第41話 通話
テテテテテテン。
スマートフォンの画面は弥生さんとフォントを表示する。
そのスマートフォンは一般住宅では考えられないほど大きい個室で鳴る。
「もしもし!」
しばらくすると、海がスマートフォンに応答する。その際、応答ボタンをタップする。
「いきなりごめんね。弥生仁美だよ」
電話から海の聞き馴染みある声が漏れる。
自然と海から笑顔が溢れる。
「弥生さん! いえいえ。全然構いませんよ!!」
啓司の時とは180度異なる態度で対応する。
今の海は非常に好意的な態度を示す。
「よかった。いきなり電話したから迷惑かもしれないと思って不安だったから」
胸を撫で下ろす仁美。慣れない電話に少なからず不安を抱く。仁美の連絡ツールは基本的にSNSだ。
「それはよかったです。それにしても、珍しいですね。仁美さんがわたくしに連絡をくださるなんて」
物珍しそうに、海は尋ねる。そのまま、異常に大きく広いベッドに腰を下ろす。
「うん。ちょっとね。広季とあの転校生に関する話で東雲さんに伝えたい内容があるから」
神妙な調子で仁美は言葉を紡ぐ。
「転校生ですか。先ほど森本さんへ蔑むような言葉をぶつけた。あの憎たらしい転校生ですね」
海はイライラを隠さない。スマートフォンを力強く握り締め、不気味に笑う。
「え!? あの転校生そんな許し難い言動を。許さない。なに広季を軽視してるの! あんたの方がよっぽど人間的に下級よ」
仁美もご立腹のようだ。スマートフォンの音声からも苛立ちを推定できる。
「そうなんですよ! しかも慣れなしく侮辱しましたよ。言語道断な行為にしか思えません」
便乗し、海も言霊に怒りを付与する。
「本当に! あいつ絶対に許さない。中学時代に広季をいじめただけでも重罪なのに。高校でも未だに見下す態度を取るなんて」
ポロッと電話した用件の内容が露見する。
「…。すいません。先ほどいじめた。そういった言葉が聞こえました。もしかして、転校生が中学時に森本さんをいじめたのですか?」
海の雰囲気が明らかに変貌する。先ほどの怒りは消え去り、能面のように無表情になる。
「うん。中学時代に広季とあの転校生はバスケ部だったらしい。部内で転校生は広季を奴隷のようこき使った。広季はそう教えてくれたよ」
仁美は勢いよく捲し立てる。力が篭ってるせいか、自然と両手を握る。
「…。そうですか。それで、そのいじめに関する内容だけをお伝えするために電話ではないですよね。もちろん他にも要件がありますよね?」
「さすが東雲さん!その通りだよ!!」
おそらく2人の目的は合致している。両者ともに同じ思考を形成する。
「ねぇ。どうやって転校生君を潰す?」
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