木のドラゴン!
「シンクルさんどうですか?」
目を瞑ったままのシンクルに声を掛ける千春。
「杖を持ってくるそうだ。」
「おー!・・・どうやって?って連絡取れるんですね。」
「世界樹で繋がっているからな。」
「え?ココにも世界樹あるの?」
千春はアイトネを見る。
『えぇあそこに有るわ。』
アイトネは森の隙間から見える空を指差す。
「・・・見えないよ。」
『幻術を掛けているから見えないのね。』
「そうだ、余計な面倒事は避けたいからな。」
千春とアイトネのやり取りにシンクルが答える、するとドライアドが現れた。
「チハル様御機嫌麗しく、杖をお持ちしましたわ。」
ドライアドは千春に恭しく礼をするとシンクルに声を掛ける。
「ココの長だったのですね。」
「あぁ、その杖か。」
「まだ封印は解けていませんの。」
「構わんよ、あとは私達がやろう。」
シンクルの前に杖を出すドライアド、杖は浮き上がりシンクルの前に来る。
「皆よ、長が帰って来たぞ、力を貸せ。」
シンクルが言うとフワリと精霊たちが集まる、そして木で出来た動物達が杖の周りに集まると杖に吸い込まれていく。
「ちょっと!みんな取り込まれてるよ!?」
「大丈夫だ、この者達は元を辿れば長から生まれた者達、体を返しているだけだ。」
「・・・消えちゃうの?」
「消えぬよ、長が元に戻れば改めて生まれ変わる。」
「・・・良く分かんないけど大丈夫そう?」
千春は頭を傾げながらサフィーナを見るがサフィーナも頭を傾げる。
『問題無いわよ、この子達は後で元に戻るから。』
心配そうな千春にアイトネが説明をする。
「そっか、よかった。」
「面白い娘だな、私達トレントの心配をするとは。」
『可愛いでしょ?』
「あぁ、アイトネ様が気に入る理由が分かった。」
千春達が話をしている間にもトレント達を取り込んでいた杖は既に大きな大木の様になっていた。
「これ大丈夫なの?」
「問題無い。」
暫くすると精霊達がフワフワと木の周りと飛び回る、魔力を集め木に注いでいるようだ。
「大きいなぁ。」
「姫桜よりは小さいわよ。」
「なにその姫桜って。」
「え?知らないの?王都ではそう言われているわよ?」
「うっそん?その姫って私?」
「当たり前でしょ。」
サフィーナは笑いながら答える、話をしていると木に変化が起きる。
「あ、割れた!」
バキバキと音を立てながら大木が至る所でヒビが入り割れて行く。
「ちょっと!大丈夫なの!?」
焦りながら言うがシンクルもアイトネも笑みを浮かべ見上げている。
「・・・シンクル・・・待たせたな。」
大木は次々と割れて行くと生き物の様に動き出す。
「うぁ~~~~すっごい!ドラゴンだ!!!」
「人間の娘よ、ドラゴンの宝物庫から、救い出し、この場に連れ戻してくれて有難う。」
「え、いや、見つけたのはレナだし、私はほら、見てただけ?みたいな?」
「ふふふ、女神アイトネ、迷惑をかけた。」
千春の答えに笑い声を出す木のドラゴン、そしてアイトネの方を向くと謝罪する。
『私こそ手を出せなくてごめんなさいね。』
「女神アイトネ、謝罪は要らぬよ、それが掟だ。」
「掟なの?」
『えぇ、世界樹に手を出せば私が直接神罰を与えるんだけど・・・。』
「我は、世界樹を守る代わりに、世界樹の、恩恵を受けておる、寄生しているような物だな。」
『あら、凄く助かってるわ、寄生なんて言わないで良いわよ。』
笑みを浮かべアイトネが答える。
「南の守護者、ドライアドよ、助力有難う、何かお礼をさせてくれ。」
「いえ、同じ世界樹を守る者同士です、助け合うのは当たり前じゃなくて?」
「ふむ、我は誰に、お礼をすればいいのだ?」
皆が木のドラゴンを心配し助けたが、何も求めず見返りすら断る、ドラゴンは困ったように呟く。
『そうねぇ、一番の功労者はレナかしら?』
「そだね、あそこで気付かなかったらまた数千年ドラゴンの宝物庫で眠ってたかもだし?」
「そうですね、ママドラさんも今はドラゴンの里を離れてますから、宝物庫に入る者も居ないでしょうね。」
アイトネが言うと千春も同意し、サフィーナも話す。
「ふむ、人間の娘、チハルと言ったか、レナと言う娘に、これを。」
木のドラゴンは大きな木で出来た手を千春の前にゆっくりと出す、すると手のひらから杖が出て来る。
「杖?」
「我の名を呼び、呪文を唱えろ、我の魔力がレナを助ける、我の名はラムンディ、数万を生きた樹ドラゴン。」
「ラムンディさんね、了解、ちゃんとレナに伝えておくね。」
千春は忘れないようにLIMEの異世界グループLIMEで麗奈へLIMEする。
(ちは~)レナ、前ママドラに貰った杖、ドラゴンになったよ
(れ~な~)は?何言ってんだ?壊れたかチハル
(SORA)いつもじゃん
(だいや)kwsk
(MIO~N)チハル今何やってんの?遊び行くなら言えよ
(よりすけ)おいおい、楽しそうな事してんな
(ちは~)なに?皆暇なん?
(れ~な~)暇だけど今の話kwsk
(ちは~)杖の封印解いたら木のドラゴンになった、今ドラゴンさんからレナにって杖もらった
(れ~な~)あざます!
(よりすけ)今木のドラゴンいんの?見たい!
(ちは~)名前言ったら魔力で助けてくれる杖だってさ
(ちは~)ヨリ、こっち来たらアイトネに連れてってもらえばよろすい~
(れ~な~)了解した、今からそっち行くわ
(よりすけ)私もいくわー
(だいや)え?皆行くん?ちょっとうちもいくってばさ!
(MIO~N)ウチもいくで、まってろ!
(ちは~)ドラゴンさんの名前ラムンディさんね、メモ
「おっけ、なんか皆来るって言ってるけどアイトネまた連れて来れる?」
『良いわよ?』
「アイトネ様、私が送り迎えさせて頂きますわ。」
アイトネが言うとドライアドが楽しそうに言う。
「我の客であろう、我が迎えに行こう。」
「え~っと・・・誰でもいいんだけども~・・・。」
「それではラムンディ、チハル様の桜の木までお送りしますわ。」
「ふむ、助かる、チハル、行こうか。」
「そだね、一回帰ってまた来ればいいか。」
千春はそう言うと皆を見る、皆も頷く。
「それでは行きますわね。」
ドライアドはそう言うと広いフェアリーリングが沸き上がり光り輝く、そして光が収まると桜の木の下に移動していた。
『あら、お出迎えが居るわ。』
「・・・げ!」
アイトネと千春は庭から部屋を見ると、腕組をしたエンハルトが立っていた。
「・・・お帰りチハル、楽しかったか?」
「・・・はい、楽しかったです。」
「で?言う事は?」
「黙って行ってごめんなさい!」
「はぁ、で?その大きな・・・木?ドラゴンか!」
「うん、上位トレント族で精霊のラムンディさん。」
「そうか、詳しく話しを聞いても良いよな?」
「・・・はい、サフィー、めっちゃ美味しいお茶をハルト殿下に!」
「はいはい、ハルトもそんなに怒っちゃダメですよ、アイトネ様からのお誘いだったんだから。」
「分かってるよ、アイトネ様とサフィー達が付いているんだ、万が一も無いだろう、しかしなぁ。」
エンハルトは大きな木のドラゴン、ラムンディを見てまた溜息を吐く。
「コレだぞ?」
「ウフフ、今始まった事じゃないでしょう、お座り下さいハルト殿下。」
エンハルトを宥めるサフィーナ、モリアン達はササっとお茶の準備を手伝い、ルプや三珠、彩葉は何事も無かったように寛ぐ、当の本人千春はアイテムボックスから自分でこっそり食べる為に買っておいたコンビニスイーツを取り出す。
「ハルト様、こちら新作のスイーツでございまっす!アイトネも食べてね!」
『ありがとう♪、ハルト君チハルを連れて行っちゃってごめんなさいね?』
「・・・はぁ、出来れば侍女でも良いので一声かけて頂ければ有難いです。」
アイトネにまで謝られエンハルトは苦笑いをする、そして杖の事を知っているエンハルトに千春は、暇つぶしでお出かけしたと言う前提を飛ばし、杖の解放をメインに説明をした。
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