第25話 お風呂
「あのう。18時を回りましたし。お風呂でも入っていきませんか?」
海はベッドで隣に座る広季へ提案する。
広季は膝まくらを1時間ほど堪能した後、海と学校に関する話をした。授業や今後の行事を話題にした会話をした。
そうこうしているうちに時刻はいつの間にか18時を過ぎる。外では夕日が立ち昇り、空はオレンジに染まる。広季と海はすっかり会話に没頭していた。
「じゃあ、お言葉に甘えて使わせてもらおうかな」
正直、1日の疲れを洗い流したい気分だった。
海からは決して見えないが、身体中に汗をかいた跡がある。季節は春。思春期の男子なら少なからず汗をかく。
「では、案内しますね!」
(なんで東雲はテンション高いんだ?)
広季は疑問を抱かずにいられない。だが、それをおくびにも出さない。海と一緒に黙って階段を降りる。
「ここです」
海は右手を前に差し出す。右手はお風呂場を指す。
「じゃあ借りるね」
広季はお風呂場の戸をしゃーっと閉める。お風呂場は洗面所とバスルームが一体化する。
(すごい広さだな。うちとは大違いだ)
広季は自宅のお風呂場と敢えて比較する。そうすれば大きさを理解できるためだ。
ゆっくり制服を脱ぎ、全裸になる。
身体はマッチョでなく、程よい筋肉質な中肉中背である。
脱いだ制服は丁寧に畳み、床に整えて置く。それからバスルームへ足を踏み入れる。
「で…でかい」
広季は浴槽と対面し、呆気に捉える。浴槽は広季の自宅の2倍はある。家が大きいだけあり、さすがとしか言えない。
シャンプーやコンディショナーも1種類だけでなく、何種類もある。どれも有名な高級ブランドだ。
「と、こうしちゃおれん」
広季は洗面器を手に取り、浴槽から水を汲む。
お湯は既に沸いている。温度は熱すぎず冷たすぎず適切。
髪を洗い、股間や身体全体も洗う。ざあぁっときれいにボディソープを流し切る。
すべてを終え、浴槽に浸かる。温かいお湯が広季の身体をじわじわと癒す。
「はぁ~~気持ちいい~~」
広季は率直な感想を口にする。自宅のお風呂とは違う気分を味わえる。
カチャッ。
突然ドアが開け放たれる。
「…失礼します」
海がお風呂へ入室する。しかも水着姿である。水玉模様のビキニを着用し、豊満な胸は水着にギリギリ収まる。
「な、なにしてるんだ!! 東雲!!」
広季はお風呂の浴槽で後ずさる。浴槽に背中を打ちつける。鈍い痛みが背中に生まれる。
「は、入っちゃいました」
海はてへっと白々しく舌を出す。なぜか手にはスマートフォンがある。
広季にその仕草は目に入らない。そんな余裕はこけない。
「いやいや。わざとらしいな! てか、問題だろ!! 俺はいま全裸なんだぞ!!」
広季は敢えて海を牽制する。自身が無防備な事実を精一杯アピールする。
「そ、それは…」
海は明らかに動揺する。赤く染まる顔を両手で限界まで隠す。広季のあそこを想像したのだろうか。
「それは…タオルで隠してください!」
海はお風呂を駆け足に退出する。バタバタ音を立てながら再び回帰する。
「は、はい! これを使ってください!」
海は広季にピンクのバスタオルを差し出す。
「お、おう。…わかった」
広季は胸を直視しないように目を逸らし、バスタオルを受け取る。
「ちょっとむこう向いてて」
広季は立ち上がり、股間の辺りにバスタオルを巻く。
海は目を瞑りながらも気になる素振りを見せる。
数秒間か無言の沈黙が続いた。その間、2人共なかなか静寂を破ろうとしなかった。
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