空飛ぶ島!⑤

「ごちそうさまでしたっ!」

「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさまなのです!」

 ユラ、イーレン、イーナが手を合わせ食後の挨拶をする。


「・・・あなた達の国の作法かしら?」

「?」

 ユラはテールカに言われ首を傾げる。


「食べおわったらごちそうさまなの。」

「ジブラロール王国じゃもう皆言ってますよ?」

「イーナもアルデアも言うのです!」

 ユラ達は手を合わせながら説明する、食べ終わったテールカも手を合わせる。


「ごちそうさまでした。」

 テールカが言うとユラ達は笑みを浮かべる。


「さて、中央なんちゃらに行きますかねぇ~♪」

「チハル・・・ちょっと休憩を・・・しないかい?」

 美桜が花の上に寝っ転がりながら千春に言う。


「食べ過ぎだってばぁ。」

「美味しかったんだもぉぉぉん!」

「私もちょっと・・・休憩したい。」

「テールカさん中央の制御装置がある所って何が有るんですか?」

 青空達も同じ様に苦しそうに言い、大愛がテールカに聞く。


「この島の魔法装置が有るだけよ?」

「他には?」

「何も無いわ、建物が残っていれば何かしら有ったかもしれないけど。」

「・・・チハル、いってら。」

「後は任せた!」

「幸運を祈る。」

 寝転がり千春を見ながら言う面々。


「マジで?行ける人ー!」

「はーい私は大丈夫。」

 頼子が手を上げる。


「私も行くー。」

 日葵も余裕そうに立ち上がる。


「他は・・・うん、それじゃ3人で行ってくるわ、テールカちゃん行こうかー・・・大丈夫?」

 テールカもお腹を押さえ苦しそうだ。


「だ・・・大丈夫よ、行きましょう!」

 テールカは立ち上がり千春と準備をする。


「ロイロ、テールカお願い、ハルトも行くっしょ?」

「当たり前だ、チハル達だけで行かせられる訳がないだろ。」

 エンハルトが言うと美桜が茶化す。


「ひゅ~ハルトさんカッコいい~♪」

「ミオ、多分あのチハル達だけって言うのはそう言う意味じゃないよ。」

「うん、お目付け役って奴だよね、何するか分かんない的な。」

 ケラケラと笑いながら千春を見ると、分かってるよ!と言う顔をしながら笑っている、エンハルトはドラゴンのイー達に乗り、千春は箒に跨る。


「それじゃルプ達こっちヨロ、ロイロとビェリーは一緒に行こう、行ってくんねー。」

 皆に手を振りロイロ達も地面を蹴り飛び立つと、先程の崩壊した建物に向かった。



--------------------



「ここなんだけど・・・瓦礫が酷いわ。」

「ロイロー。」

『退ければ良いんじゃな?』

 ロイロはそう言うとドラゴンの姿のまま尻尾を勢いよく振り瓦礫を吹き飛ばす。


『どうじゃ?』

「階段埋まってんねぇ。」

「わっちが片付けるばい。」

 ビェリーが頼子の頭の上から声を掛けると、土魔法と影収納で階段を埋めている瓦礫を収納していく。


「便利だなー影魔法。」

「ビェリーは影魔法のプロだもんねぇ~。」

「ヨリ、プロって何?」

「気にするな、なんとなく言っただけだから。」

 頼子と千春が言う間にも瓦礫は無くなっていき階段が見えてくる。


「んじゃ中行くばい~。」

「ビェリーありがと、それじゃ中行こう。」

 テールカが先頭になり階段を降りて行く、直ぐに暗くなるがロイロが魔法で明るくする。


「結構深い?」

「そうでもないわよ。」

 テールカは階段を下りると扉の前に立つ。


「ココは鍵が壊れてるわね。」

 扉の横にある板に手を当てながら呟くテールカ。


「んじゃ壊すかー。」

「千春、鍵をどうにかすると言う選択肢無いの?」

「ない。」

「中は色々と有るから吹き飛ばしたら困るわ。」

「・・・えぇぇ~どうしようか。」

 頼子とテールカに言われ考える千春、しかしビェリーが声を掛ける。


「壁に穴開けるっちゃろ?」

 そう言うと土魔法で壁を崩していく。


「・・・その手があったかぁ!」

「まぁ私でも出来るけどね。」

 頼子は同じ様に土魔法で反対の壁を軽く崩す。


「そう言う事は早く言ってくださーい、なんか私が破壊魔みたいになってんじゃん。」

「みたいじゃないけどね~♪」

 ビェリーが崩した壁を通りテールカが中に入ると、部屋が一望出来た。


「・・・なにこれ、どこかの管制室?」

 部屋を見た頼子が呟く。


「え?これモニター?」

「すごっ、めっちゃ動いてるじゃん。」

 千春と日葵は外が映し出された沢山のモニターを見ながら声を上げる。


「人はやっぱり居ないわね。」

 テールカが部屋の中央にあるテーブルに移動し、水晶の様な丸い物を見つける。


「・・・何かしらコレ。」

「テールカちゃんも知らない物?」

「この部屋は何度か制御術式の調整で入ってるから、でもこんな物は無かったわ。」

 テールカはそう言うとその水晶をのぞき込む。


「文字が書いてあるわね。」

「文字?なんて書いてるの?」

「え~っと、自動運転モードにする、制御は自動人形に設定した・・・自動人形?」

 テールカはそう言うとキョロキョロと見まわす。


「何も無い・・・あ!これじゃない!?」

 千春は部屋の隅に金属で出来た人形らしき物を見つける。


「・・・壊れてんじゃん?」

 頼子も近くに寄るとのぞき込む。


「おーい、壊れてるのかー。」

 千春はそう言うと金属の人形を触る、すると人形がピクリと動く。


「チハル!下がれ!」

「ちょっ、動いた動いた!」

 エンハルトは直ぐに千春と頼子を引き寄せ人形の前に出る。


「大丈夫よ、それは戦闘出来るような物じゃないわ。」

 テールカは落ち着いて話掛ける。


「・・・やっぱ壊れてるわね。」

 少し動いたが、立ち上がる事は出来ず動かなくなった。


「よくこれで制御出来たね。」

「魔力で通信しながら制御してたんでしょうね、最低限の指示しかしてないみたい。」

「どんな指示?」

「ちょっとまってね。」

 テールカは人形を触ると中から丸い玉を取り出した。


「コレね。」

 玉を取り出し先ほどのテーブルに移動し玉を置く、そして魔力を通すと一つのモニターに文字が現れる。


「・・・この部屋の魔力メンテナンス、高度を上げ高さを維持、あとは島の環境保持・・・それだけね。」

「ずーーーーっとここに浮いて維持してたんだ。」

「だからこんな高度でも寒くないの?」

「花咲いてたもんね。」

「・・・そうね、それ以外の情報は無いわ、他の人は島から離れたのかしら。」

 寂しそうに呟くテールカ。


「この人形もう動かないの?」

「壊れてるから動かないわね、制御玉の方は無傷だから代わりの体が有れば動くわ。」

「代わりの体かぁ、どんな物で出来てるの?」

「聖銀鋼で出来た物で関節がある程度動くならこの玉で動かす事が出来るはずよ。」

「なにその不思議金属。」

「銀色の鉱石で稀に見つかる珍しい物よ、魔力を通しやすくて鉄より硬いわ。」

「この壊れた体修理して使える?」

「そうねぇ、流石に関節部分が削れてしまってるから、作り直すのは大変かも。」

 千春と頼子、そしてテールカは壊れた人形を見る。


「・・・千春、この体の金属ってさ。」

「・・・うん、アレっぽいよね。」

 2人は後ろに立つエンハルトを見る、正確に言うとエンハルトが抜いている剣を見ている。


「ハルト、その剣ってミスリル?」

「あぁそうだ。」

「・・・ミスリルじゃん?聖銀鋼って。」

「だよねぇ、ミスリルなら修理出来るよ。」

「って言うかさ、ミスリルの人形もってんだけど。」

 千春はそう言うと、彩葉が乗り込む某ロボットアニメのボディを取り出す。


「コレで行けんじゃん?」

「何これ!?」

 テールカはロボットを見て声を上げる。


「えっと、テールカちゃんが言う聖銀鋼で出来た人形だよ。」

「・・・何故そんな物持ってるの?」

「色々とありまして、あははは、その玉って何かしら繋げたりする必要ある?」

「無いわ、この玉を体の中に入れる必要があるけど。」

「そっか、ちょっと借りるね。」

 千春は制御玉を受け取り、いつも彩葉を入れる胸を開ける。


「ぱいるだーおーん!」

「必要かー?その掛け声。」

「お父さんが必要って言ったもん。」

 頼子に突っ込まれながらも、千春は中に玉を入れ蓋を閉める。


「動くかな。」

「起動する呪文が必要よ。」

「なんて言うの?」

「『うごけ』よ。」

「簡単だな!呪文!!!」

 千春は思わず突っ込み人形に向かって一言いう。


「うごけ!」

 千春がそう言うと、ロボットはブルっと震える、そしてお辞儀をした。


「やった!動いた!」

『再起動アリガトウゴザイマス、マスター。」

「良かったねー、ってマスターって何?」

『ワレノマスターデゴザイマス。」

「いや・・・違うし、テールカ?」

「おかしいわね、マスター登録は別に手順が必要なはずよ?」

「ねぇ君、私マスターじゃないよ?」

『イエ、再起動サレ、元マスター不在ノ場合、ワレト、コノ飛空城塞島ハ、マスターノ物ニナルト登録サレテオリマス。』

「・・・テールカちゃん?」

 ギギギと言いそうに首を回しテールカを見る千春。


「・・・おめでとう、この島はチハルちゃんの物よ。」

「いらねぇぇぇ!!!!!!」

「良かったね。」

「ヨリ!他人事の様に!」

「あー、エイダン王様胃袋破裂するわ。」

 日葵はケラケラ笑いながら千春に言う、千春はそのままギギギとエンハルトを見る。


「・・・こういう時は何ていうんだったか?」

 エンハルトはアリンハンドを見る。


「たしか・・・どんまい、です。」

「ふむ、チハル、どんまい。」

「ちがああう!使い方もちがあああう!!!!」

 制御室を千春の叫び声が響き渡る、そしてロボットは一言呟く。


『ドンマイデゴザイマス。』






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