おばぁちゃんのご飯!

「・・・。」

「おじぃちゃん大丈夫?」

「お、ぉぉ、おぅ。」

「おばぁちゃん?」

「・・・。」

 祖父母はポカンと口を開け、ルプ達を見続ける。


「ルプ、人化出来る?」

「そうだな。」

 そう言うとルプ達は人に化ける。


「ビェリー荷物ヨロ。」

「ほいほい。」

 ビェリーはお土産の入ったバッグを取り出し大樹に渡すと、大樹はテーブルに置く。


「おじぃちゃん紹介するね、こっちが近所の神社で土地神やってたルプ、でっかい狼ね、で、こっちがちょっと遠い神社で土地神してたビェリー、大蛇の白蛇、そんでこっちが宇迦之御魂大神様の御使コンだよ。」

 2人に紹介すると、祖父母は座り直し背筋を伸ばす。


「儂は大城源治(げんじ)、チーの祖父で御座います。」

「文恵(ふみえ)です。」

「あー、よろしく頼む、それと畏まらなくて良いぞ、今は土地神じゃねぇからな。」

「そうやね、チハルのペットやもんね。」

「僕も面倒見てもらってますからねー。」

 ゲラゲラ笑うビェリーとコン、ルプもつられて笑う。


「うん、信じられないかも知れないけど、全部説明しようか。」

 大樹は千春に言うと、異世界の事、エンハルト、サフィーナの事、そして改めてルプ達の説明を祖父母へする、2人はそれを黙って聞く、しかし疑う気はない様で真面目な顔で聞いていた。



-----------------



「さてと、晩御飯作らなきゃ、チーちゃん、サフィーちゃん手伝ってくれる?」

 文恵はおもむろに立ち上がり、千春とサフィーナを連れキッチンに向かう。


「おばぁちゃん現実逃避したね。」

「・・・荒唐無稽って言いたいけど、ルプ様達がいらっしゃるもの、本当なんでしょう?」

「うん、全部嘘偽り無くマジな話しだよ。」

「それじゃ考える必要無いじゃない?」

「そんなもんなの?もっと驚くかと思ったけど。」

「十分驚いたわよ?」

 フフッと笑う文恵はキッチンに着くとエプロンを付ける。


「うわぁぁ!スッゴイ!システムキッチンだ!」

「フフッ、お爺ちゃんがね、リフォームしてくれたんだよ。」

「やさしーおじぃちゃん。」

「キッチンはお婆ちゃんの仕事場だから、仕事するなら使いやすい場所、良い道具でやるもんだってね。」

「かっけぇー。」

「食いしん坊なだけよ、チーちゃんは料理出来るわよね?」

「もち!」

「サフィーちゃんは?」

「チハルに鍛えられてますから、概ね大丈夫です。」

「それじゃやりましょうかねー。」

 文恵は袖を捲りキッチンに立つと、2人にテキパキと指示をし料理を始めた。



-----------------



「はーい、おじぃちゃん料理出来たよー・・・って、えぇぇぇ!もう呑んでる!おばぁちゃん!おじぃちゃん達もう呑んでるー!!!」

「あらあら、おつまみも作らないとねぇ。」

 千春と文恵が料理を運んで来ると、源治達は既に呑んでおり、テーブルにある一升瓶は既に無くなりかけていた。


「チー、土地神様への御神酒だぞ?」

「おじぃちゃんもめっちゃ呑んでんじゃーん、ハルトまで呑んでるし、無理しなくて良いからね?」

「大丈夫だ、美味しく頂いてる。」

 男連中はそう言うと、また呑み出した。



-----------------



「おばぁちゃんそれ何?」

「庭で採れたニガウリだよ。」

「ニガウリ食べた事無いなー、苦いの?」

「苦いねぇ。」

 半分に割り、中をスプーンで削ぎ落とすと半月のままスライスし、お湯に入れる。


「お湯に通して直ぐに氷水に冷やして、少し絞るんだよ。」

 文恵は教えながら手早く作る。


「後はダシ醤油と鰹節を掛けて終わり、コレお爺さんに持って行って。」

「はーい。」

 サフィーナと千春は小皿に盛り付け運ぶ、その間にも文恵は煮っ転がしや筑前煮と、作って行く。


「チーちゃん何か食べたい物有る?」

「ナスの煮浸しとー、揚げ出し豆腐!」

「あいょー、ナス出してね。」

「はーい!」

 リクエストに答え料理が進む、千春は文恵に教えて貰いながら一緒に料理をした。



-----------------



「チーちゃん、サフィーちゃんはこっちで食べなさいね。」

 酒盛りをしているテーブルの横に料理を並べ、文恵は座る。


「「いただきます。」」

「はい、召し上がれ。」

 2人は料理に手をつけると笑顔になる。


「んーーー!おいしー!」

「美味しいです、塩気と甘みが絶妙ですね。」

 2人はウンウンと頷く。


「こりゃ美味い!コレは婆さんじゃ無いな、チーが作ったのか?」

「そだよー、美味しい?」

「美味い!その歳でコレだけ作れりゃ立派なもんだ。」

 パクパクと食べながら源治は言う。


「婆さんは結婚した時なーんも作れんかったからなぁ。」

「そうなの?」

「知ってる料理は結婚して1週間でネタ切れになったわねぇ。」

「よー失敗もしてたなぁ。」

「でもあんた全部食べてくれたわよね。」

 フフッと笑い文恵が言うと、源治は照れくさそうに文恵の料理を食べる、そして賑やかに食事が進んだ。


「ご馳走様でした!」

「はい、お粗末さま。」

 手を合わせて挨拶をする千春、サフィーナと千春は片付けを手伝い、酔っぱらいを放置し3人で風呂に向かう。


「・・・お風呂でかっ。」

「爺さんの趣味よ、これ爺さんが作ったんだよ。」

「マジで?」

「でも掃除大変なのよ。」

「だよねぇ。」

 旅館にある家族風呂の様な浴槽にはたっぷりとお湯が張られ、木のいい香りが漂う。


「温泉じゃ無いよね?」

「井戸水温めてるだけ、ほらチーちゃん頭洗ってあげるから座りなさい。」

「自分で洗えるよー。」

「良いから座りな。」

「・・・へい。」

 有無を言わさぬ圧をかけられ素直に座る千春、そして何故かサフィーナも洗われ、お返しにと2人は文恵の背中を洗う。


「あー、一生分ビックリしたねぇ。」

「ごめんねおばぁちゃん。」

「申し訳ありません。」

「良いんだよ、幸せなんでしょう?大樹さんも嬉しそうだったものねぇ。」

 文恵はニッコリ微笑みながら湯船に浸かる、千春とサフィーナもつられて微笑む。


「異世界でお姫様で聖女様ねー、サフィーちゃんも一緒にお嫁さんなのよね、チーちゃんをよろしくね。」

「はい、幸せにします。」

「フフッ、チーちゃん、サフィーちゃんのお嫁さんになるみたいね。」

 暫く湯船に浸かり、異世界の話で盛り上がる3人は、お風呂から上がり居間に戻る、気付けば源治と大樹が差しで呑んでいた。


「お父さん、お風呂空いたよ。」

「うん、わかったありがとう。」

「ちょっと酔い覚ましてから入ってよ、おじぃちゃんもね!」

「わーっとるわ、婆さんみたいな事言うなぁチーは。」

「ハルトは?」

「酔い覚ましに外行ったよ。」

「ルプ達も?」

「多分ね。」

 千春とサフィーナは廊下を通り外に出る、弧を描いた月が光り、満天の星空の下にエンハルトが立っていた。


「ハルト、大丈夫?」

「あーチハル、大丈夫だ、言うほど呑んで無いからな。」

「それなら良いけど、疲れたでしょ。」

「色々驚く事が多すぎてな、疲れも吹っ飛んだよ。」

「星見てたの?」

「あぁ、違う世界なんだなぁ、星の並びが全く違う。」

「そりゃそうだよ。」

「よく見えますね、チハルの家ではあまり見えないものね。」

「ココは田舎だからねー、空気も綺麗だし。」

 たわいもない話をしていると千春がふと思い出す。


「そう言えばルプ達は?」

「ルプ殿達は家の中に居るぞ?」

「ん?何してんだろ。」

「人形と話をしてたぞ。」

「・・・へ?」

「チハルが花火大会で来ていた浴衣に似た服を着た人形だ。」

「・・・はぃ?」

 千春はそう言うと家に駆けこんだ。







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