チャーハンつくるぉ!

「ルノアーさん冷や飯頂戴~♪」

「ひやめし?」

「昨日のご飯とか残ってない?」

「残ってないな、すべて消費するから残る事は殆どないぞ?」

「そっかぁ、それじゃ炊いたご飯でもいいや。」

「持ってこさせよう、別の料理なんだよな?」

「そ、チャーハン作るよ!」

「ちゃーはん?」

 千春は大きなボウルに入ったご飯を小さなボウルに移し替える。


「チハル、フライパンはコレで良いの?」

 サフィーナはいつも使っているフライパンを持ちながら千春に問いかける。


「んにゃー、私のフライパン使うー。」

 中華鍋では無いが丸みを帯びたフライパンを手にすると、千春は油を引き温める。


「淵だけが丸いんだな。」

「中華鍋の方が良いんだろうけど、こっちの方が使い勝手良いからねー。」

「似たようなフライパンはあるぞ?」

 ルノアーはそう言うと調理道具の有る所へ移動し、鍋を持ってくる。


「・・・中華鍋じゃん!」

「ただの丸いフライパンだが、チハルさんの所ではそう言う名前なんだな。」

「それ使える人居る?」

「皆使えるぞ、大量に炒める時はコレが便利だからな。」

「それじゃチャーハンも作れるね、まず私が作るから。」

 千春はフライパンの油が温まったのを確認すると玉子を入れる。


「千春玉子ってご飯に絡めるんじゃないの?」

「あー、それ結構火力いるからさ、いつもの作り方でやっちゃった。」

「チハル手伝うよー、何する?」

「私も手伝うわ。」

「ミオはチャーシュー刻んで、ヨリは玉ねぎお願い」

「「りょ!」」

 千春は卵を炒め、7割程火が通った所でボウルに戻す。


「次は具を炒めまーす。」

「ほい!チャーシュー。」

「玉ねぎまだ!ちょっとまって!」

 美桜にチャーシューを受け取りフライパンに入れ、頼子が微塵切りにした玉ねぎを入れる。


「これにご飯入れまーす。」

 フライパンにご飯を入れ、少し崩しながら混ぜ合わせる。


「はい卵いれまーす。」

 上から炒めた卵を入れ、卵を崩しながら混ぜ合わせる。


「調味料は何がいる?」

「チャーシューの汁もってきてー。」

「うぃっす。」

 頼子はオタマを持ってチャーシューの汁を器に入れ持ってくる。


「ココにシャーシューの汁を入れて塩コショウね。」

 ジュー!といい音を立て、厨房に香が漂う。


「うぁ、絶対美味しいヤツじゃん。」

「冷や飯あったらもっとパラパラになるんだけどねー。」

「チャーハンの為に冷や飯を準備しておこう。」

 ルノアーは調理を見ながら呟く。


「冷や飯で作るチャーハンは一度洗うと粘りも無くなってパラパラになるよ。」

「洗うのか?」

「うん、その時は作り方教えるよ。」

「いや、色々やってみるから大丈夫だ、チハルさんは楽しみにしててくれ。」

「あいよー。」

 そうこうしているうちにチャーハンも出来上がる、千春は丸い器にチャーハンを詰め皿にひっくり返すと、ドーム型のチャーハンが出来上がる。


「はい!チャーシューチャーハン出来上がりぃ!」

「ひゅー!」

「チャーハンと餃子とラーメンとか最強じゃん。」

「でっしょぉ?」

 千春と頼子が話をしていると、夜勤組の兵士が次々と入って来る。


「料理長良い匂いだな。」

「チハル王女殿下!え?!もしかして今日は新作ですか!?」

「マジか!夜勤して良かったぁ!!!」

「ひゅ~♪」

 兵士達は匂いと厨房に居る千春を見て歓声を上げる。


「おう、お前ら今日はチハル王女殿下の新作メニューがあるぞ、食べるか?」

「当たり前だろ、何が有るんだ?」

「醤油、味噌、豚骨、魚介のラーメンだ、餃子とチャーハンが付く。」

「・・・わからん!全部くれ!」

「俺も全部くれ!」

「わからんが絶対美味いだろ!俺もだ!」

 兵士達は揃って声を上げる。


「ラーメンは1つしか選ばさないぞ、足りなくなるからな、それじゃ俺がランダムで出していくから食ってくれ。」

「了解した!」

「任せた!」

「どうせどれ食っても美味いんだ、任せるぜ。」

 兵士達は注文をするとテーブルに座りワクワクと厨房を見ている。


「さて、お前ら、チャーハンの作り方は覚えたな?」

「はい!」

「そこの2人はチャーハンを、そこは餃子を焼け、ラーメンの組は麺を茹でろ、次々に出るからな、注文を待たずに麺は作り続けろ。」

 ルノアーは厨房の料理人に指示をする、気付けば侍女達も餃子を包んでいた、千春と頼子は料理人に他を任せると餃子チームの所へ来る。


「楽しいですねこれ。」

 サリナが珍しく笑みを浮かべながら餃子を作っていた。


「自分が作った物を、食べてる人が笑顔になると嬉しいです。」

 ラルカもウサ耳をピコピコ動かしながら呟く。


「おかあさまにもつくるのー。」

 ユラは真剣に餃子を包んでいる、形が少し歪だが丁寧に作っていた。


「おかーさんにも作ってあげたいニャ。」

 マクリも楽しそうに餃子を包む。


「マクリお母さんの調子どう?」

「すごく良くなりましたニャ、冒険者に戻るのやめたですニャ。」

「今何してるの?」

「エイクラーダンジョンの冒険者ギルドで受付やってますニャ。」

「元冒険者なら良いかもしれません、経験も生かせますから。」

「でも働かなくてもあのお金あったら良くない?」

 サリナが言うと麗奈がお金の事を言う。


「あのお金は私の為に取っておくって使わないんです・・・ニャ、最初に1枚使っただけで後は全部残ってます・・・ニャ。」

「そっかぁ、マクリの餃子はお母さんに焼いて持って行こう。」

「良いのですニャ?」

「大丈夫、ほら。」

 横を指差すと、すでに料理人達が餃子の皮を作り出し、別のテーブルでも餃子を作り出していた。


「これはウチらで食べれるし。」

「ミオ、これ全部食べるの無理だよ。」

「1人何個?」

「無理って事だけは分かるわ。」

 ケラケラ笑い、千春はユラの横に座る。


「これ、おかあさまにたべてもらうの!」

「これはユラ作か、これはお母様用だねー、私も作ろーっと。」

「私もアリンさんにつ~くろ♪」

「エーデルさん食べてくれるかなぁ。」

「食べない訳ないっしょ、涙流しながら食べるわ。」

 皆はそれぞれ思い人の事を考えながら餃子を包み続けた。





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