第2話 勇者かよ!?

「おい、まさかとは思うが……魔族じゃなかろうな!」

「いえ違いますよ! 人間ですよ!」

「本当かい? ちょっと顔をよく見せてくれないか」

「はい……」


顔を近づけられる。

じっくり観察されたあと、納得したのか笑顔になった。


「確かに普通の人間のようだね」

「信じてもらえましたか?」

「ああ、疑って悪かったね。私は村長の孫でニーナという」

「自分はタクミといいます」

「タクミか……変わった名前だね」

「よく言われます」

「それで君はこれからどうするつもりなんだい?」

「とりあえず街へ向かってみようかと思います」

「なるほど……わかった。私も一緒に行こう」


こうして俺は村を出ることになった。

村を出てしばらく歩くと街道が見えてきた。

街道といっても舗装されてない土の道だけどね。

その道を進んでいくと街に着いた。

街の門番らしき兵士に声をかけられた。

兵士は槍を構えている。

警戒されているのだろうか。

そりゃ怪しい奴が来たらそうなるか。

とりあえず身分証を見せろと言われたのでギルドカードを見せた。

兵士が驚いた様子を見せる。

あれ? 何か変なこと書いたかなぁ。

俺の心配をよそに、兵士は姿勢を正すと敬礼をした。

そしてこう言った。


「失礼しました! 勇者様とお連れの皆さまですね!」


……はい? ゆうしゃさまってなに? 状況がよくわからない。


「いや、俺はただの旅人で……」

「ご謙遜なさらずとも結構であります! すぐに領主様に報告してまいりますので、しばしお待ちください!」

「あ、はい……」


そういうと兵士は街の中に駆けていった。

それから10分ほどして、豪華な馬車に乗った貴族が現れた。

護衛の騎士を引きつれており、かなりの威圧感がある。

その貴族の男が口を開いた。


「貴殿がタクミ殿か?」

「えーっと……多分そうだと思われます」

「ふむ……では少し話を聞かせてもらおう。着いてきてくれるかな?」

「わかりました……」


なんか面倒なことになりそうだなぁ。

そんなことを思いつつ、俺は屋敷へと案内されることになった。



俺は今、豪奢な応接室にいる。

目の前には領主と思われる男がいる。

男はソファーに座っている。

護衛騎士は部屋の隅に立っている。

俺たちはテーブルを挟んで向かい合っている状態。

うわぁ……めっちゃ緊張するんですけど。

何しろ相手は貴族だからなぁ。

さっきの兵士は平気だったんだけど。

なんでだろう? まあ今はそれは置いといて、まずは話を進めないと。

このまま黙っていても仕方ないしな。

俺は意を決して話しかける。


「あの……いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」

「かまわん。申せ」

「ありがとうございます。それでは遠慮なく……あなたが領主で間違いありませんか?」

「いかにも。私がここの領地の主だ」

「そうですか。私は旅をしている者なのですが……ここはどこでしょうか?」

「どこだと……? ここはオーファンラリア王国だが」

「聞いたことのない国ですねぇ」

「……」

「それと自分が勇者というのはどういうことでしょうか?」

「貴様、ふざけておるのか?」

「いえ、大真面目です」

「ならば答えよう。貴殿は魔王を倒した英雄として、この世界に招かれたのだ」

「ええ!?」

「異世界から召喚された者たちはみな、勇者と呼ばれている」

「ええええええぇ……」


マジかよ……。

まさか本当に勇者になってたとは……。

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