第8話 膝まくら!?

「たまには屋上の空気も気持ちいいな~」


 広季は屋上から絶景を眺める。広季の目には主に店の建物や住宅などを映す。


「ここにいましたか…」


 後ろから優しそうな声が生まれる。その声色は聞く人をすっと和らげ、リラックスさせる性質を持つ。


「東雲じゃないか。どうしたの?」


 東雲海(しののめ うみ)。金髪碧眼。女子にしては高身長の美少女である。さらに、豊満な胸を持ち、スタイルも抜群だ。ロングヘアが太陽の陽を浴び、きらきらと光を反射する。


 海は広季と中学2年と3年の時期に同じクラスだった。海は中学2年の頃に両親の都合で海外から日本の学校へ転校した。そのため、最初の方は学校に上手く馴染めなかった。


 そんな最中、優しく声を掛け続けたのが、当時席が隣の広季だった。広季の存在は海にとって大きかった。何度か話すうちに2人は打ち解け、今の良好な関係にまで至った。


「最近、森本さんが落ち込んで学校生活を送る姿を何度か目にしましたので。すごく心配していました。ですが、タイミング掴めず、本日この場所で声を掛けました」


 海の言葉を聞いた広季は少しだけ微笑む。


「そっか。ありがとう東雲」


 広季は海の優しさに胸が熱くなる。誰かに心配してもらうというのは嬉しいことだ。


「それでどうかしたんですか?森本さんの身に何かあったから落ち込まれたんですよね?」


 海は心配そうな面持ちで尋ねる。


「ああ。実はね…」


 広季は海の優しさに甘え、落ち込んだ理由をすべて打ち明けた。彼女の光に浮気されたこと。その浮気相手が大学生らしき爽やかなイケメンであったこと。これらすべて正直に吐露した。


 その間、海は口を閉じて最後まで広季の話に耳を傾けた。まるで1言1句逃さぬように。


「今はだいぶ楽になったけどね…」


 広季は前とは違うことをアピールするかのにそう付け加える。作り笑いを浮かべたまま。


「…そうですか。それは大変でしたね」


 海は表情を曇らせ俯く。心の底から悲しんでいる様子だった。海は自分のことのように悲しみ、同情してくれているように見えた。


 その後、海は胸の前で右こぶしをぎゅっと握り、何かを決心したかのような表情を浮かべる。


「そんな森本さんをわたくしが癒してあげます!」


 海は「よいしょっ」と呟きながら、近くの長イスに腰を下ろす。その際、緑のスカートはひらひらと規則的に揺れる。


「どういうことなんだ東雲」


 広季は訳がわからず、キョトンとする。海の行動は不思議で仕方なかった。


「まずわたくしの隣に座ってくれませんか?膝まくらをしてあげますから」


 海はポンポンっとスカートから露出する太ももを優しくタップする。


(ひ、膝まくらだって~)


 広季の脳内に衝撃が走る。


(膝まくらってあれだよな。ラノベで主人公がヒロインに頻繁にやってもらう)


 広季は内心焦りながらせっせと頭を働かせる。


「いやさすがに悪いよ。そこまで俺も落ち込んでないし」


 広季は明らかに動揺している。それが表情に現れる。そのため、歯切れ悪く拒否してしまった。


「遠慮は無用です!この行動はわたくしの気持ちですから。それにうちのお兄さんも言ってましたが、男の人はこういうの好きですよね?」


 どうやら海の方は準備万端のようだ。広季が座るのをひたすら待つ。


 広季は強く断らなければと意志決定しようと試みる。だが、スカートから伸びる海の純白な足はこれでもかと広季を魅了する。感性や欲求は正直であり、体内からとめどなく噴出してしまう。


「じゃ、じゃあ…お願いしようかな」


 結果的に広季は欲求に負け、海の膝まくらを受け入れた。


 まず広季は海の隣に座る。隣に座ることで、柑橘系の香りがぶわっと拡がる。その香りは広季の鼻腔を遠慮なく刺激し、心地よくさせる。この香りは海の身体に沁みついたものだろう。


「いつでもどうぞ」


 海は頬をほんのり赤く染めながらも、満面の笑みを形成する。その笑みは満開の桜が咲くように華やかだった。


 海の表情に影響を受け、広季は恍惚と頬を赤くする。海の身体を見ると緊張してきた。


「では…失礼します」


 広季は心臓のバクバクした鼓動をうざいほど感じつつ、ゆっくりと海の純白な太ももへダイブした。そのおかげで、海の柔らかい太ももはわずかに内側へと押し込まれる。


(や、やわらかすぎる!?な、なんだこれは~~!?)


 広季は胸中で叫ぶように狼狽える。


 彼にとって、海の膝まくらは想像をはるかに超え、この上なく至福だった。


 極上のまくらより柔らかく、マシュマロよりも弾力はもちもち。さらに、純白に輝く太ももから生じる程よい温かさが、広季の心を優しく包んでくれる。


「ど、どうですか?」


 海は上から広季を覗き込むようにおそるおそる答えを求める。その声色には不安が滲んでいた。


「うん。控えめに言って最高だよ」


 広季は率直な感想を口にした。


「そうですか。よかったです。では、好きなだけ堪能してくださいね。昼休みが終了するまでいくらでもOKですよ」


 海はじっと広季の目を覗き込み、パチンっと鮮やかなウィンクをする。


 彼女は瞳が大きいためウィンクがばっちり決まる。


 それがまた広季の胸を強く打つ。ドクンと強く胸が跳ねる。その衝撃は彼の身体全体まで伝達される。


 最終的に、広季は居心地の良い楽園みたいな太ももから抜け出せなかった。そのため、昼休みギリギリまでのんびり膝まくらを堪能した。 


 その間、広季は時おり頭を上下に動かし、太ももの感触を確かめた。何度確かめたとしても結果は同じだった。


 海の太ももは理性を狂わせる弾力がありつつ、柔らかさも極上であった。

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