閑話 王宮の一室にて

 千春と話をした後、第一王子エンハルトと魔導師団長であるアリンハンド・ローレルは王子の私室に移動していた、遅い時間とは言えエンハルトもアリンハンドもココで寝泊まりしてるので問題は無い、そしてエンハルトが口を開く。


「で、師団長から見てあの娘はどうなんだ?」

「そうですね、魔力量から見てまだ伸びしろは有りそうです、3属性の魔法、あえて言いませんでしたが「聖」属性を持っていましたね・・・、何年振りでしょうか修行無しで聖属性持ちと言う人材は。」

「そうだな俺もそんな話はあまり聞かないな、それに聖魔法を習得できる人間も稀なんだろう?」

「はい、そう聞いています、魔法関連の知り合いに教会へ入った者もそう言ってます、魔道師団の方にも教会からスカウトした者も居ますので、しかし修行を聞いて、こちらで訓練させても発動は出来ませんでしたね、まぁ他の魔法で回復魔法が使えますし、今の現状としては聖魔法が絶対必要と言う状況ではありませんから問題はないですが。」

「そうだな、必要な時は教会に頼めばいい、しかし金は掛かるだろうがな、仕方ないか、経費として今まで見てきた事だ、使える者が要ればとは思うが、無い物ねだりをしてもしょうがないからな。」

「そう言う事です、ですから最初から聖属性を持つチハルさんは、王宮としても研究出来るいい機会なんですよね。」


 「聖」属性というのは基本最初から持つ物ではない、教会それも神聖教会での修行を何年も行い限られた人物だけが発現出来る属性である、治癒、回復、病魔、浄化等の特殊魔法、治癒や回復は他の属性でも可能だが、浄化等の魔法は聖属性でしか発動出来ない、偶に生まれた頃から持つ者も居るが数年、数十年に一人であった。


「聖女・・・では無いのか?」

「ええ、聖女でしたらスキルに聖女と付きます、コレは文献にも在りましたので間違いないと思います、それに聖女でしたら魔導士くらいの魔力が有るはずなので、出来ても回復くらいでしょうね。」

「そうか、他はこう・・・ぱっと映えない感じだったが、器用さが高いくらいか?」

「そうですね、これと言った特徴があるわけでもなく普通なんですよね、異世界人と言う事で、どこか極端なステータスが現れるかと思いましたが、気になる所は器用さ、「聖」スキル持ちで3属性と言う所なので、「聖」は置いておけば無くも無い・・・感じですね。」


「ふむ・・・所であの門・・扉は問題無いのか?色々と問題が有りそうな気もするんだが、今後何もないと確定した情報が無ければ、あのままと言う訳にもいかないだろう、それこそあの部屋ごと封鎖しなければいけなくなる。」

「ええ、最初に話した時に異世界転移の物語を少々聞かせてもらいまして、転移が何度も出来るパターンでの問題点として、こちら側、あちら側の武力やビョウゲンキンと言うものの注意がありました、ただチハルさんの国では武力を保持する事はほぼ不可能で、持ち込みは無いだろうという事、こちらからは指一本入る事が出来なかったので問題は有りません、ビョウゲンキンの方はこちらでも認識している病魔等の事らしく、対策として転移門の有る部屋に病魔浄化の魔法を魔石付きで設置済です。」

 ローレルはエンハルトに言うと、話を続ける。


「あちらから来ても、こちらから帰る時も問題なし、おかげで教会の方には色々と疑われましたし、お金も掛かりましたが、病魔対策用の部屋と言う事で問題ありません。」

「そうか、そう言う事なら大丈夫だろう、それに自由に行き来出来るんだ今から色々聞いていく事も出来る、あちらの知識は是非とも受け入れたい、父上も同じ判断だ、それこそ国賓扱いでも構わんくらいのな、身なりからしても良い暮らしをしていそうだ、少し話しただけだが学も有る様だ。」

「そうですね、あちらの物語を聞いただけでもかなりの情報は有りました、それこそ聞いた事の無い技術や魔法、スキルの概念もこちらよりも詳しく話していましたから相当だと思いますね。」

 2人の千春に対しての認識としては是非とも情報を聞きこの国、そしてこの世界で役に立つ情報をどれだけ引き出せるかと言う所であった。


「では明日午前のうちに陛下にお伝えし部屋を取っておこう、危険人物でも無い、門も問題無い、こちらが迷惑を掛けている状況だ、あの部屋はチハルが寛げる様に模様替えもした、この国に居る時はあそこでのんびりしてもらおうか。」

「チハルさんが来た時に対応出来るように、侍女たちの待機所か侍女長に分かるようにしておきましょう。」

「ああ、そうしてくれ、では面倒な話は終わらせて飲むか?アリンと飲むのも久しぶりだからな。」

「ハルトは飲むと絡むから嫌なんですよ。」

「そんな事はないだろう、お前だって結構酒癖は悪いぞ、俺なんて可愛いもんだ。」

「毎回言いますけど、ハルトに飲まされてるんですからね?私は自分の飲むペースを崩さなければ大丈夫なんです。」

「ほう?そう言いながら黙ってたら簡単に一本空けるだろう。」

「まぁ美味しいお酒でしたら飲めますよね。」


 師団長アリンハンド・ローレル、ジブラロール王国第一王子エンハルト・アル・ジブラロールこの2人は幼馴染であり幼少の頃からの付き合いでもある、そして2人きりの時はあだ名で呼び合う仲であった、そして今後チハルがこの国に気楽に来れる様に、そして自分たちも楽しく過ごせる計画を練るのであった、悪巧みとも言うが。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る