第15話 求婚【テディside】

 ロゼが婚約破棄?


 あの婚約者が真実の愛だとかなんだとかいい、卒業パーティーで婚約破棄を伝えらたらしい。


 ロゼに冤罪を着せ、貶めようとしたなんて許せない。捕らえて処刑しよう。


「テディ、やばいこと考えているな」


 アーノルドはケラケラ笑う。


「婚約者と女は返り討ちにあったそうだ。王弟殿下が笑っておられた」


 王弟殿下?


 そうか叔父上はアカデミーの校長だったな。


 しかし、ロゼの晴れ舞台を台無しにするとはやっぱり許せない!


「テディ、これで求婚できるぞ!」


 しかし、私には正妃がいる。結婚は無理だ。


 私は頭を抱えた。


 ロゼが違う男に取られるのを指をくわえて見ているしかないのか?


 どうにかならないのか?


「側妃にすればどうだ?」


 ロゼを側妃に? 


 私はキースの脛を思いっきり蹴った。


「ロゼは公爵令嬢だぞ! 側妃になどできるわけがない!」


「事情を話せばいいんじゃないか?」


「正妃が死ぬまで他言は無用なんだよ。このことがバレたらキンバリーに攻め込まれる」


 あぁもう居ても立っても居られない。


 私は心ここに在らずだった。




「テディ、噂なんだけどさ」


 噂? アーノルドが耳打ちしてきた。


「ロゼッタ嬢、縁談がなかなか無くて、年寄りの後添いか訳ありのところに嫁入りするかもしれないらしい」


 嘘だろ?


 ロゼがどうしてそんな目に遭わなきゃならないんだ。


「そんなとこに嫁入りするなら、側妃の方がいいんじゃないのか? テディ、一度、陛下やあっちの使者と話してみたらどうだ?」


「そうだよ。早くしないとジジィの後添いになっちまうぞ」


 私は部屋を飛び出していた。



「父上!」


「なんだいきなり」


 国王と呼ばなければいけないのに父上と叫んでしまった。宰相も驚いている。


「側妃を! 側妃を娶りたいのです!」


 それからは事実を知る人たちとキンバリー帝国の使者も交え話し合った。


「正妃が死ぬまで待てないか?」


 国王に何度も言われた。


「待てません! それなら私が死んだことにしてください!」


 訳の分からないことまで言い出してしまった。


「わかった。しかし、相手は公爵令嬢だ。側妃にと打診されることを侮辱されたと思うかもしれんぞ。拒絶されたら諦めるんだな」


「はい」


 私は短い返事をした。


 公爵家に打診をしてもらい、なんとか顔合わせまでこぎつけた。



 ロゼだ。やっとロゼに会えた。


 嬉しくて変な顔になってしまう。


 ロゼは私をじっと見ている。やっぱり嫌かな。


「何か?」


 私は不安を押さえながらロゼに聞いてみた、


「いえ、あまりにも大きくていらっしゃるので驚きました」


 やっぱり。やっぱりデカすぎて怖いのだろう。


「大きな男は嫌いでしょうか?」


 嫌いだろうな。嫌いって言われたら死のう。


「やっぱり嫌いですよね」


 ロゼは困った顔をしている。困らせてしまったな。


「どちらかと言えば好きです」


 へ? 今なんて言った? 好き? 好きって言ったよな。


「「「良かった!」」」


 お~、アーノルドもキースも声をあげたか。


 嬉しい! めちゃくちゃ嬉しい! 舞い上がってるわ。自分で舞い上がっているのがわかる。


 でもどうしようもない。


 私は立ち上がりロゼ目の前に行き片膝をついた。



「ロゼッタ嬢、私と結婚してください」


 私は手を差し出した。


 ロゼが手をとってくれた。


「よろしくお願いいたします」


 時間が止まった。


「「やった~!!」」


 アーノルドとキースの声が遠くで聞こえた。

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