第33話 中学時代
「おい!下手くそ!! 黙ってモップしとけ!」
部活終了後の体育館において、啓司は広季へ命令した。
「…」
俯いたまま、広季は黙って従った。部活の実力は圧倒的に啓司の方が格上なため反抗できなかった。
「いいぞいいぞ。がんばれ!がんばれ! スタメンでエースな上、女子にモテる俺にとにかく奴隷のように従え!」
啓司の言葉に便乗し、周囲のバスケ部員達も広季を嘲笑した。
同級生の2年生を含む全ての部員達が広季を見下していた。
「本当に滑稽だと思わないか? 2年では1番バスケが下手な上、1年もあいつより上手いって」
さも、ゴミを扱うような目で、啓司は罵倒を繰り返した。周囲にアピールして共感を得るために。
「本当ですよ! 森本先輩ってバスケ本当にド下手ですからね!!」
「下手すぎて、もはや笑えないですよ」
1年生達も完全に広季を舐めていた。また、軽視していた。
最下級生なのにも関わらず、すべての雑用を広季へ押し付けた。
当時、広季は悔しくて堪らなかった。だが、部活は実力主義だった。部活で1番実力のない広季が最上級の下っ端だった。
啓司の命令は絶対だ。背くと、啓司を中心に部員全員を敵に回す。その認識だった。
したがって、毎度の如く広季は啓司の命令を聞き続けた。口答えせず、静かに召使いのように従事した。
もちろん不満はあった。ないわけがなかった。すべてを吐き出したいと何度も思ったことか。
しかし、部内の絶対君主には逆らえない。でないと排除される。
そのため、およそ3年間、この地獄の時間に広季は耐え続けた。
部活を引退した際は幸せすぎて自宅のベッドで飛び跳ねたものだ。喜びを爆発させすぎて親にお叱りも受けた。
この経験が元に、広季は高校で帰宅部に入部した。
バスケ部の苦く最悪の思い出や啓司に対する記憶を封印するために。
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