第14話 偽装結婚【テディside】
天使がいる。いや女神か?
私は固まっていた。
夜会なんて面倒だ。見た目のいいマックスに任せておけばいい。
私だって子供の頃はマックスみたいに見目麗しかったんだ。
しかし、筋肉がつきやすい体質だったみたいで鍛錬するたびにどんどん筋肉がつき、こんな身体になってしまった。
この身体が令嬢たちは怖いようで、なかなか縁談もうまくいかない。
しかもみんな未来の王妃にはなりたくないようだ。
王太子妃教育は大変だという噂も広がり、なかなか私と結婚しようという令嬢はいない。まぁ、私も別に好きな女もいないし、どうでもよかった。
だがしかし、見つけてしまった。私の唯一無二。
私はあの女神と結婚したい!
「アーノルド! あの女神はどこの令嬢か知っているか?」
私はすぐに側近のアーノルドに聞いた。
「あ~、あの令嬢はブロムヘキシン公爵の令嬢ですよ」
ブロムヘキシン公爵? ロゼ? ロゼなのか?
ロゼは小さい頃によく公爵について王宮に来ていた。
よく遊んだ記憶がある。マックスやロベルトより私に懐いてくれていた。
あの小さかったロゼが女神になっていたなんて……
「でも、婚約者がいますよ。確かスマット公爵の令息だったと。ほら、横にいるあれですよ」
あいつと婚約してるのか? せっかく見つけた唯一無二が人のものだなんて。私はショックで項垂れた。
「そんなに好きなら奪えばいい。テディは王太子なんだし、権力を行使すれば簡単だろう?」
「そうだよ。国王陛下に王命出してもらえよ」
側近のアーノルドとキースは子供の頃からの付き合いなのでプライベートでは砕けた物言いになる。
ふたりはロゼを婚約者から奪い取れと言う。
「そんなことしたらロゼに嫌われてしまう。嫌われたくない」
「全く気弱だよな」
「王太子としてはいい感じなのに好きな女には手も足も出せない」
口の悪い側近たちだな。しかしその通りだ。私はため息ばかりついていた。
「テディ、すぐに執務室に来てくれ」
国王に呼ばれた。
私が国王の執務室に行くと、すでに国王、宰相、そしてトワレード侯爵がいた。
「どうしたのですか?」
みんな顔色が悪い。きっと良くないことが起きたのだろう。
そこで私は驚くべきことを聞いた。そして驚くべき提案をうけた。
ロベルトと一緒に留学した側近がシンバレッド王国の王女と情を通じたと言うのだ。
王女はキンバリー帝国の第2皇子の婚約者だ。キンバリー帝国の皇子の婚約者がカモスタット王国の第3王子の側近と深い中になってしまったとわかり、キンバリー国の皇帝は激怒したらしい。
しかし、キンバリー帝国が色々調べた結果、王女がロベルトの側近に懸想し、思いを告げたが断られた。それを根に持ち、媚薬を使い側近を我がものにし、監禁していたのを、行方不明になった側近を探していたロベルトや一緒に探していたシンバレッド王国の国王に見つけられたそうだ。
我が国はシンバレッド王国に抗議をし、側近は返してもらうことになり、慰謝料ももらうことになったが、キンバリー帝国はメンツが立たない。
そこで、ロベルトをキンバリー帝国の皇女の婿にする代わりに、まだ正妃がいない私にシンバレッド王国の王女と偽装結婚してもらいたいとのことだそうだ。
しかも、シンバレッドの王女と私がどこかで出会い真実の愛に目覚めた。皇子はふたりの気持ちを尊重し、ふたりを応援し、ふたりの結婚を認めたと言うことにするらしい。
王女は体が弱いので婚姻式や夜会など長い時間人前に出ることはできないことにして、離宮かどこかで静養していることにしてほしいということらしい。
まぁよくもそんな筋書きまで考えたものだ。
「王女はどうなるのですか?」
「婚約者の預かりになっているらしい」
婚約者の預かり?
「キンバリー帝国の第2皇子に監禁されて媚薬漬けにされているらしい。プライドを傷つけられた復讐だな」
なんだそれ? 怖すぎるな。私は身震いした。
偽装結婚か。まさか私が偽装結婚なんて。
そしてロベルトが人質に取られているなんて。
いくら大国とはいえ、プライドのためにそこまでするのだろうか?
「いいですよ。別に結婚の予定もないし、国のためには私が偽装結婚するしか無いんですよね?」
どうせロゼとは結婚できない。それなら誰でもかまわない。
私はシンバレッド王国の王女と偽装結婚することになった。
キンバリー帝国から使者が来た。この件に関しての書類が何枚もある。国王と私は注意深く読みながらサインをしていく。
王女は身体が弱く、体調が良くないので婚姻式は王宮のチャペルですると国民に発表された。披露の夜会も無い。
そりゃそうだろう。王女はキンバリー帝国に捕まっていて、ここにはいない。
いない王女は離宮で静養しているということになった。
あちこちからお祝いを言われる。変な気分だ。
私はロベルトを人質に取られているので仕方なく偽装結婚しているだけなのに。
偽装結婚の約束は5年。5年経ったら病死したということにしていいと交わした契約書に書いてある。
まぁ、どうでもいい。
私は時々、夜会でロゼの姿を見るのだけが楽しみだったのに、ロゼは留学してしまった。
あ~、ロゼが戻ってくるまで何を楽しみに生きていこう?
なんの楽しみも無くなった私はただひたすら王太子として、過労死しそうなくらい仕事をしていた。
「テディ大変だ! ロゼッタ嬢が婚約破棄した!」
側近のアーノルドの言葉に私は心臓が止まりそうだった。
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