リンゴ飴!

「牛丼うっめえ!」

「魔国のなんちゃら牛だもん、ブラックホーンブルとは違う美味しさあるよね。」

「こんな良い肉を牛丼に・・・贅沢なり!」

「美味しいナリ!」

「裏声出すなよミオ。」

 楽しく牛丼を食べるJK達、横ではマルグリットとユラも食べている。


『チハルデザートは作るの?』

「作っても良いよ、何作る?」

『そうねぇこの前の飴で何か作れないの?』

「飴は飴だもんなぁ・・・あ、アレ作るか。」

「アレって?」

「りんご飴」

「あー屋台で売ってるヤツか。」

「そそ、材料は有るしちょっと作るか。」

 千春は食べた丼を片付け厨房へ向かう。


「私も手伝うよ。」

「ウチも~♪」

「はーい!私も作るー!」

 JK軍団は空のドンブリを手に付いて来る。


「チハルおねえちゃんユラもつくる!」

「私も手伝うわ。」

 ユラとマルグリットも楽しそうに付いて来た。


「はーい、簡単だからお願いしちゃいますね。」

 果物を色々取り出し、砂糖を大量に取り出す千春、侍女達は片付けを始める。


「さて、鍋に砂糖と水を入れて煮まーす。」

「それで?」

「終わり。」

「うん知ってた。」

 頼子と美桜はクスクス笑いながら鍋の砂糖を溶かし火を点ける。


「やっぱり男子はダメだね。」

 鍋を見ながら不意に呟く頼子。


「そう言えばヨリのお父さんとかまだバレてないの?」

「今の所気付く気配ないね、お母さんが上手くやってるっぽいよ。」

「サスママ、私が居ない時ママさんズ来てるっぽいけど。」

 千春と頼子が話をしていると、リンゴを洗っているマルグリットが言う。


「小月に2日は遊びに来てるわよ。」

「え!?そんなに来てるんですか!?」

「ヨリ知らなかったの?」

「ぜんっぜん!あんまり異世界の話家でしないもん。」

「何してるんですか?」

「商会の商品開発だったり、拡販だったり、商業ギルドと商談だったり、色々してるわねー。」

「すごいなママさんズ。」

「チハルおねえちゃん、これもあらうの?」

 話をしているとユラは果物を手に取り聞いてくる。


「うん、ココに出してるの全部洗って良いよ。」

「千春、こっちのこれくらいで良くない?」

「良い感じだね。」

 櫛に鍋の飴を付け水に浸ける、直ぐに固まり千春は口に入れ噛む。


カリッ


「んっふー、ばっちし!」

「チハルーこっちも作るよー?」

「あ、そっちに鍋はコレ入れて。」

 千春はテーブルにある食紅を砂糖に混ぜ水を入れる。


「うぉぉう真っ赤だ。」

「これも同じ様に弱火で煮詰めて。」

「これ混ぜないの?」

「混ぜたら変に固まるから見てるだけー。」

「りょ!」

 美桜は鍋に入った真っ赤な液体を火にかける。


「それじゃこっちからやってみますかー。」

 千春は鍋をテーブルに置くと、果物に串を刺した物をつける。


「はい、コレをそのクッキングシートの上に並べてね。」

 ユラに言うとユラはそーっと立てて行く。


「お母様、これもお願いします。」

 マルグリットとユラは楽しそうに飴の付いた果物を並べる。


「チハル隊長!これもやんの?」

 日葵は世界樹の実を一口サイズに切り串に刺し見せる。


「もち!仲間外れは可哀そうでしょ。」

「果物に仲間外れとかあんの?」

「あるある、超ある。」

「適当いってんなぁ。」

 ケラケラと笑う青空達もオレンジやイチゴ、ブドウ等の果物を串に刺していた。


「チハル、冷やすの?」

 サフィーナは並べられた物を避けると次のクッキングシートを敷く。


「ほっといてもすぐ固まるから大丈夫だよ。」

「チハルおねえちゃんもう食べれるの?」

「もう少し固まってからね、他の果物も同じ様につくるよー。」

「はーい!」

 キャッキャとフルーツ飴を作る傍ら千春はアイテムボックスを開ける。


「ゼリーも作るか。」

 千春はウニウニと動くスライムをボウルに入れる。


「出たよスライム!!!!」

 頼子は思わず突っ込む。


「養殖物だぞぉ!?」

「スライムに天然とか養殖関係なくね?」

「ほら、養殖の方が高いの有るじゃん、鰤とかさ。」

「しらんがな。」

 千春はペチペチとスライムを叩く、そして鍋に入れて火にかけ溶かしていく。


「美味しいデザートに生まれ変わりな。」

「はたから見たら悪魔の所業だね。」

「やめて、罪悪感生まれる。」

 大愛と青空に言われ千春は苦笑いする、そして溶けた所に砂糖を入れ溶かす。


「おっけ、あとは器にいれまっしょ~。」

「果物何入れる?」

「飴に使わなかった残りで良いよ。」

 器に溶けたスライムゼリーを入れポイポイと果物を入れる千春。


「おぉぅっとぉ!」

 跳ねたスライム液が腕にぺちゃりと飛び散る、さっとふき取り作業を続ける。


「あとは冷やすだけ~。」

「チハル冷やしますよ。」

「うん、サフィーお願い。」

 スライムゼリーをサフィーナに渡す千春、そして自分の腕をジーっと見つめスリスリと触る。


「・・・ん?」

「どした?千春。」

「いや・・・ヨリ、ココ触ってみて。」

「ここ?」

 自分の腕を指差す千春、頼子はそこを指でスリスリ触る。


「・・・スベスベじゃん、なにこれ。」

「・・・スライムが飛び散った所。」

「・・・まだある?」

「・・・鍋に少し残ってるね。」

 2人は鍋に少しのこっったスライムゼリーを手に取り腕に塗る。


「さっきこれで拭いたんだけど。」

「薄く塗る感じ?」

「かなぁ?」

 2人は塗ったスライムゼリーを軽くふき取り乾くのを待つ。


「どう?」

「・・・スベスベなんだが。」

「え?ゼラチンが固まったとかじゃないよね?」

「違うね、何か付いてる感無いもん。」

「・・・サフィー。」

「どうしました?」

「腕出して。」

「はい、何するの?」

「これを塗るの。」

「・・・スライムですよねソレ。」

「まぁまぁ。」

 千春は残ったスライムゼリーをサフィーナに塗る。


「千春、スライムまだあるよね。」

「めっちゃある。」

「出して、もっと作るわ。」

 頼子はスライムを受け取ると火にかけ溶かしていく、千春はサフィーナの腕を綺麗に拭き取ると腕を触る。


「スベスベなんだがぁ!なんだコレ!」

 千春の声に驚いたマルグリットが声を掛ける。


「どうしたの?」

「スライム塗ったら肌がスベスベになります!」

「・・・え?どういう事かしら?」

「お母様!腕出してください!」

「はい、これで良いかしら?」

「はい!塗ります!・・・拭きます!」

 千春は楽しそうに腕にスライムゼリーを塗り、綺麗に拭き取り腕を触る。


「スベスベのサラサラです!」

「・・・本当だわ、凄いわね。」

 マルグリットは自分の腕を触りながら呟く。


「チハルスライム養殖してんだよね?」

「うん、王都から少し離れた所に隔離して作ってるよ。」

「・・・これ美容液的な感じで作れないかな。」

 麗奈が溶けたスライムを指で触りながら提案する。


「良いわね、この感じだと肌には問題無さそうだわ。」

「一応パッチテスト的な物をやってみてから生産しますか。」

「パッチテスト?」

「はい、薬品や化粧品は接触アレルギーとか薬アレルギーが無いかテストするんです、カブレたりしないかの確認ですね。」

「やり方は分かるのかしら?」

「簡単ですよ、薄めて塗るだけです、ただ数時間後だったり長く使うと出たりする人も居るので。」

「その時はまた考えたら良いかしら?」

 マルグリットは自分の腕を触りながら話す。


「テストしてくれる人が多ければ多い程良いですね。」

 千春が言うとモリアンが手を上げる。


「はーい!侍女に肌がスベスベになる美容液のテストを募集したら多分全員来まーす!」

「テスト参加者には試供品を提供すると言えば間違いなく来ますね。」

 サフィーナも腕を触りながら言う。


「ま、問題あるかどうかは一発で分かるんだけど。」

「「「え?」」」

「アイトネー。」

 千春は応接室で寛ぐアイトネを呼ぶ。


『どうしたの~?』

「スライム塗ったらスッベスベになったんだけど、害ある?」

『無いわよ~。』

「なんでスベスベになるの?」

『スライムの成分と魔力保有量ね。』

「魔力・・・あ、コイツ魔力食べるんだった。」

『この世界の魔力は身体に影響を与えるもの、無くなれば体調を崩し倒れるわ。』

「そう言えば魔力無くなったら数日寝込むって言ってたね。」

「アイさん、それじゃこれを人に塗っても大丈夫なのかしら?」

『問題無いわ、ただ魔力に抵抗が弱い人は過剰反応するかもしれないわね。』

 アイトネは溶けたスライムを見ながら答える。


「抵抗弱い人は薄めれば良いじゃん?」

 麗奈はまだ煮て無いスライムをツンツンしながら言う。


「って事でお母様。」

「なに?」

「開発お願いしまーす♪」

「良いの?」

「美容関係ですから、ママさんズの方が多分詳しいと思うので。」

「分ったわ、任せて頂戴。」

 嬉しそうに答えるマルグリット、そして忘れそうになったリンゴ飴やフルーツ飴を皆は美味しく食べた。

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