動く和人形!

「・・・ルプ何してんの?」

 ルプ達は人形を前に座っていた。


「この人形と話をしてた。」

 目の前には市松人形の様な和人形が正座をして座っていた、千春がソレを見ていると、和人形は千春の方を向きニッコリ微笑む。


「ひぃっ!こわっ!!」

「怖いか?千春はもっと怖い物見てんだろ、魔物とか。」

「いやいやいやいや!そう言う怖さと違うじゃん!」

 千春がそう言うと、和人形は悲しそうな顔になる。


「あっ、いや、そうじゃなくてね?!って表情豊かだね人形ちゃん、呪いの人形?」

「付喪神だ、大事にされていたんだろう。」

「へぇ神様なの?」

「んーーー、神では無いなぁ。」

「そうですね、何処かで祀られていればそれなりの力も持ちますが。」

「そやね、動く以外何も出来んね。」

「お話出来るの?」

「俺達は出来るが人間には無理だな。」

「ありゃ、残念。」

 説明を聞いていると、エンハルトが覗き込んで来る。


「綺麗な人形だな。」

「ハルトは怖く無いの?」

「人形が動くくらいで怖がらないだろ、なぁサフィー。」

「えぇゴーレムみたいな物ですよね?」

「・・・コレだからファンタジーな人達は、こっちじゃ人形の首が動いただけでビビり散らかすわ。」

「可愛い人形ですね。」

 サフィーナが言うと、人形は手を頬に当てイヤイヤと首を振る、照れてるようだ。


「どうしたの?チーちゃん。」

「あ、えっとこの人形がね・・・あれ?」

 文恵が来ると、人形はコテンと倒れて動かない。


「あら、この人形がどうしたの?」

「いや、えっと、動いたの。」

「え?この人形髪の毛が伸びて怖いからってお婆ちゃんのお婆ちゃんが貰った物なのよ、伸びたら切れば良いし可愛いから飾ってたのよね。」

「怖く無いの?」

「別に怖く無いわねえ、欲しいならチーちゃんあげるわよ。」

「・・・うん、皆んな驚かせたいから貰う。」

「チハル、貰う動機がソレはどうなんだ?」

 ルプは呆れたように言う。


「ほら、悪い事してもルプ達居たら大丈夫じゃん?」

 千春がそう言うと、人形が立ち上がり怒った顔をして千春に詰め寄る。


「・・・な、何かな?」

「悪い事なんてしないわ、って怒ってんぞ。」

「ありゃ、ごめんよー。」

「本当に動いたわ・・・。」

「おばぁちゃん驚かないの?」

「驚いてるわよ、でも大きな狼やら話の出来る蛇に狐の後よ?人形が動いてもねぇ。」

 クスクスと笑う文恵、千春は人形を持ち上げると話しかける。


「あなた私と一緒に来る?」

 コクリと頭を下げる人形に千春は笑いかけると、人形は笑みを浮かべた。



-----------------



「ハルト君、お風呂空いたよ。」

「ありがとうございます。」

 大樹が廊下でハエンハルトに声をかける。


「ん?千春その人形どうしたの?」

「おばぁちゃんにもらったー。」

「お母さんがその人形とよく遊んだらしいよ。」

「え?!遊んでたの?!おかぁさん知ってたの?!」

 千春は驚き人形に言うと、人形はプルプルと首を横に振る。


「・・・千春、人形に何したの?動いてるじゃないか。」

「いや、私は何もしてないよ、付喪神なんだってこの子。」

「へぇ、お母さんはその人形でおままごととかしてたって言ってたよ。」

「あー、そう言う遊びね。」

 人形は嬉しそうにウンウンと頷く。


「で?連れてくの?」

「うん、この子見た皆んなの反応見たいから。」

「えー、連れて行くならちゃんと面倒見なよ?」

「面倒って・・・飾るだけでしょ。」

 千春が首を傾げると人形も同じように首を傾げる。


「今日は疲れたろ、早く寝なよ。」

「はーい。」

 千春は返事をすると、客間に布団を敷き、ルプを枕にしてスヤスヤと寝息を立てた。



-----------------




ペチペチ


「んー、なにー?」

 千春は顔にペチペチとされ目を開けると、和人形が顔を叩いていた。


「うわぁ!ビックリしたぁ!」

「千春がビックリしてどうすんだよ、ヨリ達を驚かせるんだろ?」

 ケラケラと笑うルプ、窓からは光が入り小鳥の声も聞こえる。


「んーーー!!あーよく寝たわ。」

「ぐっすりだったな。」

「枕が良いからね。」

 千春はルプのお腹をサワサワ撫でながら起き上がると、さっと着替え洗面所に行く。


「あら、チーちゃん早いね。」

「おばぁちゃんおはよー、人形に叩き起こされたー。」

「朝ごはん作るから居間で待ってなー。」

「手伝うよ。」

 ササッと顔を洗い歯を磨く、そしてキッチンに行くとサフィーナと文恵が料理を始めていた。


「おはようチハル。」

「おはーサフィー、相変わらず早いね。」

「習慣になってますから。」

 文恵に教えて貰いながら玉子焼きを作っているサフィーナは微笑む。


「おばぁちゃん私何する?」

「納豆出して器に入れて。」

「・・・料理ちゃうやん。」

「それじゃネギ切って。」

「ふぇーい。」

 3人が料理をすると、ビェリーとコンは居間へ料理を持って行く、気付けば和人形もお盆を持ち、小鉢を運んでいた。


「(うわぁぁ!!!)」

「あ、おじぃちゃんが驚いてる。」

「心臓止まらなきゃ良いけどね。」

「(婆ぁさん!人形が動いとるぞ!!!)」

「おばぁちゃん、おじぃちゃん呼んでるよ。」

「動きゃしないんだからほっときなー。」

 ケラケラと笑い、源治の声を華麗にスルーし料理を続ける文恵、千春とサフィーナも出来た料理を運ぶ。


「こりゃチーの仕業か?」

「うんにゃ?前から動いてたらしいよ?」

「髪が伸びるったぁ聞いてたが・・・見慣れると可愛いな。」

 人形は可愛いと言われイヤンイヤンと嬉しそうに顔を振る。


「人形ちゃんご飯食べれないよね。」

 千春が問いかけると、スンっと表情を落とし項垂れる。


「まぁ人形だもんねぇ。」

「それじゃ食うか。」

 源治が言うと皆は頂きますと、食事を始める。


「サフィーちゃんは納豆イケるのか。」

「はい、チハルが前出してくれたので。」

「最初の一口目ヤバかったよね。」

「慣れると美味しいですね。」

 朝食を取っていると、源治が話す。


「飯食ったら車出すからな。」

「はい、お願いします。」

「お父さん持って行くもの準備出来てんの?」

「お婆ちゃんが揃えてくれてたよ。」

 文恵は千春を見るとピースする。


「流石おばぁちゃん。」

 千春が言うと、人形が千春の袖をツンツンと引っ張る。


「どしたの?」

「・・・・。」

 自分を指しながらウンウンと頷いている。


「ルプ、なんて?一緒に行きたそう?」

「あぁ、一緒に行きたいって言ってるな、遊んでもらったお礼してないそうだ。」

「うん、一緒に行こうね。」

 千春は笑みを浮かべ、人形に言うと人形もニッコリ笑って千春の横にちょこんと座った。










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