第7話 マクシミリアン殿下
婚姻式がいよいよ明日になった。
この半年間毎日のように王宮に通ったなぁ。結婚した後も私は王宮に住むそうだ。
引っ越しも終わったが正妃様が離宮に住んで側妃が王宮って大丈夫なのか? しかも部屋はテディ様の隣。真ん中にどちらの部屋からも行ける寝室がついている、貴族の屋敷では普通の作りの部屋だ。
明日の式には正妃様の国から次期国王のお兄様が来るそうだ。
妹を蔑ろにしている我が国にクレームつけたりしないのかしら?
ちょっと心配になった。
「義姉上、おめでとうございます」
明日の確認に王宮に来ている私に義弟になる予定のマクシミリアン殿下が挨拶に来てくれた。
テディ様とマクシミリアン殿下は同じ王妃様から生まれた正真正銘兄弟なのだが、見た目があまりにも違う。
兄のテディ様は強面で迫力のあるゴリクマなのだが、弟のマクシミリアン殿下は金髪碧眼で細マッチョ、雰囲気も柔らかく優しい。まさにキラキラの王子様なのだ。
まぁ、目を凝らしてよくよく見てみると顔自体は似ていないこともないが纏う雰囲気があまりにも違うのだ。
マクシミリアン殿下の年齢はテディ様より4歳下の22歳。まだ婚約者がいないのでめちゃくちゃモテる。私の学生時代の友人達も皆、マクシミリアン殿下のファンだった。
「ありがとうございます」
とりあえずお礼を言っとこう。お礼は大事。
私はそれほどそキラキラ好きではないので特にときめかない。
「私が義姉上と話すと兄上の機嫌が悪くなるのですが、お祝いくらいなら大丈夫でしょう。兄上は本当に狭量で困ったものです。うっとおしかったらいつでもおっしゃって下さいね」
狭量? なるほど、テディ様は正妃様のことが好きすぎて離宮に閉じ込めていのかもしれないな。
ヤンデレか?
どこにも行かせない、誰にも見せたくない。とか。
仕方がないので側妃を娶るという訳か。
「大丈夫ですわ。狭量どころかテディ様は無口で必要なこと以外のお話はされないので、どうもわかりにくくて困っておりますわ」
ほほほと貴族令嬢らしく微笑んだ。
「兄上が無口? 本当ですか? いやあり得ない。それは兄上になりすました別人ではないのか?」
マクシミリアン殿下は腕組みをし、首を捻る。
「兄上は決して無口ではないですよ」
「では、私がお嫌いなのかしら? なかなか話してくださいませんの」
「いや、それはないです。この婚儀は兄上のたっての希望ですよ」
そうなのか? 訳がわからないな。
「もしかして、正妃様からあまりお喋りしないで欲しいとかおっしゃられているのかしら?」
「それはないです」
間髪入れず否定の返事がきた。
せっかくなんで正妃様の事を聞いてみようかな。
私はマクシミリアン殿下に聞いてみた。
「明日の式には正妃様のお兄様が見えると伺ったのですが、側妃を娶るなど気を悪くされませんでしょうか?」
「なぜ、気を悪くするのですか? むしろ申し訳なく思っていらっしゃるようですよ」
あっ、子供ができないから不本意だが、側妃も仕方ないと思っているかも。
「正妃様にご挨拶したいとテディ様に何度も申し出ているのですが、必要ないと言われてしまうし。恨まれないように友好関係を築きたいのに」
マクシミリアン殿下ははははと笑う。
「大丈夫ですよ。正妃様のことは兄上から話をすると思います。兄上は余程、義姉上を逃したくないのだな」
ん? 何を言っているんだ?
「噂をすれば、兄上が来ましたね。私と仲良く話をしているので焦っているのですよ」
マクシミリアン殿下は悪い顔をして笑う。
「本当に兄上は狭量だなぁ。あっ、義姉上、私のことはマックスとお呼び下さいね」
ウインクされた。
「マックス!」
本当にテディ様は凄い勢いで走ってきた。
「兄上、どうされました? 私は義姉上にお祝いの言葉をお伝えしておりました。兄上もおめでとうございます。では、姉上、またゆっくりお話いたしましょう」
ヒラヒラと手を振りながら行ってしまった。
「ロゼ、マックスとは仲が良いのか?」
「いえ、特には。はじめてお話したかもしれませんわ」
確かにそうだな。接点もないし。
「マックスとは何の話を?」
「結婚のお祝いを伝えられました」
「それだけ?」
「はい、それだけですわ」
「そうか」
まぁ、狭量だとか、正妃様の事とかも話したけど、それはいいか。
「マックス様と話してはいけないのですか?」
「いけなくはないが、その……あいつは……見目麗しいので」
見目麗しい?
「ふふふ、私はテディ様の方が素敵だと思いますよ」
ちょっと持ち上げたら、テディ様は固まってしまった。
からかわれたと思ったのかな。
まぁ、どちらかと言えばキラキラ王子よりゴリクマの方が好きだな。
テディ様が無言で手を差し出した。エスコートしてくれるのかしら?
私はアルカイックスマイルをしてテディ様の手をとった。
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