第14話 体育

 昼休みに広季と仁美はイチャイチャしながらベッドで休んだ。長い間、広季の身体には仁美の胸や足などが密着していた。足なんかねっちゃり絡められた。


 広季は多大な興奮を覚えたが、幼馴染の温もり効果は凄まじかった。彼は少なからず快調になった。落ち込みもかなり減少した。


 結局、広季と仁美は昼休み終了の5分前までベッドに寝ていた。


 5時間目は偶然にも体育だった。そのため、あせあせとダッシュで教室へ向かった。


「広季が休みすぎたんだよ!」


「いや、仁美が長くべったり密着しすぎだよ!」


 走りながらお互いに責任をなすりつけ合う。


 広季と仁美は手早く自身のロッカーから体操服袋を取り出す。教室の鍵を閉め、1階の更衣室に移動する。そのため、何段も階段を降りる。


 広季達はそれぞれ男女更衣室を使い、制服から体操服に着替える。


 仁美は着替えるためにブラジャーやパンツを露出させる。ブラジャーとパンツは両方とも黒一色だった。


 2人共、更衣室を退出する際にドアを勢いよく開放する。その際、わずかに息も荒らす。


 それから彼らはお互いに合流し、昇降口で上靴から外用の靴に履き替える。仁美はローファーではなく、持参した運動靴に履き替える。


 広季達は並んで運動場に向かう。


 2人は運動場に到着する。大半の生徒達は既に運動場へ身を置く。


 それぞれの生徒達は仲の良い友人と雑談する。


 傾向として男子は男子、女子は女子で雑談に勤しむ。


 男子は2、3人ほどの少人数で趣味の話を静かにする。


 一方、女子は4、5人の集団でキャッキャッとクラスの話題で盛り上がる。


「森本さん、弥生さん。ギリギリですね」


 海が薄い笑みを浮かべながら話し掛ける。海も広季達と同様に体操服を身に纏う。仁美と海の胸は体操服からでも存在感を放つ。それらの胸はふっくら体操服の上着にボリュームを加える。


「そうなんだよ東雲さん。本当に危なかったんだよ」


 仁美は安心した顔をする。保健室から走ったためか。額や頬に汗を滲ませる。


 仁美も広季と同様、中学は海と一緒だった。仁美が広季と親しいこともあり、自然と仲良くなった。そのため彼女の口調は砕けたものだった。広季と会話する口調と大差ない。


「正直、遅刻すると思ったよ」


 広季は正直な気持ちを吐露する。広季は額や頬さらには背中にも汗を流す。汗の量は明らかに仁美より多かった。


 一方、時計の針は開始時刻の12時40分を指す。針に反応するようにチャイムが学校中に鳴り響く。その音はうざいほど広季の鼓膜も刺激する。


「2人が遅刻しそうになるとは珍しいですね」


 海は不思議そうに尋ねる。声も不思議そうだった。


 広季はその仕草を視認しながらも、短パンから伸びる海の長い脚に自然と目が行く。純白でシミ1つない健康的な足だった。なぜか男を惹きつけるエロさもあった。広季以外にも海の足に目が行った男子は結構いた。


「う~ん。それはね…」


 仁美は言葉を濁す。都合が悪そうに視線をわずかに海から逸らす。視線は運動場の地面に進む。さすがに保健室での出来事は口にできないのだろう。あのベッドで身体を密着させたイチャイチャに関する話は。


「ちょっと気になりますね」


 海は広季に視線を走らせた。海の青い瞳は広季全体を1直線に覗き込む。その瞳はきれいに透き通る。まるで何かを察したかのように。


(もしかして見透かされてないよな)


 広季は内心で落ち着かない。不覚にも保健室における仁美との密着を思い出す。もちろん仁美の弾力ある胸やすべすべした足の感触もフラッシュバックする。あそこは敏感に反応し、むくむくと通常時よりわずかに大きくなる。パンツは小さい三角形を形成する。


「森本さん、今日一緒に帰りませんか?もちろん弥生さんも一緒にですよ!」


 海は広季を一緒に帰るように誘う。前のめりになったため、豊満な胸は上下に揺れる。それだけで胸の柔らかさが予測できてしまう。


「俺はいいよ。仁美はどう?」


「私ももちろんいいよ。広季さえ良ければね」


 広季と仁美は簡単なコミュニケーションを交わす。


 広季はチラリと仁美の顔を見る。仁美の顔に嫌悪感は見られない。顔も硬くなく、眉間や額に皺も寄っていない。海と一緒に下校するのは嫌ではないらしい。


「じゃあ決まりですね」


 海は嬉しそうに笑みを浮かべた。その笑みは目がきれいに細まり口角も程よく上がった上品なものだった。



☆☆☆☆☆


「え!?弥生さんはわかるけど。なんであんなに東雲さんとも仲良さげなの」


 光は驚きの声を漏らす。その声は保健室内に響き渡る。


 光はベッドから立ち上がり、気晴らしに保健室の窓から外を見渡した。そこで、運動場に集まる体操服姿の人間達から広季達を発見したらしい。


「どうしたの?」


 保健室の先生が心配そうに聞く。先生は20代半ば頃の女性でありピシッと白衣を着用する。


「いえ。ちょっと虫に驚いただけです」


 光は作り笑いを浮かべ、あっさり嘘をついた。表情筋は理想な形を形成し、目も笑ったときにできる特有の形をしていた。よくできた作り笑いだった。


「そう、しんどかったらいつでも言ってね」


 保健室の先生は自身の仕事場に戻った。


「どうして。なんで私にフラれた森本君が美女2人に囲まれて幸せそうなの」


 光は驚きを隠せない。がくがく唇が震える。光の視界には楽しそうな広季、仁美、海が映る。


 仁美と海は上品に笑い、広季は光が見たことないほど打ち解けていた。光は広季と付き合っていた。だが完全に打ち解けていない。そのため、広季の親しい人間に見せる顔を見たことなかった。広季は話を振られて口を開き、時おり頬を緩めて笑う。


「私は健君にフラれてこんなに不幸なのに、なんで森本君だけ」


 光は羨ましそうに広季達の楽し気な光景を眺める。まるで光にとって眩しく輝いているかのように。

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