王子殿下と魔法バカ(2)

「ところで王宮の方は土日・・休みの日って言いましたよね?何で王子殿下が今いらっしゃってるんですか?」

 今日は昨日の続きと言うか、魔法の属性の話こそしていたが、王宮の対応は土日と言っていたはずだった、疑問に思った千春はローレルに質問してみた。


「はい、明日の予定として正午の鐘、そちらの12時ですね、その時間でお伝えしてお話はその後にと言う予定にしております、王子殿下は・・その、報告の際につい今日も来られると・・・言ってしまって、自分も会ってみたいと、言う事でして〜〜。」

 うんうんと頷く王子殿下。


(謝罪も頂きましたし、居ても良いんだけどもぉ・・・帰ってくれてもいいんだけどもぉ・・・。)


「まぁそれは置いといて、さぁこの鑑定石使ってみましょう!」

 ウキウキだな・・と思いながら鑑定石を見てると王子殿下が話し始める。


「コイツは魔法の事になるとバカになるからな、きっと異世界人の魔力とかに興味あるんだろう、過去に勇者とか聖女とかが、異世界からの転生人だったとかの文献で興味もってたからな」

「え?異世界転生とかあったの?!」

「ええ、文献でしか残っていませんし、この王国が出来る前の話でもありますから、チハルさんの世界からかも分かりませんし、他の異世界からの転生かもしれません、ただ生まれも育ちもこの世界なので魔力等は変わらないのではと、スキル等は特殊だったようですが。」

 分からない事ばかりの文献ではっきりしないと、悔しそうに語るローレル。


「何年くらい前の話なんですか?」

「1,000年くらい前ですね、この国が出来たのもその頃です。」

「へぇー、1,000年は凄いなー。」

 そう言いながらテーブルに置かれた鑑定石をそっと触ってみる。


「両手で包むように左右から触ってください、そして魔力を少し流してみてください。」

「・・・どうやって?魔力なんて流せないんだけど。」

 そう言って鑑定石を左右から触ってみるが、何も起きない、魔力なんて物が何なのかも分からないからしょうがない、指輪のように魔力を吸ってくれるならまだしも、流せと言われても千春には出来なかった。


「そうですね、利き腕はどちらですか?」

「右!」

「では右手から石を通して左手に熱を送るイメージで、そうですねー手のひらの温度を感じながら石に伝えて、左手に届く様にイメージしてみてください。」

「むーーーーーー・・・・・・・(むーんむんむんとーどーけー)。」

 適当に言われた通りにやる千春、しかし手の平が熱くなる感じがしてきた千春は続けていた、そして鑑定石が僅かに光りだす、そしてほんの僅かだが変化が出てきた。


「あ、ぼんやりしてきた。」

「いいですねもう少し送れますか?」

「やってみる。」

 そう言うとさらに(あったかいの通れー!)と念じながら手の平に集中する、光が増える、そして鑑定石の上にポップアップウインドウが現れた。


「ゲーム画面かよ!」

 思わず突っ込む、そう、良くゲームや漫画で出てくるアレである。


「見えましたね、えーっと・・・魔力は平均的な数値ですね。」


------------------

・チハル 17歳

・HP:38/38

・MP:39/43

攻撃力:4

防御力:3

素早さ:15

器用さ:86

スキル

・料理:7

・家事:4

属性・聖水風

------------------


「ほぉぉ!これは中々・・・属性が3つとは逸材ですね!」

「おおー!魔法属性3つ!コレ魔法使えるんじゃない!ねぇねぇ!」

 大喜びなローレル、魔法が使えそうな雰囲気でニヤニヤな千春、そして一点を見つめる王子殿下。


「器用さ86って・・・中々居ないぞ、凄いなってお前成人してんのかよ!」

 感心する王子殿下、言葉遣いが壊れてるのも気にせず成人してることにビックリしていた。

 この国の成人は15歳であり、純日本人の千春はそれはそれは慎ましい体型なので12~13くらいと見られていた。

 千春は(あー、日本人あるあるだわー)と思っていたが、しかしそれよりも思う事が有る千春はローレルに聞きたいことが有った。


「ねぇ、なんで日本語で書かれてんのに読めんの?」

 そう、表記は日本語なのに二人とも読めてるのが不思議で千春は問いかける、しかし簡単な理由だった。


「私たちにはこちらの文字で見えてますよ?逆に良く読めたなぁと思ってたんですが、そちらの言語表記で読めるんですね、新たな発見ですねー。」

「ふぅーん、ちなみにステータス平均ってどれくらいなの?」

「そうですね、17歳と言う事でまぁ成人女性の平均から言いますと、体力は50~60、魔力は20~30、攻撃力や防御力は筋肉の付き方が関係しますが10前後素早さも同じですね、器用さに関しては30もあれば器用だと言われます。

 ちなみに侍女あたりは、貴族子女の修行と言う事もあり器用さは50前後でかなり高いです、そしてスキルは10段階であり4もあれば、仕事として差し支えない感じですね。」

「基本平均以下だけど魔力はぼちぼち、器用さは異常と・・・誰が異常か!」

「まぁ平均ですからね、魔術師でしたら100以上、魔導士でしたら200以上は無いとだめですけどね。」

「えぇぇぇ!んじゃ魔法は?」

「そうですね、生活魔法を使いつつ3属性魔法を訓練すれば・・・まぁそれなりに・・・ぼちぼち?つかえるのではないかなぁと。」


(くっ・・・せっかく属性あるからって喜んで落とすのか!ちくしょー!)


「良いじゃないか、王宮の侍女でもそんなに高い器用さ持ってる奴はほとんど居ないぞ、料理も料理長くらい有るんじゃないか?」

「大丈夫ですよ、とりあえずどれくらいの魔法が発動するか見てみたいですし、後日話が終わったら訓練してみましょうか!」

((どんだけ魔法バカなんだよ(コイツ)(この人)))

 始終ニコニコと笑っているローレルに対し、王子と千春の思いはさりげなくリンクしていた。


「ゴーンゴーン」

 そして夜の2鐘(21時)が鳴る。


「では後は明日お話の後で続きの話をしましょうか、昨日の今日で遅くなるのも問題でしょうし。」

 そう言って締めてくれたローレル、「そうだな。」と王子殿下も言う事で今日はお開になる、こちらの世界では、普通夜の2鐘が鳴る頃に寝て、朝の1鐘(6時)前くらいに起きると言う事だった、この時間はかなり遅い感じになるので侍女も残業であった。


(残業代出るのかなー。)

 千春はそう思いながら日本に戻った。






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