第4話初めての動物病院
たびがうちに来てしばらくが経ち、動物病院へ行くことになった。
子猫は1歳までにワクチン接種を3回行う必要がある。一回目はお店で済ませているので今回は二回目だ。
たびをお迎えしたお店は動物病院が併設されており、健康診断は4回まで無料となっている。
予約も当日朝webで行えるので待ち時間も軽減できる。初心者飼い主には大変ありがたい。
しかし、猫は病院が嫌いだ。
いや人間でも好きな人はいないと思うが。
病院に連れて行かれると察すると暴れて手がつけられなくなるネコチャンもいるという。
たびは……どうだろうか?
キャリーにおとなしく入ってくれるだろうか?
診察室で暴れ回らないだろうか?
待合室でワンチャンに怯えてしまわないだろうか?
またもや不安でいっぱいになる。
しかしワクチン接種は受けねばなるまい。これは義務だ。
コロナの後遺症を懸念していたが、夫の体調は順調に回復しており病院には二人で行けそうだ。心強い。
土曜日の朝イチで予約を入れ、タクシーアプリでタクシーを手配した。
日頃からキャリーをリビングに設置して出入りさせていたので、たびはキャリーの中でおとなしくしてくれていた。
よしよし、いいぞ。
そして、無事病院に到着。開院前に着いてしまったので、外に並んで待つ。
お迎えの時たびは車の走行音や雑踏の様々な音に怯えていたので、今回も怖がって鳴くかと思ったが、静かなモノだ。前に並んでいる小型犬が吠えてもビクともしない。
ペットショップにもワンチャンがたくさんいたので慣れているのだろうか?
やがて開院し、受付をすませ待合室で順番を待つ。
せっかくなので健康診断も一緒にやってもらうことにした。
続々とワンチャンを連れた飼い主さんたちがやってくる。
猫の患畜はたびだけのようだ。
しかしたびはやっぱり落ちついていた。
やがて目の前を、体長二メートルはあろうかという超大型犬がなぜか二本足で立って目の前を通りすぎた。後ろから支えている飼い主さんよりでかい。待合室からどよめきが起こる。
そしてたびは――
熟睡していた。
いや君、よくこの状況で寝られるね!?
ニンゲンもびっくりしたのに!
強メンタルすぎんか!?
30分ほど待ち、ようやくたびの順番が回ってきた。
まずは健康診断。
優しそうな先生が、たびを診察していく。
診察台に乗せられたたびは、見知らぬ場所に連れてこられて戸惑ってはいるものの、おおむね大人しく診察されていた。
体温を測るために体温計をお尻の穴にプスッと突っ込まれても平然としていたので、先生が驚いていた。
「検温はみんな嫌がるんですけど…すごいですね」
確かに、尻穴にいきなりなんか突っ込まれたら驚くし怖いだろう。自分がやられたら絶対パニックになる。
まっこちきもんふとか男よ……!(鹿児島弁で本当に肝が太い男だ、の意)
そして、今回のメインイベント、ワクチン接種である。
これは少し怯えてイカミミになったものの、私が体を押さえて声かけしたら暴れずあっさり終わった。
あまりにもスムーズすぎて拍子抜けするくらいだった。
すごいぞたび!天才では????
私がたびなら、ビビって泣き叫んでるところだ。
健康診断の結果は異常なしだった。まずは一安心。
気になることはありますか?と先生に聞かれたので、ずっと疑問だったことをぶつけてみた。
「あの……もう秋なのに、冷たいフローリングやゴムマットに寝たがるんですけど……どこか悪いんでしょうか?」
そう、なぜかたびは、ネコチャン大好きふかふかブランケットや猫ベッドには目もくれず、私がストレッチのとき使っているゴムマットがお気に入りなのだ。
お迎え前にいそいそと買ったふかふか猫ベッドは、何度もケージの棚板から落とされるので撤去されて以来一度も使われていない。
寝るのはもっぱらキャリーの中だ。
寒いだろうとペット用ヒーターを入れると、体に当たらないようはじっこに寝る。
部屋全体を温めようと人間用のヒーターを入れると、やっぱり冷え冷えの隅っこで寝る。
リビングは比較的暖かく、常に21度前後はある。しかし猫にとっては寒いのでは?
「猫は寒いと体調を崩すので室温は常に25〜27度に保つべし!」
というYouTubeの情報を鵜呑みにしていた私はうろたえてしまったのだ。
君、寒くないんか!?
もしかしてどっか悪いのでは!?!?!?
――という私の訴えを聞いた先生は困り笑いで「まあ……この子は毛が長いから暑いんでしょうね…」
たびはダブルコートといって、被毛が二重になっている。だから普通のネコチャンよりは暑がりなのかもしれない、という結論に達した。
そう……なのか……?
でもどこから見ても健康そのものなので、ほんとにただの暑がりのようだ。そんなことある!?
実家は南九州で、冬でもコートが要らないくらい暖かかったが、それでも猫はこたつで丸くなっていたしたびと同じ長毛種だったのだが!?!??
ダブルコートだから!?ダブルコートってそんなすごいの!?
まあともかく、健康そのものという太鼓判を押して貰い、念のためにノミの薬をもらって動物病院をあとにした。
最初から最後まで堂々としていたたびに拍手を送りたい。君、猫生何回目よ!?
むしろ飼い主の私のほうがパニックになってばかりだった。お恥ずかしい。
帰宅後はさすがに疲れたのか、私の布団に寝そべり添い寝を促すたび。
私もクタクタなので一緒に寝ようとすると、夫が「おどうざんども一緒に寝てよおおお」と乱入。
度を挟んで川の字?になり、二人と一匹でしばし爆睡したのだった。
「注射したあとなので、あまり動き回らないようにしてくださいね」と先生に注意されていたが、猫にそんな話が通じるはずもない。
毎日の日課である猫じゃらしでの遊びを中止したものの、たびはいつも通り部屋を縦横無尽に駆け巡ったのであった。
しかし冬は暖房いらずのたびだが、こうなると夏の方が怖い。
冷え冷えグッズを買いこまなくては…
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