第8話 婚姻式の朝
婚姻式の日は抜けるような青い空だった。
朝早くから王宮からの迎えの馬車が来た。
それに侍女のニコルとともに乗り込む。ニコルは私が子供の頃から私の侍女をしてくれている。姉のような存在だ。嫁ぐ私についてきてくれることになっている。
王宮に到着するとテディ様が出迎えてくれた。
「ロゼ、おはよう。来てくれてありがとう」
ぎゅっとハグされた。
痛い、骨折れるんじゃない? 刺客よりテディ様の方が怖いかもしれない。
「テディ様、痛いです。骨が折れてしまいますわ」
私の声に慌てて身体を離した。
「すまない。嬉しくてつい」
しゅんとしているテディ様は何だか可愛い。
「姉上、おはようございます。今日もお美しいですね」
キラキラ王子も登場だな。
「兄上は長年の思いが叶って感無量なのです。どうか多目に見てやって下さい。兄上、ハグはもっと優しく柔らかくしなければいけません。気をつけてください」
マックス様に叱られテディ様は益々しゅんとする。
仕方ない。私はテディ様の側に行き、手をとった。
「大丈夫でございます。私はこう見えて骨が太いのでそう簡単には折れません」
元気付けるつもりだったのに逆効果だったかしら?
テディ様は申し訳なさそうに微笑み
「また後ほど」と言ってどこかに行ってしまった。
正妃様のところへ行ったのかな? それもなんだかもやもやするなぁ。
そんなことを忘れるくらい、それからの私は大変だった。
侍女たちにこれでもかと言う程、磨き上げられる。髪を結い上げられ、お化粧をされ、コルセットをぎゅうぎゅうと締め上げられ、レースや刺繍で飾られた真っ白なウエディングドレスを来た私は絶世の美女になった。
しかし、何度も言うけど、側妃よ。私は側妃。これって王太子だから側妃だけど、一般貴族や平民なら愛人? 妾? だよね。女の敵だよ。
私が正妃だったら、側妃を娶るなんて言われたらぶん殴って離縁してやる。
きっと体の弱い正妃様は今頃離宮で泣いてるんだろうな。
あ~、良心が痛むわ。
日陰者なんだから、ひっそりこっそりでいいのに、こんな華やな結婚式してくていいのに。
嫌だなぁ。暗殺されちゃうんじゃないのかな?
きっと殺したいほど憎いよね。
「はぁ~っ」
私はやたら大きなため息をついた。
「お嬢様、花嫁がため息なんかついてどうしたんですか?」
侍女のニコルが突っ込んでくる。
「花嫁って言っても正妻じゃないのよ。こんな豪華なドレス着て、大聖堂で式なんてしなくていいんじゃないの。きっと正妃様の刺客に殺されるわ」
「何、馬鹿な事言ってるんですか。王家は一夫多妻ですよ。たまたま今の国王が1人しか娶らなかっただけです。側妃はちゃんと認められています。それに自分で行くと返事をされたのでしょう? お嬢様、往生際が悪いですよ」
まぁ、そんなんだけど、なんかね~。一応マリッジブルーと言うことにしておこう。
「ロゼ、綺麗だ」
さっき凹んでいたテディ様はそう言うと顔を真っ赤にしてモジモジしている。
「テディ様も素敵ですわ」
とりあえず言っとこう。ガタイがいいので正装はバッチリ決まる。
いよいよ婚姻式だ。
もう腹を括るしかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます