第7話 夏休み前に

 季節は夏が近付いてくる。あれだけの雨がウソのように晴れて、いよいよセミが鳴き始めそうな雰囲気である。

 森田信也と重本めぐみは、あれから会っていなかった。森田信也は夏休みが近付いてくるけれども、いろいろ思うことはあった。現在、重本めぐみは元気なのだろうか? あれから会っていなかった森田信也は夏が近付いてくることを素直に喜べないままだった。

 夏休み前に、気付けば、森田信也は重本めぐみの家の呼び鈴を鳴らしている。ドキドキが止まらない、この感覚は何かを恐れている感覚。もう一度、呼び鈴を鳴らしている。

 ようやく、重本めぐみが出てきた。

 しかし、重本めぐみは泣いている。

「あたしのこと、苦しさなんてわからないでしょ!」

 この重本めぐみの心の中からの叫びに、森田信也はまたしても言葉を失っている。

 セミが鳴き始めた。

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