ドラゴン食べてみたいな!

「あったけぇー。」

 千春は飛空島の更地で焚き火をしながら伐採の見学をしていた。


「ふぅ、魔法の練習にいいねぇ。」

 美桜と麗奈が歩いて千春の所に戻ってくる。


「ミオ、レナおつー。」

「何してんの?」

「焚き火。」

 千春はそう言うと、少し太めの棒切れで焚き火をかき分ける。


「と、焼き芋。」

「おー!」

「いいねぇ、もう焼けた?」

「そろそろ焼けたと思うよ。」

 アルミホイルに包まれた焼き芋が転がる。


「・・・あっつ!あっっつ!!」

「チハルどん、熱いに決まっとろうに。」

「・・・ヒール!」

「便利だなぁ回復魔法。」

「レナも水魔法の回復使えるっしょ。」

「使った事ないけどね。」

 焼き芋をお手玉の様にしながら麗奈に渡すと、3人は焼き芋に齧り付く。


「んっま!」

「いいね焼き芋。」

「そだねー。」

 千春はぼーっと返事をしながらドラゴン達の伐採を見ている。


「どうしたんチハル、黄昏てんじゃん。」

「いや、あの顔は変な事考えてんね。」

 美桜が言うと、麗奈は笑いながら言う。


「んー、ドラゴンって美味しいのかな。」

「何を物騒な事言っとるんじゃ。」

 千春の呟きを聞いたロイロがやってくる。


「異世界って言ったらドラゴンじゃん、んで、ドラゴンステーキとかじゃん?」

「あーわかる。」

「よくあるねー。」

「チハルの所は恐ろしいのぅ。」

 千春に焼き芋を受け取り、アルミホイルを剥いて焼き芋に齧り付くロイロ。


「・・・尻尾切ったら生えたりしない?」

「・・・ある程度は戻るのぅ。」

 焼き芋を食べながら虚ろな目でドラゴンを見る千春。


「ドラゴン食べてみるか?」

「え?冗談だよ!?・・・半分くらい。」

「はっはっは、わかっとるわ、ドラゴンと言っても儂らじゃ無い、別のドラゴンじゃ。」

 大笑いしながら答えるロイロは説明する。


「人が言うドラゴンは、儂ら種族のドラゴンやワイバーン、地竜あたりじゃな。」

「同族的な物じゃ無いの?」

「違うのぅ、あやつらは四肢、儂らは六肢、進化自体から違うからの。」

「んじゃ狩って食べても問題ない感じ?」

「うむ、狩りにいくか?」

「何狩るの?ワイバーン?」

「アレは骨と筋ばかりじゃ、食う所なんぞ無い、狩るなら地竜じゃな。」

 ロイロはそう言うと咆哮を上げる、すると数頭のドラゴンがやってくる、そしてロイロの所にくるとドラゴニュートに変化した。


「お呼びですか?」

「うむ、チハル王女殿下が地竜の肉をご所望じゃ、狩りに行くぞ。」

「はっ、了解しました。」

「千春!どうしたん!?」

 頼子が彩葉と一緒に走ってくる、彩葉は三珠の上に乗っている。


「あーヨリ、またチハルが変な事言うから狩りに行く事になったよ。」

 麗奈は呆れた様に言うと、頼子は笑いながら答える。


「なにー?ドラゴン食べてみたいとか言った?」

「・・・チハル寄りの人間がここにも居たわ。」

 美桜は頼子を見る、頼子の言葉を聞きドラゴン達が一歩下がる。


「半分冗談なんだけど、地竜狩りに行くことになったよ。」

「半分本気なのが千春らしいよね、みんなで行くの?」

 頼子はロイロを見ると、ロイロは笑っている。


「ココから北東の荒野から山岳地帯に数頭見たからのう、片道30分くらいじゃ、行くじゃろ?」

「行くわ。」

「ウチもー。」

「寒くね?ドラゴンに乗るんだよね?」

「魔法かけるから風は無いよ、寒いけど。」

 千春たちはドラゴンの背に乗る、もちろんそれを聞いていたサフィーナ達もドラゴンに乗る。


「イーさんよろしくですニャー。」

 侍女見習いの猫耳マクリはいつも送り迎えしてくれるイーに走り寄ると背中に飛び乗る。


『行くぞぉ!』

 ロイロが声を上げると、咆哮が響く、そして千春達の乗ったドラゴンが羽ばたき飛んで行った。



-----------------



「ん?」

「ドラゴンさんたち?」

「あぁ、千春を連れて何処かに行くようだな。」

 ユラは学園でイーレン達と授業が終わりベンチで話をしていた、ルプは当たり前のようにユラの横に寝そべっている。


「どこにいくのかな?」

「ロイロと千春の感情からだと狩りだな、今の咆哮を聞いた感じだと結構連れて行くようだ。」

「ドラゴンの狩り!?何を狩るんだろう!俺も行きたかったなぁぁ。」

 ダグーレン侯爵家の息子ケンブリットが羨ましそうに呟く。


「またロイロさんに乗ってみたいです。」

 ウォーレス伯爵家のシュウラスも控えめにだが行きたそうに呟く。


「私も見てみたいです。」

 イーレン・ゴールマンも同じ様に呟く。


「ふむ、行くか?」

「「「いいの?!」」」

「でもどこにいくか分からないよ?」

 ユラは首を傾げながら3人に言うと、ルプが話す。


「あの感じだと何か美味いものを狩りに行くみたいだったがなぁ。」

 ルプはそう呟くとニヤリと笑みを浮かべ4人を見る。


「行きたい!」

「私も!」

「僕も!」

「ユラもー!」

「よし、付き人に言いに行くぞ。」

「「「「はーい!」」」」

 ユラ達は帰りを待つ侍女や執事達の所へ走っていく。


「マルトー!ルプさんと出かけて来る!」

「どちらへ行かれるのですか?」

「・・・ルプさんどこに行くの?」

「さぁ?言う程離れてないと思うがな。」

「フェンリル様が御一緒ですか?」

「うん!」

 ケンブリットは執事のマルトーに言うと、イーレン、シュウラスも侍女と執事に伝えている。


「ユラ様、お戻りは直接王城で御座いますか?」

「うん!チハルおねえちゃんとロイロおねえちゃんのところに行くから、おわったらお城にもどります!」

「そうで御座いますか、了解致しました。」

 千春部隊の1人、側近のサビアが頭を下げる。


「イーレン様大丈夫で御座いますか?」

「俺がついてるから大丈夫だ!」

 ぴょこんと現れる妖精のポポ、ユラの頭にもルルがぴょこんと現れる。


「よろしくお願い致しますポポ様。」

 イーレンの侍女は頭を下げる。


「よし、お前ら乗れ。」

 ルプは4人に声を掛ける、子供4人ならルプの背に軽く乗ることが出来る。


「遅くなるようなら王城に一泊させる、その時は連絡を入れる。」

 ルプはそう言うと空を駆け出す、執事、侍女達は頭を下げ見送った。



-------------------



『・・・ん~~~?』

「ロイロどうしたの?」

 ロイロの背に乗った千春が後ろを気にするロイロに問いかける。


『・・・ルプか?』

「ルプ?今日はユラの学校に行ってるはずだけど?」

『うむ、追いかけて来とるのぅ。』

「えー?何だろ、用事あったのかな?」

『いや、誰か連れて来ておるのぅ、皆ストップじゃー!』

 ロイロは速度を落とすとその場で止まる、程なくかなりの速度でルプが空を走って追いかけて来た。


「待っててくれたのか、スマン。」

「どうしたの!?ユラ達まで居るじゃん!?」

「あぁ、ロイロ達の咆哮が聞こえてな。」

「それで追いかけて来たんだ。」

「あぁ、ケン達がドラゴンに乗りたいって言うもんでな。」

「そっか、背中開いてる人ケン君たちおねがーい!」

 千春が言うと2頭のドラゴンがルプの所に来る、そしてルプの背からひょいっと持ち上げドラゴンの背に乗せて行く。


「ユラとレンは?」

「ユラはルプに乗っていくー!」

「私もー!」

「おっけ~、ルプ頼んだ。」

「おう、頼まれた、で?何処に行くんだ?」

「ふっふっふー、地竜を狩りに行くんだよ、ドラゴン食べてみたくない?」

「・・・ほぉぉ?楽しそうだな、俺も狩って良いんだよな?」

「狩る程居るかなぁ。」

 周りのドラゴンを見回しながら呟くが、ま、いっかとロイロの背を叩く。


「いきゃーわかるっしょ!しゅっぱーつ!」

 千春の掛け声で再度ドラゴン達が咆哮を上げるとロイロ達は目的地に向かって羽ばたいた。






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