第27話 別の本命彼女?
玲は健とのデートを終え、自宅へ帰す。
ブブッ。
しばらくするとスマートフォンがいきなり振動し始める。ピンクのスマートフォンがベッドの上で小刻みに震える。
「誰だろう?」
玲はスマートフォンの電源をオンに切り替える。
ぱっ。
画面には海ちゃんと名前が表示される。
玲は迷わず『応答』をタップする。
「もしもし。海ちゃんいきなりどうしたの?」
玲は親しみのある口調で電話に答える。玲は海と程々に親交がある。自宅を訪れた際、頻繁に会話をする間柄だ。
「ごめんなさい。こんな時間に電話を掛けて」
電話口から申し訳なそうな海の声が漏れる。
現在、海の部屋に広季はいない。どうやら彼は自宅へ帰ったらしい。
「全然問題ないのよ。海ちゃんならいつでも」
玲はベッドへ腰を下ろす。ベッドは玲の体重で下方へ
口調は明るいうえ、友好的にも対応する。その言葉に嘘偽りは存在しない。完全に玲は海を信頼する。実際に健の妹なのも大きな要因だ。
「ありがとうございます。電話したのは兄に関する重大な話をするためです」
「えっ。健に関する話? 別に構わないけど。どんなこと?」
玲は不思議そうに首を傾げる。首は30度ほど斜めに曲がる。
海が健の話を玲に持ち掛ける。これは初めての出来事である。海は決して健の話を口にしない。
「非常に言いにくい話なのですか…。兄は他の女性と浮気してます」
海は神妙な面持ちで話を展開する。バレずに口元をわずかに綻ばせながら。海はよっぽど健を打ちのめしたいらしい。
「ああ。高校生の子の話ね。それなら遊びって言ってたわよ。それに健の女癖の悪さは重々心得てるから」
玲は自信満々に言い切る。自信がその言葉の端々にたっぷり現れる。玲には健の本命彼女という自負があるみたいだ。
「確かにそうかもしれません。ですが、わたくしはある日、聞いてしまったんです」
「うん」
シンプルな相槌が1つ。玲の表情が徐々に険しくなる。不安が玲の心を支配しているみたいだ。どうやら海の真剣なトーンが影響を与えている。信頼する人間の言葉は何よりも凶器だ。
「つい最近、兄がある女性を本命彼女と呼んでいました」
海は不安を煽るように必死に訴えかける。おそらく意図的な演技だろう。
それから健の部屋と接する壁を凝視する。まるで部屋の主を睨むかのように。
「…それについて詳しく聞かせて」
玲は先ほどの様相と打って変わる。声も冷淡なものに変貌する。表情にもすっかり余裕が消えてしまう。動揺しているのか。瞳も忙しなく左右に揺れ動く。
「わかりました。玲さんのために詳細に説明します」
やった!
海は嬉しそうに小声で呟く。自然と右拳はグーの形を作る。
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