墓参り!
「よし!綺麗!」
「お花はここに挿していいの?チハル。」
「うん。」
藤井家の墓を綺麗に掃除する千春とサフィーナ、大樹達はお寺の方で話中だ。
「こちらのお墓はこんな感じなんですね。」
「向こうはどんな感じなの?」
「石の板を地面に埋めますね。」
「日本はこんな感じ、国が変われば多種多様だね。」
千春とサフィーナは掃除道具を片付けながら話をしていると、大樹達が来る。
「お待たせ、綺麗になったね。」
「ふっふっふー、でっしょ。」
大樹は線香に火をつけ墓の前に置く、皆は手を合わせる、エンハルトとサフィーナは左手を握り首の下に当て目を閉じ頭を下げる。
「・・・。」
拝み終わり、ふと千春は横を見ると、小さな犬が墓の前に座っている。
「・・・犬?」
千春が呟くと、エンハルトも千春の視線の先を見る。
「何も居ないぞ?」
「・・・ルプ、あのワンコ。」
「あぁ、主人が死んだ事も自分が死んでいる事も分かっていない者だな。」
「成仏出来ないの?」
「アレはしないな、あのまま墓守になる。」
「・・・ルプにも無理なの?」
「出来るが今更だろう、100年と言わないくらいあそこに居るみたいだからな。」
「えぇぇ、可哀想。」
「気にしていたらキリが無いぞ?輪廻に戻れない魂なんぞ沢山居るからな。」
ルプはそう言うと千春は不満げに言う。
「でも、手の届く所には差し出したいじゃん?」
千春が呟くとコンが答える。
「僕が話して来ますね。」
コンはテコテコと歩き、犬の霊に話しかける。
「千春、どうしたんだい?」
「んー、ちょっと可哀想なワンコの霊が居てね。」
「千春霊感あるの?」
「あれ?何で霊見えんの?私。」
「聖女だからじゃねえか?」
「はぁ?!そんなオプション付いてるとか聞いてないんですけどぉ?!」
文句を言っていると、コンが戻ってきた。
「ダメでした、分かっているけれど離れたく無いそうです。」
「そっか、知ってて居るならしょうがないね。」
もう一度チラリと犬の霊を見る千春、犬の霊は主人の眠る墓石を見続けていた。
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「ただいまおばぁちゃん!」
「おかえり、報告出来たかい?」
「うん、めっちゃした。」
「チーちゃんとハルト君、サフィーちゃんに大樹さん、一度に報告されて大変だろうねえ。」
娘が困った顔を想像し、文恵は少し悲しげに微笑む。
「おばぁちゃん籠持ってどこ行くの?」
「畑に野菜採りにね。」
「手伝う!」
「疲れてないかい?」
「大丈夫だよん。」
「わっちも手伝うけん!」
「僕も!」
「・・・!!」
ビェリーとコン、人形も手を挙げる。
「俺も手伝うか。」
「私も手伝います。」
エンハルトとサフィーナも千春の後ろから言うと、文恵は畑に案内する。
「晩御飯のおかずだからそんなに採らなくても良いんだけどね。」
「収穫しないと腐るんじゃない?すっごいあるよ?」
燦々と夏の日差しを浴びた野菜は沢山実っている。
「腐って落ちた物は肥料になるから無駄にはならないよ、ご近所さんにも配るからね。」
「私もらって良い?」
「あー、ビェリーちゃんが持てたわねぇ、いくらでも持っていきな。」
「よっしゃー!ビェリー頼んだよ!」
「まかせり!」
「僕も頑張ります!」
「・・・!!」
2人と1体は畑に入り、真っ赤なトマトやとうもろこし、胡瓜、ピーマンを収穫して行く。
「色々植えてるね、おばぁちゃん。」
「他にやる事無いからねぇ。」
ナスを採りながら話をしていると、ルプが狼の姿で林から現れる。
「千春、猪が居るぞ。」
「えぇー、おばぁちゃん猪居るって。」
「ルプちゃん狩っといで。」
「おう、行ってくる。」
ルプはそう言うと林に駆け込む。
「良いの?猪狩りして。」
「構わないよ、そこの林は爺さんの土地だし狩猟許可も有るからね。」
「へぇ・・・。」
「分かってないでしょ、チーちゃん。」
「うん。」
話をしているとルプはすぐに戻って来た。
「婆さん狩って来たぞ。」
「爺さんに渡しておいで、直ぐに血抜きしないと臭くなるからね。」
「分かった。」
ルプは狼男の姿で自分よりも重そうな猪を担ぎ家の裏に持って行く。
「土地神様なのに言う事聞いてくれるねぇ、チーちゃんのペットって言ってたけど冗談じゃなかったのかね。」
「まぁ普段から言ってるからね。」
千春は畑を見ると、エンハルトとサフィーナも楽しそうに野菜を収獲していた、千春も続けて収獲を手伝う、そして大量の野菜はビェリーが影に収納し食べる分を家に持って帰った。
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「おぉ・・・グロっ。」
千春が庭を通ると、源治とルプは一緒に猪を捌いていた。
「おー、チー今日はボタン鍋にするか?」
「このクッソ暑いのに?」
「暑い時に熱い物食うのも良いだろ?」
「えぇぇ。」
「チハル、ボタンナベって?」
「えっと、猪の肉を使った鍋、すき焼き良くするじゃん?アレの味と肉が違う食べ方。」
「美味しいんですか?」
「ん~、あんまり好きくない。」
サフィーナに説明をしながら縁側を見ると自然薯が置いてあった。
「山芋じゃん!」
「おー、さっき取って来た。」
「ナイスおじぃちゃん!」
「コレは嬉しいんですね。」
「うん、トロロご飯超美味しいからね!おばぁちゃん!!!山芋のトロロご飯してー!」
「はいよー、爺さん角煮作るから良い部位ちょうだいな。」
「おう、そこの肉もってけ。」
源治は切り分けた肉を指差すと文恵はカゴに入れそのまま台所へ向かった。
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「それじゃ下ごしらえするかね。」
「どっちから?」
「チーちゃんは自然薯の方いいかい?」
「ほーい、皮は?」
「ん~今日は剥こうかね。」
「りょ。」
文恵は肉を切り分けていく、千春は自然薯を皮を剥くと、すり鉢でゴリゴリと擦って行く。
「ドロドロですね。」
「うん、おばぁちゃんのトロロご飯美味しいよー。」
横では文恵が壺から味噌を取り出し、だし汁と合わせている。
「チーちゃん擦り終わったらコレ入れてね。」
「はーい。」
3人は猪と自然薯、そして沢山の夏野菜を使い料理を作った。
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「こんなもんだな。」
「上手いもんだな。」
「ルプが手伝ってくれたからな。」
満足そうに言う源治はルプにお礼を言うと、ビェリーを見る。
「コレ全部持って行くだろ?」
「いいん?爺ちゃん食べんの?」
「冷凍庫に沢山あるからな、ストックする程じゃねぇんだ。」
「んじゃ持って帰るばい。」
ビェリーは切り分けた肉と骨、皮まで全部影に収納する。
「すげぇもんだなぁ流石土地神ってところか。」
「俺は使えねぇけどな。」
「僕も使えませんね。」
ルプとコンはビェリーを見ながら呟く。
「さて、ちょいと酒買いに行くか!」
「お?呑むのか?」
「あぁ、婆さんの角煮はうめぇぞぉ、日本酒が良く合うんだコレが、車出すから付いて来い!」
「おう!」
「よっしゃ!」
「やったぁ!」
源治はルプ達を連れ、近所と言うには少し遠い酒屋まで車を走らせた。
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