第13話 保健室
「「失礼します!」」
広季と仁美は保健室に入室する。しっかり手を繋いだまま。
保健室には身長計、体重計、ベッドなど様々な道具が存在する。ベッドは2つあり1つは使用中である。そのため白いカーテンがベッド全体を覆う。
「あれ?保健室の先生はいないのかな?」
仁美はこてんと首を傾げる。首は斜めに45度ほど曲がる。
「どうやらそうみたいだね」
広季は仁美に同調する。
「すいません~!」
仁美は口元に手を添え、先ほどよりも大きな声で呼ぶ。その声は保健室一帯に行き渡る。
しかし返事はない。誰からも反応はなかった。当然、身長計や体重計たちも反応してくれない。ただ黙ってそれぞれ床に足を着く。
「しょうがない。申し訳ないけど勝手に使わせてもらおうかな」
仁美はちらっと広季の顔を覗き見る。色鮮やかな亜麻色の瞳を使う。
仁美は広季と一緒に未使用のベッドへ移動する。
「え!?そんなことしていいの?」
広季はぎょっとする。
「ダメかもしれないけど。しょうがないよね」
仁美は「早く寝た方がいいよ?」と広季を催促する。ベッドをポンポンと軽くタップする。
「う~ん。本当にいいのかな…」
広季は仁美の行動に戸惑いを見せる。心は落ち着かず、両目は右方左方に動く。
「早く。気分が下がってるんでしょ」
仁美は強引に広季をベッドに押し倒す。広季の身体が宙に浮く。
「わっ。ちょっ…」
広季は抵抗するも虚しく、ベッドに倒れ込む。広季の背中は柔らかい布団を知覚する。
「ご、強引だよ仁美」
広季の視界は衝撃で少しぼやける。おぼろげにしか仁美や保健室の内装が見えない。
「よいしょっと」
仁美はそんな広季をスルーし、スムーズな動作で上靴を脱ぐ。上靴はベッドに対し平行に揃える。もちろん、上靴のつま先も揃う。
「ねぇ広季…。私が隣で寝れば少し楽になる?」
仁美は4足歩行でベッドに上がり、緊張の面持ちで聞く。頬は全体的に赤く染まる。
「それは少しはあるかもしれないけど…」
広季は光の言わんとすることが明確にわかった。断ろうと思えば容易にできる。しかし、身体がこれでもかと他者の温もりを求める。
「じゃあ…。するね…」
仁美はまず布団に侵入し、広季にも布団を掛けた。柔らかい布の感触が身体全体に拡がる。その際、生じた風はピーチの香りを運ぶ。仁美に染み付いた香りが広季の鼻腔をくすぐる。
「もっと接近するね」
仁美は有無を言わせず、距離を縮めた。仁美の胸や腕は広季に密着する。女の子特有の柔らかい弾力が広季を攻撃する。
広季の顔は熱を帯び徐々に赤く染まる。心臓の音は激しく脈打つ。鼓動が相手に聞こえるのではないかと心配するほどに。しかし不快にはならない。逆に安らかな気持ちに包まれる。
「これで少しは楽になった?」
仁美は広季を気遣うように優しく尋ねる。その声色は広季を安心させる効果がある。
「うん…ありがとう」
広季は天井を見つめながらも素直にお礼を口にする。正直、仁美の声には癒されるものがある。幼馴染な上、耳に心地よい女性的な声が心を動かす。
「ちょっ!?何するの!くっつきすぎだよ!」
広季は唇を尖らせ、抗議する。
仁美が接近した上、足も絡ませたからだ。仁美の程よい肉付き太ももやふくらはぎなどが両足に嫌らしく絡まる。プニプニ柔らかい感触が足をも攻撃する。
「え~いいじゃん」
仁美はより足を絡める。先ほどよりも頬は赤くない。少し慣れてきたのだろう。
より接近するように、布団の中で両足を上手く駆使し、広季の足を挟み込む。まるでホールドするかのように。
「ちょっ、さすがにやばいって」
広季のあそこは正直だ。異性と肌が触れ合ったことで興奮を抑えられない。あそこはむくむく大きくなる。ズボンのチャック辺りが三角形を形作る。
「ちょっと誰がイチャイチャしてるの。それにどこか聞いたことある声だし」
もう1つのベッドに光が寝転がっていた。光は海に辛辣な言葉を食らい、不調に陥った。だから3時間目頃から保健室で休んでいた。
光は隣でイチャイチャする男女にイラつく様子だった。おそらく自分がここ最近に捨てられたため、仲良さげな男女を想像すると気分を害するのだろう。それに体調が悪いことも災いする。
光はストレスを発散するように両足をバタバタ上下させる。
「ねぇ…。もうちょっと近づこうか?そうしたらもっと気分よくなるよね?」
仁美は甘い声で尋ねる。現時点で胸、腕、足をべったり広季に密着させる。胸なんか明らかに押さえつける。
「いやいいよ。もう十分だから」
広季は少なからず興奮を覚えている。だがやんわり拒否する。理性が機能しているみたいだ。広季はその事実をはっきり認識する。
(本当はもっと密着したいけど)
柔らかい胸や足の感触を堪能しながら、邪な考えがよぎる。
「もう!なんでそんなイチャイチャするの!!別の場所でしてよ!!」
光は鬱陶しそうに布団の中に潜り込んだ。光の身体はすべて布団に隠れてしまった。
残念ながら、その声は決して広季と仁美に届かなかった。ベッドの周辺に留まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます