第8話 少女の心を動かした

 重本めぐみは心の苦しさを森田信也にぶつけている。重本めぐみの言葉ひとつひとつが鋭いナイフのようなもので森田信也の心を刺している。重本めぐみの笑顔はどこにもなかった。重本めぐみは泣いている。

 長い沈黙になる。セミが鳴いている。重本めぐみは泣いている。森田信也は重本めぐみのことを理解しようと思う。森田信也は重本めぐみの心が見える気がした。

「何かあったら協力する。だから、ひとりで抱え込まないで」

 この言葉は重本めぐみの心に届いたのか。

 森田信也はゆっくり優しく重本めぐみを抱きしめる。

 不器用な言葉が少女の心を動かした。

 セミが鳴いている。

 二人は今、静かに泣く。

 お互いの心が通った時であった。

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