第5話 ゴリクマ殿下とお茶会

 王太子妃教育が始まったが、生まれた時から公爵令嬢だった私にはどうって事ない勉強だった。


 マナーやダンスも得意なのよ。留学してたから外国語も話せるし、特に習うことは何もないのよね。


「さすがブロムヘキシン公爵家のご令嬢ですわ。もうお教えすることなど何もございません」


 どの先生にもそう言われた。



 今日はゴリクマとのお茶会だ。


 王太子妃教育を終え、お茶会の会場に向かう。


 ゴリクマは先に来ていた。白いシャツに黒いトラウザーズ姿だ。

 シャツにはフリッとした飾りが襟のところについているが、ゴリクマにフリフリは似合わないな。ぷっと笑ってしまいそうになる。


「ロゼッタ嬢、今日は来てくれてありがとう」


「お誘いありがとうございます」

 

 王太子妃教育のついでなんだけどね。


「あの……その……」


 なんじゃらほい?


「え~っと……」


 はっきりせんかい!


「何か仰りたいことがございますの?」


「はい!」


 ゴリクマは勢いよく立ち上がった。


「ロ、ロゼッタ嬢、ロゼと呼んでもいいでしょうか?」


 へ? そんなことか。


「もちろんですわ」


 私はザ・貴族令嬢のアルカイックスマイルを見せる。


 ゴリクマさん、なんでそれくらいで額に汗してるの?


「わ、私のことはテディと」


 テディと呼べってか?


「テディ様?」


「はい!」


「お座りになって下さいませ、さっきからずっと立っていらっしゃいますわ」


「そうでしたね」と言いながら汗をふきふきゴリクマ……もといテディ様はやっと座った。


 よくよく考えてみればふたりで話したのはこれが初めてかもしれない。


 前の顔合わせの時は陛下や王妃様がいたし、テディ様は無口なのだろうか?


「テディ様」


「無口でいらっしゃいますの?」


 不躾だが話すことも特に無いし聞いてみた。


「そういうわけでは無いのですが。、緊張してしまって……」


「私が怖いですか?」


「いえ、むしろ可愛いです」


 はぁ? 何を言ってるんだ?


 ほれ、側近方も肩を震わせてるよ。


「可愛い? 初めて言われましたわ」


「そうなんですか? こんなに可愛いのに。みんな見る目がないんですよ」


 いやぁ、可愛い? 可愛いなんて言われたことない。


「ありがとうございます」


 とりあえずお礼を言っとこう。


 テディ様は顔を赤らめて頭をかいている。少年か!


 確か私より8歳年上なので26歳のはずだ。妻もいるくせに小娘相手に何をはにかんでいるのだろう?


 話が続かん。どうしたもんか?


 私は紅茶をひと口飲んだ。


「お茶美味しいですわね」


「あっ、よかったら菓子もどうぞ」


 そんな会話の全く弾まないお茶会はもう少し続いた。


 何か喋ってくれよ~!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る