第13話 【本編完結】人生なんて何が起こるかわからない
「ある夜会でロゼを見て一目惚れしたんだ。でもロゼには婚約者がいた。側近たちやマックスはそんなに好きなら権力を使ってでも奪い取ればいいと言ったが、私はそんなことはできなかった。せめてマックスのような見た目ならロゼも私を好きになってくれるかもしれない。でも私はこんななりだし、好かれるはずなんてないからな」
テディ様はそう言って俯く。
「ひとめ惚れではないですわ。私たちはもっと前にお会いしておりますわよ」
私たち私が小さい頃に何度も会っている。
「うん。夜会で見かけた時に同じ人とは気が付かなかった」
そりゃそうだろう。夜会といえばデビュタント後だから、15歳よりあと、私たちが会っていたのは5歳くらいまでだから、見てすぐ分かったらそれはそれで悲しい。
「それから色々調べて、君があの時の小さいロゼだとわかった。すぐにブロムヘキシン公爵に結婚を申し込もうとしたらすでに婚約者がいることを知った」
「だからキンバリー帝国からのお話をお受けになったの?」
私の問いにテディ様はこくんと頷いた。
「ロゼと結婚できないのなら一生結婚するつもりはなかった」
「後継はどうなさるつもりでしたの?」
「マックスがいる」
まぁ確かに弟殿下でもいいはずだ。
「でも君が婚約を破棄したと叔父上から聞き、居ても立っても居られなかった。周りは約束の5年が過ぎるまで待てと言ったが、もう誰にも取られたくなかった。このままでは君は年寄りの後添いか変な奴のところに嫁がされてしまう。それならいくら好きになってもらえなくても、嫌われても、嫌がられても、私がもらうと決めたんだ。みんなで毎日話し合った。キンバリー帝国とも話をした。それでしばらくは側妃ということにして、正妃が亡くなったあと、喪があけたら正妃になるということになっているんだ。何も知らせず、証明書にサインさせてしまって申し訳ない」
知らぬは私だけだったのか?
私はテディ様の頬をグーで殴った。
テディ様の頬には私のグーの痕がクッキリつき、唇が切れて血が出ている。
私は唇のその傷にキスをした。
「これで許して差し上げますわ。もう、嘘や隠し事は許しませんわよ」
「はひ」
テディ様、ひどい顔だわ。
「でも、私はずっと側妃でよろしいのですよ。正妃なんていずれ王妃でしょう? 遠慮したいです」
私はふふふと笑った。
*~*~*~*~*~*~*
2年後、身体が弱く国民の前に一度も姿を見せなかった正妃様が亡くなられたと発表があった。
と言っても誰も亡くなってないんだけどね。
その一年後、喪があけるのを待って私は正妃に昇格した。
ロベルト殿下は結局、我が国には戻らず、キンバリー帝国の皇女と結婚した。
テディ様と一緒にロベルト殿下の婚姻式に参列したが、私たちの想像とは違い、ロベルト殿下はとても幸せそうだった。
人質だったけれど、高待遇だったようだ。皇女殿下もとても可愛い人だった。
なんだかんだ言ってもキンバリー帝国と強い絆ができたみたいだ。終わりよければ全てよしだな。
私たちには子供がふたりいる。チビゴリクマ王子と私に似た王女だ。
テディ様はとても子煩悩で家族を大事にしている。もちろん側妃はもう娶らないそうだ。
まぁ、娶らるなんて言ったら、ぶん殴って離縁するわ。
テディ様はこの春に国王に即位した。そして私は王妃になってしまった。
卒業パーティーで婚約破棄されてから、王太子殿下の側妃になり、正妃になり、王妃になってしまった。子供を産んだらあとは遊んで暮らすはずだったのに、公務に追われ毎日忙しい。
それでも優しいテディ様と可愛い子供たちに愛し愛されて幸せでいっぱいだ。
人生なんて何がどうなるかわからない。
だから面白い。
これから先もこの国でテディ様と一緒に面白い日々を過ごしていくのだろう。
私、楽しむからね。
了
*これにて本編終了でございます。最後まで読んでくださりありがとうございました。
この後は番外編でゴリクマ視点をちょこっと書く予定です。
もう少しお付き合い下さいませ。
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