植物な人達!

「ひまー。」

 建国祭が終わり、夏休みも残り少なく宿題も終わった、そして受験勉強に飽きた千春がソファーでだらける。


「皆さん今日来ないんですか?」

 モリアンがお茶を運びつつ問いかける。


「んー、流石に毎日は来れないみたいだねー。」

「それはそうでしょう、そちらの生活も有りますから。」

「まぁーねぇー。」

 よっ!っと言いながら起き上がりお茶を啜る千春。


「飛空島も工事入ってるからなぁ。」

「飛ばしてどこか行くのは無理ね。」

 サフィーナがクスクスと笑いながら答える。


「なんか面白い事無いかなー。」

「何も無い方が良いでしょ?」

「いや、無さすぎるのもどうかなって。」

「アイトネ様に聞いてみたら?」

「あー、そう言えば聞きたい事あったんだよね。」

「聞きたい事?」

「そ、この前マンドラゴラ食べたじゃん、あれって生き物なのかな?」

「魔導士の方は魔物の一部だと考えられてますけれど。」

「あー、そう言われると魔物っぽいわ、植物の魔物かぁ、種族的な植物の人って居ないの?」

「居ますよ。」

「居るの!?」

「はい、精霊族の分類になりますけれど、ドライアド様もそうですよ。」

「あー、そう言えば森の精霊って言ってたね。」

 千春はフムフムと頷きながらアイトネを呼ぶ。


「アイトネー。」

『なにー?』

「マンドラゴラって魔物?」

 千春がアイトネを呼ぶとアイトネは元からそこに居た様に返事をしソファーに座る。


『魔物じゃ無いわよ、ただの植物ね。』

「ただの植物じゃないっしょー、動いてたよ?叫ぶし。」

『叫ぶ植物も居るわよ。』

「・・・うん、こっちの常識ではそうなんだね、ちなみに植物な種族って何が居るの?」

『そうねぇ、チハルの世界で言う種族に近いのだとアルラウネやドライアド、トレントも一応種族ね。』

「・・・あれ種族なんだ、めっちゃ狩ったよ。」

『ダンジョンで湧くマナから湧いたトレントは魔物よ。』

「魔物じゃないトレントも居るんだ。」

『魔物じゃないトレントは森の奥でひっそり暮らしてるわよ。』

「へぇ~、でもトレントって動けないよね?」

『動けるわよ、上位のトレントになると色々な動物の姿で動き回るわ。』

 楽しそうに千春が聞くとアイトネは少し考える。


『見に行く?』

「行く。」

『会いに行くなら温厚な種族が良いわよねぇ。』

「温厚じゃない種族も居るのね。」

『人は敵だと思っている種族も沢山居るわよ、まぁ原因は人間なんだけどね。』

「狩るから?」

『そ、神様みたいに祀る人間もいるけれど。』

「で、どの種族?」

『北の深い森の奥に植物族の集落が有るわ。』

「へぇー・・・植物だけの集落?」

『精霊も居るわよ、ドライアドほど強い力を持った子はあまり居ないけど。』

「おぉー、やっぱドライアドさんって特別なんだ。」

『あのドライアドは魂が強いのよ、ロイロと同じね。』

 微笑みながら答えるアイトネは立ち上がる。


『誰が行くの?』

「え~っと。」

 千春が見回すとサフィーナ、モリアン、サリナ、ラルカ、そしてマクリが並んでいる。


「侍女多くね?」

「チハルは王女よ?これくらい居て当たり前なの。」

「さようですか、ルプ達も行く?」

「行くに決まってんだろ。」

「いくにゃー。」

「私も行くわー、こっちの種族見てみたいもの。」

 ルプが言うと、三珠と彩葉も答える。


「んじゃこのメンバーで。」

『おっけ~♪それじゃ行くわね。』

 アイトネが手を振ると目の前の景色が代わり、ひらけた草原が目の前に現れる。


「・・・あ、ちょっと暖かい。」

『一応同じ大陸だけど結構北に移動したもの。』

「どれくらい移動したの?」

『地球の距離で言うと、東京からフィリピンの真ん中辺りね。』

「なんで地球の地理知ってんの?」

『地図見たもの。』

「覚えたの?」

『覚えたというより記憶に有るからいつでも見れるわよ?』

「便利すぎる!!!!」

 先ほどまで受験勉強をしていた千春は羨ましがりながら周りを見渡す。


「・・・なんもないね。」

『色々あるわよ、そこの岩陰に隠れているのが草の精霊ね。』

「え?どこ!?」

 千春は岩陰を見ると手のひらに乗りそうなほど小さな子供がこちらを見ている。


「可愛いなぁ。」

『こっちの森に色々居るわよ。』

「警戒されてない?」

『されてるわね、大丈夫よココの長は私の事知ってるから。』

 アイトネはそう言うと珍しく歩いて森に向かう。


「近いの?」

『近くて遠いわ。』

「?」

『ここは迷いの森なのよ、結界を通れない者はぐるぐる同じところを回る仕組みなの。』

「へぇ~・・・ちょっとまって、離れたら私迷うんじゃないの!?」

『・・・迷うわね。』

「ちょーーーー!!!手つなご!皆手繋いで!」

 千春はアイトネの手を取ると、千春の手を侍女達が、そしてルプ達も最後尾でラルカやマクリと手を繋ぐ。


「おっけ!」

『それじゃ行くわね。』

 森の入り口まで来るとアイトネは空いた手を突きだす、するとうっすらと光る膜が現れる。


「うぉぁ~ファンタジー!」

 千春はファンタジーな光景を目にして興奮しながら叫ぶ、アイトネはクスクスと笑い手を引いて中に入ると獣道の様な所に向かう、細いと思われた獣道はアイトネを避ける様に左右に開き広い道が出来る。


「すっご、アイトネがやったの?」

『違うわよ、長が気付いて道をあけてくれたのよ、もう迷わないから大丈夫よ。』

 千春達は手を離しアイトネの後ろを歩いて行く。


「・・・見られてる?」

『えぇ、私が来るのも、外から入るのも珍しいから、人間が入るのも珍しい事だし?』

「人も入って来れるの?」

『たまーにね。』

 少し話をしている間にツリーハウスがチラホラ見えてくる。


「おー!凄い!」

「凄いですね。」

「ほぇぇ~。」

 サフィーナやモリアンも上を見ながら声を漏らす。


『あら、お迎え来たわよ。』

 アイトネが言うと千春は視線を上から前に向ける。


「鹿ぁ!?」

「ほう、アイトネ様面白い人間をお連れで。」

『シンクル、久しぶりね、この子は私の聖女チハルよ。』

「アイトネのじゃない聖女にさせられた千春です、シンクルさん?」

「シンクルで構わぬよ、人の子チハルよ。」

「いやいや、シンクルさんで、シンクルさんがココの長さんです?」

「仮で長をやっている、本当の長は数千年前人間に封印され連れていかれた。」

「えー!ひどい!」

「頭の良い人間だったと聞いている、長の無限ともいえる魔力が目的だったのだろう。」

「ひどい人間も居るんだねぇ、アイトネその封印ってわからないの?」

『わかるわよ。』

「チハルよ、アイトネ様は人との争いになる事柄は不介入なのだよ。」

「・・・そうなの?」

『そうなの。』

「ヒント!」

『・・・えぇぇ~・・・ん~~・・・。』

「はい!スフレチーズケーキ!」

『チハル触った事あるわよ♪』

「え゛?」

 スフレチーズケーキを渡すとアイトネはヒントをくれたが千春は逆に驚く。


「は!?何!?触れたことある!?」

『あるわ♪』

 嬉しそうにアイトネ所有のアイテムボックスにスフレチーズケーキを入れながら答える。


「もう一個・・・ヒントぷりーず。」

『ん~、レナが今の所有者よ。』

「レナぁ!?・・・ん?数千年前?長って精霊?」

「あぁ私と一緒で木であり精霊である種族、木として生まれドラゴンとして生きた者だ。」

「木のドラゴン!?」

「そうだ。」

「レナ、数千年前、精霊、ドラゴン・・・あ!アレかぁ!!!!!!!」

 千春は思い出し大声を上げる。


「チハル知ってるの?」

「ほら!サフィーとモリーも見てるよ!ドラゴンの里の宝物庫に有った杖!」

「・・・あ!」

「あれですか!」

 2人も思い出す、麗奈が宝物庫で見つけた精霊の声が聞こえたという杖を。


「確か今ドライアドさんに渡して解放してって渡したはずだよ!」

「ドライアドか、遥か南のアレの保護者か。」

「アレって世界樹?」

「ほう?そうか、アイトネ様が一緒に居るんだソレも知っていたか。」

「うん、知ってるよ、アイトネ、ドライアドさんの所行ける?」

「チハルよ、それは不要だ私が連絡しよう。」

 そう言うとシンクルは目を瞑った・・・・・。





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