王子殿下と魔法バカ

ばちーん!


「千春おっはよーん!」

 元気よく背中を叩いたのは向井頼子(むかいよりこ)だ、幼い頃からの幼馴染であり同じクラスの親友である。


「あ゛ぁ・・・おはよぉぉ。」

「どうしたの?めっちゃ眠そうじゃん。」

「うん・・・昨日色々あってさー・・ぁぁぁあああああ!!!!ヨリ!宿題見せて!!!」

「えええ!やってないの?!今日の古典だから写すだけだけど忘れたらやヴぁいじゃん!ちょっとBダッシュで教室行こ!写すだけならHRまで間に合うっしょ!」

「ありがっとおおおおお。」

「いいよ!お礼は学食の日替わりで!」

「うっ!・・・はい、是非奢らせて頂けたらと・・・。」


(くっ・・・ローレルさんになんかタカるか・・ちくしょー!。)



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「どうしたん?宿題忘れるとか、珍しいじゃん。」

「いや、うん、ちょっと映画?洋画みたいなの見ててさー遅くなっちゃってね、忘れてた。」

「ふーん。」

 ヨリこと向井頼子はパックいちごミルクを飲みながら興味半分と言う感じで話をしていた、千春は本当の事を言った所で「頭大丈夫?」とか言われそうだし、信じられて連れていけ!と言われてもちょっと困るな・・・と返答を濁した、そう、頼子はラノベや転生、異世界物は大好物なのである、もし本当の事を言えば確実に、そう、絶対と言う言葉がこの為に有るのだろうというくらい連れていけと言われるだろうと。


「そだ、明日さーION行かない?新しい新刊でてさー、あと寒くなってきたからマフラーとか買いたいんだよねー。」

「あぁ・・・今週はちょっと予定がー・・・・。」

「えー・・・千春が予定とか珍しいね、いっつもひまひまひまひまひまひま言ってんのに。」

「そんなに言ってないわああ!たまには用事もあるさーねー・・・。」

「まぁ良いわ、今度遊びにいきまっしょい。」

「ういーっす。」

 そして放課後家までダッシュせずに普通に帰る、待ち合わせの時間はまだあるのでノンビリ帰宅する事にした。


「たしか晩御飯食べてた時間は8時過ぎてたから・・・まぁ8時くらいに顔出せばいいかっ!」

 そう言い、今日の晩御飯のメニューを冷蔵庫の中身を思い出しつつ思案しながら帰宅、今日はお風呂も先に終わらせようと、早めの晩御飯とお風呂に入った。


「今日は軽くでもいっかなー。」

 鶏肉を解凍しつつタマネギ、ニンジン、ピーマンみじん切り、鶏肉を小さく刻み火が通ったら野菜を入れ炒めてコンソメとケチャップで味付け、その間に冷凍してあったご飯をチン!

 溶き卵をフライパンにバターで焼きトントンと軽く叩きながらまとめ、フワトロに纏めた卵をチキンライスの上にぽいっ!真ん中をナイフで切り込み入れる。


「フワトロチキンおむらいすー!!フゥー!」

 ハイテンション、そう昨日、日付が変わるまで話をした内容を思い出していたからだ。


「魔法かー魔法あるんだなーそりゃそうかー、扉を召喚したのも魔法だし、言葉が分かるのも魔法だもんなー、魔法適性とかあったらいいなー!どうしよう!ファイアーとか出せたら!うひゃー!」

 今日は魔法適性があるのか、ローレルから鑑定してもらう約束をしていた、ただ向こうでも魔力は皆がもっているが魔法適性(属性)がある人は少なく、さらに複数属性となるとさらに少ない。

 しかし生活魔法というどの属性にも当てはまらない簡易魔法と、安易に買える低ランクな属性魔法を付けた魔法道具は誰にでも使え、生活に支障はない為、魔法自体は生活の一部となり当たり前の物であった。

 ローレルから貰った翻訳魔法の指輪も魔力を吸い発動する為微量ながらでも千春は魔力持ちなのは確定だ。


「はぁー今日はゆっくりお風呂はいれたあぁ、昨日はシャワーだったからなー、やっぱり風呂がいいねー、特にこの時期は・・・あったまるよねぇ。」

 そろそろ時間だなーとお風呂上りとは言えパジャマではなく外に出れる格好とスニーカーを準備し扉を開ける。


「はっ?」

 帰ってきてから開けてはない、まだ準備出来てないのに連れていかれても困るし、時間を決めていたから様子も見てない扉の向こうに千春は目を疑った。


「え?部屋間違いました?」

「「いらっしゃいませ。」」

「お間違いではありません、チハル様、私共はこちらに仕えさせていただいております侍女のサフィーナと申しますよろしくお願いいたします。」

「同じく侍女のモリアンと申します。」

 2人は丁寧なお辞儀をしながらテーブルの方へ千春を呼び、少し待つ様に話す。


「今モリアンが呼びに参りますので少々お待ちくださいませ。」

 そう言いながらテーブルに置いてあるティーセットにお茶を注ぎ千春の前に置く。

そう、昨日は薄暗く魔法陣とおっさん以外何もなかった部屋にメイド(侍女であるが)2人にテーブルとイス、そして調度品、そしてすごく明るかった。

 元々魔導士団で使う研究用の予備の部屋でもあるためそれなりに広く、作りも良かったが使われてなかったため調度品も無く明かりも無かったのである。


「昨日と全然ちがう・・・。」

「はい、魔導士団からの依頼と王子殿下からの指示で部屋を使える様にと指示が有りましたので。」

「はぁぁぁ、普通にココ住めますねぇ、おっさんが死んでましたけど・・・。」

 いくら綺麗になり調度品も素敵、明るくなってもおっさんが死んだ場所には変わりない。

 部屋自体は広い、自分の住んでいる家のリビングが12畳ほど、それの倍以上あった、こんな広い部屋だったのかと思いながらお茶を飲む。

 そうしている間にノックが鳴る。思わず「はい!」と言ってしまい、椅子から立ち上がる、侍女がドアを開け外に居た男性二人を招き入れた。


「お待たせしました、よろしくお願いします。」

 顔を見てすぐに挨拶をするローレル、そしてその横に立つ男性、肩まである金髪、目は透き通ったような青、背丈はローレルより少し大きいであろうか。

 残念ながら見て身長を当てれるほどではないが、少なくとも父親よりデカい!と思い、180は有るんだろうなぁと千春は思う、そしてイケメンである、もう一度言う、イケメンであると。


「そ・・その方はどちら様でしょうかー?」

 変な敬語と上がり気味な疑問形で変な聞き方になる


「紹介が遅れたな、私はジブラロール王国第一王子のエンハルト・アル・ジブラロールだ。」

 そう言うと王子殿下は近づき話しかけた。


「国の者が迷惑を掛けた、見知らぬ地へ勝手に門を開き閉じる事も出来ぬとは、申し訳ない。」

「いえいえいえいえ、扉を閉めれば大丈夫ですから!ダダ大丈夫でございます!」

 王族どころか偉い人と話したこともない千春にとっても、王族の謝罪はあまりヨロシクない事くらいは分かる、漫画や小説でも王族が頭を下げるという事は本来有ってはならない事くらいは知っているつもりだ


「と・・とりあえずお座りになりますか?あ、他の部屋でお話ですか?」

 千春が場の雰囲気を変えようと取りあえず話を変えてみる、そしてローレルにチラッと目で合図してみた。


「そうですね、ココでお話ししましょうか、鑑定石も持ってきましたし部屋も綺麗になったでしょう。」

 ローレルは何故かニッコニコである、(お前何でそんな笑っとんねん!)と心の中で叫ぶ、そして3人はそれぞれ椅子に腰かける、さらっとティーセットを増やし、紅茶らしき物をさりげなく出す侍女のサフィーナ、(プロですね・・・)と心の中で呟いてしまった。


「さぁて!細かい事はまだ調べ終わってませんが!取りあえず鑑定石でチハルさんの魔法属性見てみましょうか!」

 元気に、最高の笑顔でいうローレル、それを当たり前のように見ている王子殿下。


(なんでこの人ウッキウキなん?魔法調べるのは嬉しいけどさぁぁぁ!・・・はぁ。)






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