第6話 出会いは突然で
僕にとって今日の宵はいつもと違うように見える。それは僕がやっと八咫烏の一員となり、人の役に立てるようになるかもしれないからだろうな。お祖父ちゃんからの一週間以内に沢山の人を助けるという試験。それさえ合格できれば僕の生活は確実に変わるはずなんだから。…何人助ければ良いのかは分からないけど。
ところで誰だろうあのこは。僕の目線の先にある、Tシャツに膝下まであるズボンをはいた、同い年くらいの黒髪と黒目をした少年は息が絶え絶えで疲れきってるように見えた。何があったか気になるけど僕にはやらなくちゃいけないことがあるし……そう思ってその場を後にしようとそこに背を向け歩き始めた。すると数秒後、そのこは僕に話しかけてきた。
「あの、ちょっと!すみません!」
まだ完全に疲れが取れていないのか若干息切れをしていた。僕に用があったのかと心当たりを探していたが、そのこはこんなことを言い出した。
「突然すみません!俺、迷子になっちまって!」
…なんだ、ただの迷子か。確かにここは住宅地が広がっているし、見た目が同じ様な家ばかりだから迷子になりそうではあるけど。正直今は時間を取られたくない。だけど、困っているなら出来るだけしなくちゃ駄目だ。それがお祖父ちゃんとの約束だし。
「何処に行きたいの?」
そう言うとそのこは何かを考え始めた。その様子はまるで、彼がここがどこか分かっているのかさえも知らないように見えた。そんなわけ無いのだろうなとは思いつつもしかしての可能性も考えた。もし本当にここがどこか分からないなら、考え付くのは別の地区からやってきた…ということかな?
僕が勝手に考えていると、彼は意を決した様な顔をしていた。一体何を話すんだろう。少しだけ、少しだけだけど興味が出てきた。
「東京に行きたいですけど……あ、もしかしてここも東京だったりします?」
「……東京?」
東京、名前だけは聞いたことがある。でもそこは宵の地名じゃなく、向こうの世界の地名の筈なのに。まさか…この子はお祖父ちゃんが教えてくれた訪問者……なのかな?いや、でも結界のせいでこっちの世界には簡単にこれないはずだし……どういうことなんだ?いっ、一応宵を知ってるか程度は聞いた方が良いよね?
「君は宵って知ってる?」
「よい?……よいって何ですか?」
表情には出さないようにしたけどその答えには驚かされた。とっ、取り敢えずおじいちゃんの所まで行って何とかしないと駄目だよね?おじいちゃんのいる八咫烏本部まで行かないと!あっ、でもこういう時こそ落ち着かないと。落ち着け、落ち着けっ……よし。
「僕のおじい…祖父が帰り方を知ってるかもしれないから一緒に祖父の所まで行かない?」
「え?良いんですか?是非!!あっ、因みに名前とかって聞いて良いですか?」
「
「俺は早世 勇矢。じゃあこれからはタメで話すな!」
あっぶない。ついついいもの癖でおじいちゃん呼びしちゃった。気を付けないと……それはそうと普段使ってるおじいちゃんの名字じゃなく僕の本当の名字を言っても態度が変わらないし、むしろいい人だ!みたいな明るい顔をしていた。それと、僕に対して簡単に敬語を外していたし………やっぱり宵の住人じゃないんだろうな。
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