あははは!」

「ナイス彩葉!」

「オモロ!」

「やっぱ驚くよね。」

 美桜達はゲラゲラ笑う。


「彩葉よ。」

「吾輩は三珠だにゃ、よろしくにゃ。」

「あ、あぃよろしくお願いします!」

「あとは外にアミって言う蜂と木の精の桜が居るよ。」

 外を見ながら千春が言うと皆外を見る、そのタイミングでロイロが大きなドラゴンの姿で舞い降りてきた。


「ど!ど!ど!ど!ど!どらごん!!!!」

「ロイロだよ。」

 ロイロは人の姿になると、庭から入ってくる。


「ほぉー、チハルが楽しそうにしておるから何事かと思ったが、友達を連れてきたのか。」

「んー、友達じゃないよ、ただの同級生だね。」

「せめて友達と言ってくれよ。」

 悲壮感を漂わせながら呟く坂本、するとノックがなりサフィーナとモリアンが帰ってきた。


「チハル、メグ様にはご報告しておいたわ。」

「サンキューサフィー、モリーおつかりー。」

 モリアンの足元からヒョコッと顔を出すユラ。


「チハルおねえちゃん。」

「ユラこっちおいでー。」

 テコテコ歩いてくるユラ、坂本が気になるのかチラチラ見ながら千春に抱きつく。


「犬耳カチューシャ?流行ってんの?カチューシャ。」

「カチューシャじゃないよ、この子はユラ、狐の獣人で私の妹。」

「獣人!?」

 坂本はそう言うとラルカを見る。


「あっちは!?」

「兎族だね。」

「マジで!?」

「あと猫もいるよ、マクリ。」

 千春が声をかけるとサリナと一緒に立っていたマクリが返事をする。


「ハイです!・・・ニャ。」

「獣人が居るんだ。」

「私の婚約者も獣人だよ。」

 美桜が言うと、マルグリットが入って来た。


「おかえりなさいチハル、その子を連れて来たのね。」

「はい、同級生の坂本・・・なにがしら君です。」

「そういや坂本って名前なに?」

「私知らない。」

「しらね、坂本、フルネーム何?」

「坂本英雄です。」

「ヒデオさんね、私はマルグリット・アル・ジブラロール、チハルとユラの母よ。」

「・・・え?」

「坂本は気にしなくて良いよ、さてと、アイトネー。」

『はーい、おかえりチハル。』

 アイトネはフワリと現れると坂本の頭をポンと叩く、坂本はカクンと首を下げ寝てしまった。


「アイトネ、どう?」

『ん~、あら、結構いいスキル持ってるわね・・・英雄?」

「あ、それ名前でヒデオって読むんだよ。」

『違うわ、英雄の称号が取れるスキルが揃ってるのよこの子。』

「え?マジで?」

「アイトネ様本当ですか!?」

「え~?コイツが英雄?うそだぁ。」

「そもそも名前負けしてんじゃん。」

 ボロクソに言うJK達。


「私的には記憶消して帰らせるつもりなんだけど、アイトネ的にどう?」

『そうね、記憶を読んだ限りではそれが良いわ、この子欲望が強すぎるわ。』

 アイトネが言うと、頼子達も話し出す。


「こっちに来たがる理由が俺TUEEEEだっけ?」

「あとハーレムとか言ってたよね、マジ無いわ。」

「そう言えばユラちゃんも避けてたね、珍しいよね。」

「あ、そう言えばそうだね、ユラなんで?」

「あのね?・・・えっとね・・・ユラをさらったひとたちとおなじ目だったの。」

「アイトネ!記憶消去して帰す!確定!」

「今すぐ帰そう!ダメだコイツ!」

「何が英雄だ、ユラちゃんをそんな目で見る奴ぁさっさと帰そう!」

 JK達は全員一致で叫ぶ。


「チハル、この子連れて来たのは何故なのかしら?」

 マルグリットがポツリと呟く。


「記憶消去をアイトネにお願いするつもりだったのと、もしかしたら良いヤツで楽しめるかなって、すこぉぉぉぉぉぉぉぉしだけ思ったから。」

 指をほんの少し隙間を開けながら言う千春、その姿を見てマルグリットはフフッと笑う。


「全員一致なら言う事は無いわね、アイさん出来るの?」

『勿論出来るわ、ついでにチハル達に意識が行かない様にしておくわね、妙にチハル達を意識してるわ。』

「あー・・・ウチ告白されたからなぁ。」

「私もついでにされたなぁ。」

 美桜と麗奈は遠い目をしながら言う、アイトネは坂本の額に指を当てる、すると虚ろな目をした坂本は立ち上がる。


『このままだと危ないかしら。』

 アイトネはスマホを触りLIMEで誰かに送る。


『コン、ウカちゃんがコンちゃんに操らせて帰らせてだって、出来る?』

「はい!寝ている者を操るのは得意です!」

『それじゃぁこの子の家を教えるわね。』

 そう言うとコンを撫でる。


「了解しました!チハルさん日本へ送ってください!」

「あいよー、っと、その前にLIME消しておこう。」

 千春はスマホを取り出し顔認証で開くと、ポチポチと記録を消す。


「おっけー、よろしくねコン。」

 頼まれたのが嬉しいのか、コンはニッコリ笑い坂本の頭の上に乗る。


「帰ってきたら宇迦之御魂様に連絡してLIME送ってもらってね。」

「了解しました!」

 そう言うとコンは姿を消す、坂本はてくてくと歩き玄関を出て行く、そしてJK達は歩いて行く坂本を見送る。


「・・・キモかったね。」

「ヤバいね。」

「うん、記憶消す為に呼んだとはいえキモかったわ。」

「英雄かぁ、あんなのでも英雄になれるんだねぇ。」

「さ、戻って晩御飯しよっか。」

「千春、牛丼食べたい。」

「イイネ牛丼、魔国のお高い牛肉仕入れたんでしょ?手伝うから作って!」

「おっけー、牛丼祭りじゃー!」

「ウェーイ!」

 頼子達は秒で坂本の事を忘れ、異世界に戻った。






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