飛空島王都到着!

「チハル、体冷えるわよ?」

 城の高台からぼーっと空を見ている千春にサフィーナが声を掛ける。


「んー、今日はお日様出てるし大丈夫だよ、そろそろだと思うんだけどなぁ。」

 遠くを見つめる千春は答える。


「お、あれじゃねぇか?」

 横に寄り添うルプが言うと、千春はどこどこ!?と目を凝らす。


「まだ千春には見えねぇだろうな、まだしばらくかかりそうだ、ドラゴン達に任せて一度部屋に戻れ。」

 千春と感情が繋がっているルプは千春を心配し部屋に戻るように言う。


「ほらチハル、戻るわよ。」

「はーいサフィーママ。」

 渋々言うと箒に乗りサフィーナと千春は自室に戻る。


「島来たにゃ?」

「来たの?」

 三珠と彩葉が暖かい部屋で寛ぎながら千春に聞いてくる。


「ルプは見えたけどまだ遠いみたい、私は見えなかったから。」

 ふぅと一息吐くと、モリアンが温かいお茶を出す。


「ありがとうモリー・・・あったか〜い。」

 カップのあたたかみを冷えた手で感じながら笑みを浮かべる。


「島の使い道は考えたのか?」

 ロイロがソファーにだらけたまま千春に聞く。


「なーーーんも考えてないよ、テールカは島に住みたいとか言ってたけど、なんかもう街に馴染んじゃってるんだよねぇ、一応私達の家と数件建てようとは思ってるけど。」

 今も街に繰り出し食べ歩きをしているであろうテールカを思いながら千春が答える。


「王都の人間も肝がすわっとるのう、青い肌の一つ目が歩き回ってもなんとも思わんとはな。」

「昨日案内しましたけど、驚いてはいましたよ?」

 そう答えるのはモリアンだ。


「驚くのは最初だけでした!皆さん驚いた後私たちを見て『あー、姫様関係か。』って言って普通に対応してくれました。」

 ラルカはウサ耳をピコピコしながら説明する。


「・・・褒め言葉に聞こえなぁぁぁぃ。」

「褒めてはねぇなぁ。」

 ルプは大きな顔を千春の頭に乗せてポンポンと顎でたたく。


「千春戻ったの?」

「ヨリ、うん戻った。」

「島来た?」

「ルプは見えたらしいけどまだかかるっぽー、そっちは?」

「ふっふっふー、みたまえ!」

 頼子は開けた扉に手を広げながら言う。


「イロハMarkII!」

「まーくつーなの!」

 入ってきたのはアニメのロボットとは程遠い姿のマネキンのようなほっそりした姿のロボットだ。


「・・・うん、造形凄いのはわかったけど、なんでメイド姿なん?」

「いや、ユラちゃん達がこの前着てたじゃん、可愛かったってイロハが言うから着せてみたんよ。」

「千春どう?」

「控えめに言って可愛い!」

「やった~♪」

「で、何の話してたの?」

「島の今後の有効利用的な・・・何か?」

「島の着地は出来るんでしょ?」

「うん、南の森一帯に許可貰った、ドラゴン達に更地にしてもらったから着地出来るよ。」

 空飛ぶ島から帰り、エイダン国王に報告した千春は、一度地上に島を下ろしたいと相談した、エイダン国王は暫く考えた後南の森に着陸を許可したのだった。


「取り敢えず家欲しいよね。」

「うん、更地多いからねぇ~。」

 暫く話をしていると外が騒がしくなる。


『マスター、マスター、後5分後ニ到着イタシマス。』

「ほーい、ロボ君お疲れ~。」

 通信機になっている玉から声が聞こえ、千春は返事を返す。


「さて、行きますかぁ。」

「おっけ~。」

 千春と頼子、そしてサフィーナ達は庭に出ると箒に乗って飛び立つ。


「おぉぉぉぉぉぉ!こう見るとやっぱデカいわぁ。」

「壮大だねぇ、王都パニックになってない?」

 箒で飛びながら王都の真上を飛んでいる飛空島を見上げる、市井の人々は島を見て指を差しながら話をしているが驚いてはいないようだ。


「あ、テールカだ。」

 千春達の前を箒に乗って島へ向かう青い人影が見え、千春が声を掛ける。


「テールカー!」

「チハル!やっと到着したわね、こんな近くに寄せても大丈夫?」

「大丈夫っぽいね、場所指定が王城だったっぽいから、ちょっと南の森に誘導するよ。」

「おっけー、私は島の管理室に行くわね。」

 そう言うとテールカはス~~っと飛び島の上に消えて行く。


「ロボくーん、私見えるー?」

『ハイ、確認デキテオリマス。』

「南の森に誘導するから付いて来てね。」

『了解シマシタ。』

 千春達は森に向かって飛ぶと、島も後ろからゆっくりと付いて来る。


「森の前に更地があるからそこに着陸出来るー?」

『了解シマシタ。』

 千春が言うとゆっくりと森の前にある更地へ島が着陸する。


 ズズズズゥゥゥゥゥゥン!!!!!


「おぉぉぅ、中々・・・迫力あんねぇ。」

「ちゃんと着陸出来るようになってんだね。」

「そりゃそうっしょ。」

 千春と頼子は島を下から見ている、島の下の部分は平らになっており、倒れるような事は無いようだ。


「あ!千春あれ見て!!!」

 頼子は島の接地面から数メートル離れた所の開いた所を指差すと、階段が現れる。


「すげ~、階段出て来るんだ。」

『マスター、搭乗タラップヲ出シテオリマス。』

「うん見えてるよーん。」

 千春とロボ君が話をしていると、王都の方から大きなドラゴンが飛んでくる。


「ママドラだ。」

「誰か乗ってね?」

「お父様とお母様だ!」

 千春がママドラに乗ったエイダンとマルグリットを見つける、ママドラは地上に降りるとエイダン達も降りて来る。


「こりゃまた・・・大きいな。」

「そうね、私達が乗った島よりも大きいんじゃないかしら?」

「お父様!お母様!」

「チハル、島にはこの階段で上るのか?」

「階段でも良いですけど・・・結構長いですよ?」

 出て来た階段を見上げる千春、島に上まで50メートルはありそうだ。


「せっかくだ、階段で上るのも良いじゃろ。」

 エイダンが階段に足を乗せると、階段は自動で上がりだす。


「エスカレーターかーい!!!」

 千春は思わす声を上げる。


「へぇー便利ねぇ、私達も行きましょ。」

 マルグリットは千春と頼子に声をかけ階段に足を乗せる、そのままエスカレーターに乗り島の地上部まで移動する事が出来た。


「ほぉー、こりゃ広いな・・・森になっとるのぅ。」

「ここら辺は町みたいになってたらしいです。」

「ふむ、この島はチハルの所有地じゃ、街でも作るか?」

「えぇー、誰が住むんですかこんな島。」

「それじゃ別荘でも建てればどんな移動先でも寝泊まり出来るぞ?」

「・・・それ良いですね、まぁ家は何軒か建てるつもりではあるんですよ。」

「それじゃチハル、メイソンに声を掛けておくから話をしたら?」

 マルグリットも楽しそうだ、冒険者の血が騒ぐのだろうかウキウキしている。


「チハル!」

「テールカ!」

「よかった、ちゃんと着陸出来たわ。」

「うん、結構衝撃あったけど大丈夫?」

「全然大丈夫だったわよ、御機嫌麗しく、国王陛下、王妃殿下。」

 千春と並んで立っていたエイダンとマルグリットにお辞儀をするテールカ。


「テールカちゃんの家は何処なのかしら?」

「ココからだと家は見えないです、木が生えすぎてますので。」

「そう、やっぱりここ一帯は伐採した方が良いわね、出入り口のようだし。」

 そして千春とテールカ、エイダン達は一度王城に戻り、商業ギルド長メイソンと、生産ギルド長ダーサンを呼ぶと、飛空島開拓計画が進めれられる事になった。



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「おい!見てみろ!島が浮いてっぞ!!!!」

 銀級冒険者、狼の牙のリーダーパトリスが声を上げる。


「おぉーすげぇな。」

 前衛盾職のガーランも上を見ながら呟く、アーチャーのトリスは口をポカンと開けたままだ。


「やっと来たかー、後で乗せてもらおっと。」

 ユーリンは当たり前の様に言うと、シャルルもウンウンと頷く。


「・・・ユーリン知ってたのか?」

「ってかやっぱり姫様案件かよ!」

「いや、ガーラン、この手のモンは姫様しかねぇだろ。」

 パトリス達は聞いてなかったようで、ユーリンに問い詰める。


「聞いてたからねぇ~。」

「言えよ!!!!!」

「シャルルに言ったから皆にも言った気になってたわ、ごめんごめん、あはははは。」

「ユーリン。」

「なに?」

「俺も乗ってみたい、一緒に頼んでくれ。」

「ん。」

 ユーリンは手の平を出す。


「・・・金とるのかよ!!!!」

「お前一番金もってんだろ!!!!」

「昼飯でダメか?」

「しょうがないなぁ、ビーフシチューのセットを私とシャルルに奢ってくれたら話はしておくよ。」

「話するだけか!確定じゃねぇのかよ!」

「くっ・・・わかったよ!一番高いのねだりやがって。」

「やったね!」

 ユーリンとシャルルはサムズアップしながら笑みを浮かべる、ユーリンとシャルルはすでに千春やロイロと話をし、家を建てる話までしていたのは秘密だ。





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