恋の狩人!

 とある平日の教室で1人の男の子はメモを取っていた。


「・・・でさ、ハルトが・・・金貨が・・・。」

「わかる!それさ、アリンさんも・・・なんだよねー。」

「・・・キンさんも・・・ってさ。」

 聞き耳を立てながら呟く男の子。


「・・・ハルト、春人か?クラスの男じゃないんだよな、春か、藤井は千春、春繋がりで兄弟・・・いや、一人っ子って言ってたよなぁ。」

 ざわめく教室で呟く声はかき消されている。


「チハル、今日行くから。」

「うぃーっす。」

 青空が千春に声を掛ける。


「伊吹か、たしかステルって言う名前よく出てたな。」

「それでさぁ・・・門に・・・じゃん?」

「もん?」

「・・・世界の金貨で・・・だしさ。」

「何世界の金貨だって?」

 大愛と日葵も混じり、千春達はキャッキャと話すが、それ以上に周りもうるさく聞き取れなかった。



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「向井、ちょっと良いか?」

「なんだよ坂本ぉ恋の相談なら他あたってよね。」

 美桜と麗奈に玉砕した坂本は、女生徒達から恋の狩人と呼ばれていた。


「いや、たまたま、たまたまなんだけど耳に入ってきたんだけど。」

「なにさ。」

「アリンとかビェリーって何?」

「ふぇ?!」

 名前を言われ、一瞬目を逸らす頼子。


「何って・・・ゲームのキャラだが!」

「ゲームのキャラとデートしてんの?」

「へ?」

「いや、たまたまな?聞こえたから。」

「・・・坂本。」

「なに?」

「キモい。」

「えぇぇぇ!?」

 頼子はダッシュで坂本から逃げた。



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「弓削さん。」

「なんだよ坂本うぜぇ。」

 日葵はめんどくさそうに答える。


「まて、声かけただけじゃん!?」

「なに?」

「弓削さんって彼氏いんの?」

「・・・恋の狩人め。」

「ごめん、マジで凹むからそれやめて。」

 崩れるように項垂れる坂本。


「いるよ。」

「やっぱいるのかー。」

「残念だったな!狩人!」

「やめてくれぇ・・・やっぱハチェットって人?外人さんなの?」

「ふぉぇ?!なんで!?」

「あ、やっぱそうなんだ。」

「どどどどどうして!?」

「いや、藤井達と話してるの聞こえてさ。」

「坂本きもぉぉぉい!!!!」

 日葵は叫びながら逃げた。



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「アイツらメタルなスライムかよ。」

 ブツブツと呟きトイレに向かう坂本は青空と大愛が歩いてくる姿を捉える。


「伊吹さん、本庄さん。」

「ん?なに?坂本。」

「なんだい坊や。」

「週末よく藤井んち行ってんじゃん、何してんの?」

「・・・乙女の秘密。」

「遊んでるだけだよ。」

「泊まりで?」

「なんで知ってんのよ。」

「いや、普通に話してんじゃん!教室で。」

「受験勉強だよ。」

「いや、本庄さん遊んでるって・・・。」

「勉強しながら遊んでんのよ。」

 坂本は考える、何か足りない情報が有る、決定的な、そして引っかかる物は何か。



「あ!そうだ、門って何?」

「「へ!?」」

「たまに聞こえるんだけどさ、門って何?」

「門は門だよ。」

「チハルの家の門だよ、玄関前にあんじゃん。」

「そっかぁ・・・。」

 坂本は、うーん・・・と唸る、そして気付けば2人が居ない、後ろを見ると走り逃げていった。


「やっぱなんかあんなぁ。」

 ポツリと呟き坂本はトイレに向かった。



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「千春やべぇ、坂本が怪しんでる。」

「へ?なにを?」

「アリンさんの名前出してきた。」

「ふぁ?!なんで?!」

「話しがたまたま聞こえたって言ってた。」

「えー?私達の会話って認識されにくくしてるのに?」

「だよねぇ、この手の話は聞いても忘れやすいって言ってたし。」

 頼子と千春が話していると、青空と大愛、そして日葵も話にかたる。


「チハル、坂本にバレてね?」

「めっちゃ色々聞いてきたよ。」

「どんだけ私達の話聞いてんのアイツ、キモいんですけどぉ?」

「ルプ、どう思う?」

 姿を隠したルプに千春は問いかける。


『千春達が集まっている時によくこっち見てるな。』

「えーー!?早く言ってよ!」

『聞いてもすぐ忘れると思っていたからな、メモでも取っていたか。』

『連れて行きゃ良いやん?』

 頼子の頭の上からビェリーの声が聞こえる。


「千春そこんとこどうなん?」

「広めないなら大丈夫だろうけど、無茶して死なれたら困る!最後の目撃が私の家とかヤバい!」

「あー、男の子だからねぇ。」

「冒険者になる!とか言いそう。」

「何となく気付いてんのかな?」

「急に皆んなに聞いてきたって事は・・・。」

 教室のドアが開く、千春達は横目で見ると坂本が入ってきた、そして千春達が集まっている所に向かって歩く坂本。


「藤井。」

「さんをつけろよデコ助野郎!」

「藤井さん。」

「冗談やで?」

「・・・聞いて良いか?」

「ダメ。」

「・・・1つだけ!」

「えぇぇ、いーやーだー。」

「頼む!1つだけ嘘無しで教えて!

「めんどくたぁぁい!なんだよぉ。」

「異世界の門って藤井んちある?」

「「「「「「「・・・・・・。」」」」」」」

「・・・ねぇどうなん?」

「「「「「「「コイツキモっ!」」」」」」」

「どんだけ私達の話聞いてんの!?」

「もうストーカーじゃん!」

「盗聴器あんじゃね!?」

「ヤバっ!」

「ないわぁ。」

 頼子たちは捲し立てる。


「ちょ!?」

「しゃーない、記憶消してもらうかぁ。」

「え?」

「あるよ、異世界の門。」

「マ!?」

「行きたいの?」

「もちろん!連れていってくれ!」

「行ってどうすんのよ。」

「チートで俺TUEEEEしたい!あとハーレムしたい!」

「キモイ!無理、私ずっと行ってるけどレベル1のままだもん、レベル無いけど。」

「いや、千春はつえぇよ。」

「チハルとサフィーちゃん最強じゃん?」

「周りが強すぎてよーわからん。」

 坂本を置いてきぼりに千春達は盛り上がる。


「なぁ!良いだろ?」

「いいよ、今日誰が行くんだっけ?」

「はーい私ー。」

「私もー。」

 頼子と青空が返事をすると皆手を上げる。


「うちも行くわ。」

「ウチも。」

「行かないわけないよね。」

「あれ?ミオ用事あるから明日って言ってたじゃん?」

「こんなおもろい時行かないわけ無いじゃん。」

「それな。」

「んじゃ学校終わったら家集合ね。」

「「「「「「りょ!」」」」」」

 皆は返事をすると、坂本が千春に言う。


「俺、藤井の家知らねーんだけど。」

「そっか、残念、諦めて。」

「嘘だろぉぉ!?」

「冗談だよ。」

 千春はスマホを取り出しLIMEを開く。


「はい、登録して。」

「いいのか?」

「良いから出してんでしょー、早くして、スマホ出してんの見られたら怒られるっしょ!」

 坂本は自分のスマホを取り出しQRコードを読み取るとピ~ンと音が鳴る。


「おぉぉぉぉぉ。」

 坂本は画面を見ながら掲げる。


「なにしてんの坂本。」

「・・・初の女子の登録!」

「マ?」

「うっそ、男しか入ってないの?」

「だっせぇ。」

「可愛そうに・・・うちのも後で登録してやんよ。」

「あっちのグループもう一個作る?」

「そうだね、今のグループは坂本に見せれないからね。」

「うん、刺激強すぎるっしょ。」

 スマホを掲げていると後ろから坂本のスマホが取られる。


「さーかーもーとー、何スマホ出してんだ、没収な、放課後取りに来い。」

「石田!ごめんなさい!返してぇ!!!!!」

「先生をつけろバカ本!」

 教科書の角で頭を叩かれうずくまる坂本。


「せんせー暴力はんたーい。」

「・・・お前らコイツに何かしたのか?」

「「「「「「べっつにぃ?」」」」」」

「ほら!授業始めるぞ!席に座れ!坂本早く席に戻れ!」

「うぅぅぅぅぅ。」

 坂本はしぶしぶ席に戻り授業が始まる、そして皆は授業が終わると爆速で家に帰り、異世界に行く準備をした。






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