第3話 領主の願い
「それじゃあ……この国の人たちを助けて欲しいとか……」
「無論だ。我らは魔物たちに苦しめられている」
「やっぱりそうですか……」
「もちろんタダとは言わん。それなりの報酬は用意している」
金かぁ……でも困ったことに、今の俺はお金を持ってないんだよなぁ。
それにこっちの世界に来て日が浅いし。
いきなり世界を救えと言われてもなぁ。
そもそも俺、戦えるのか? 剣なんて持ったこともないぞ。
魔法だって使えるかどうかわからない。
どうしようか悩んでいると、 バンッ! 勢いよく扉が開かれた。
そこにいたのはメイドさん。
その手には書類の束を持っている。
領主の前に来てその書類を置いた。
そして一礼して去っていく。
領主はその書類に目を通す。
表情が変わった。
そしてこちらを見てくる。
なんだ?
どうしたんだろう?
しばらくして、領主が口を開く。
その口調は先ほどまでと違うものになっていた。
どこか申し訳なさそうな感じだ。
ちょっと雰囲気が違う。
もしかしてこれが素なのかな? 俺は不思議に思って聞いてみた。
すると領主はこう言った。
曰く、
・自分は先代の領主の息子で現当主のロトマンという
・最近、息子夫婦が相次いで亡くなってしまった
・後継者がいなくなってしまったため、急遽俺を跡継ぎに決めた とのことらしい。
「突然こんなことを言われても戸惑うと思う。すまなかった」
領主は頭を下げてきた。
俺は慌ててフォローする。
「い、いえ! 気にしないでください!」
「すまない。君にも事情があるだろうに……」
「えーっと……確かに急に言われても困りますけど……」
「それで、引き受けてくれるだろうか?」
「え、えーっと……」
俺は少し考える。
そして結論を出した。
「すいませんがお断りします」
「そ、そうか……」
「はい。俺はまだこの世界のことを知りませんし、魔王を倒すというのも正直ピンときていません」
「ふむ」
「もう少し自分の力を試してみたいと思っています」
「なるほど。わかった」
「すみません」
「謝ることではない。当然の判断だと思う」
「ありがとうございます」
「それでは今日のところは宿を用意する。ゆっくり休んでくれ」
「はい。よろしくお願いします」
こうして俺は領主の屋敷を後にすることになった。
◆
翌日。
朝早く起きた俺は、街に出ることにした。
昨日の今日だけど、領主が手配してくれたおかげで宿代は払わなくて済んだ。
だからといっていつまでも世話になっているわけにはいかないだろう。
ということで、まずは冒険者ギルドを探すことにする。
街の人に道を聞きながら歩いていく。
10分ほど歩いたところでそれらしき建物を見つけた。
大きな木造の建物で、入口の上には大きな看板がある。
そこには文字が書かれていた。
多分、読めないだろうと思いつつも読んでみる。
予想通り読むことができなかった。
ただ、何と書いてあるかは何となく想像がつく。
それはゲームやアニメなどで見たことのあるようなマークだったからだ。
剣と盾が描かれたそれっぽいエンブレムが扉の上の看板に描かれている。
とりあえず入ってみることにした。
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