第17話 苦味は自在な『カーファの木』
「すごかったね!お水が、わーって!」
「ふふっ……そうねぇ」
興奮気味に話すユグに、ナチュラさんは笑顔で答える。
「それにしても、フタバちゃんは
ジェイクさんは、とても楽しそうに言う。
「ありがとうございます……」
私は照れながらも、お礼を言った。
「それにしても、バオブは本当に不思議な木だよな……」
ジェイクさんはしみじみと話す。
「そうなんですか?」
「あぁ。なんというか……この国には水が少ないのに、幹の中にあれだけの水を溜め込めるんだからな……」
「確かに……」
私は同意するように
「それはきっと、魔力のおかげよ。バオブの場合は、少量の水を魔力を使って幹の中で循環させているから、枯れることなく水を生み出せているんじゃないかしら」
「なるほど……」
(そういえば、『
それから、家の中に戻った私とユグは、魔法植物の図鑑を眺めることにした。
ナチュラさんが、ジェイクさんから聞いて、ジャロ国の魔法植物も追加してくれたのだ。
しばらく夢中になって読んでいると、ジェイクさんから声をかけられた。
「フタバちゃんたち!集中してるところ悪いんだが、そろそろ飯の時間だぜ!」
「あっ、はい!ありがとうございます!」
私は立ち上がってお辞儀をする。
「ははっ、気にすんなって!さっきも言っただろう?ゆっくりしてくれって!」
「はい!それじゃあ、遠慮なく……」
それから、私たちはリビングへと向かった。
◆◆◆
テーブルの上には美味しそうな料理が並べられていた。どれも食欲を刺激する香りを放っている。
「わぁ~!おいしそう!」
「本当ですね……」
私は思わず
「ははっ、口に合うと良いんだが……」
ジェイクさんは不安そうに話す。
「大丈夫ですよ!いただきます!」
私は笑顔で答えて、早速食べ始めた。
「おいしい!」
「そうか?良かったぁ!」
ジェイクさんはホッとしたように息をつく。
「ジェイク、料理できたのね……。ちょっと意外だわ……」
ナチュラさんは、少し驚いたような顔で料理を食べている。
「なんだよ、それ!……まぁ、うまく作れるようになるまで、何度も失敗したけどな」
「そうなんですね」
私は微笑ましく思いながらも相槌を打つ。すると、横で料理を頬張っているユグが口を開いた。
「でも、元気なお兄ちゃんの作ったご飯は、すごくおいしいよ!」
「そうか?ありがとな、ユグちゃん!」
ジェイクさんは笑顔で答える。
それから、食事の時間は和やかな雰囲気で過ぎていった。
◆◆◆
食後、ジェイクさんは飲み物を用意してくれた。
「ほい!これは、このジャロ国の特産の『カーファ豆』で作ったお茶だ!」
そう言いながら、私たちの前にカップを置く。
中には焦げ茶色の液体が入っていて、コーヒーに似た香りを放っていた。
「ありがとうございます」
私はお礼を言いつつ、カップを手に取る。一口飲むと、口の中に香ばしい味が広がった。
「……どうだい?」
「はい!とても美味しいです!」
感想を求めてきたジェイクさんに、私は素直にそう言った。
「そうか?ならよかった!」
ジェイクさんは満足した様子で笑みを浮かべる。
「この苦味、クセになりそうね」
ナチュラさんも気に入ったようだ。彼女は香りを楽しみながら飲んでいる。
「うん!あまくておいしい!」
笑顔で答えたユグに、私は不思議に思って尋ねる。
「甘いの?」
「あまいよ!お姉ちゃんのは、あまくないの?」
ユグの言葉に私は首を傾げる。
(私のは、苦かったけど……。種類が違うのかな?)
「あぁ、それはな……」
不思議に思っていると、ジェイクさんが説明してくれた。
彼いわく、カーファ豆は同じ木からとれるものでも、苦味が異なるらしい。
他にも、酸味が強いものや甘味の強いものなどもあるそうだ。
(へぇ……そうなんだ)
私は感心しながら聞いていた。
「せっかくだから、実際にカーファの木を見に行かないか?明日辺りにでも」
「いいんですか?」
私は驚きつつも聞き返す。
「あぁ、もちろん!なんといっても、ジャロ国の特産品だからな!」
そう言うと、ジェイクさんは嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます!ぜひ、お願いします!」
私たちはそんな彼の提案に乗ることにした。
◆◆◆
翌朝、私たちはカーファの木の群生地に来ていた。
「うわぁ……!すごい……」
私は目の前に広がる光景に目を奪われていた。
そこには、青々と茂る木々があった。枝葉の間から木漏れ日が差し込み、地面は芝生のように柔らかい緑色をしていた。
「これが、『カーファの木』なんですね……!」
「あぁ!そうだ!」
ジェイクさんは笑顔で答える。
「こんな場所があったのね……」
「まあな。この辺りは、そこまで乾燥がひどくないから、植物も生きやすいんだろうな」
「そうみたいですね……」
私は周りを見ながら相槌を打つ。
(確かに、ここに来るまでに通った他のところより、緑が多いかも……?)
そんなことを考えていると、ユグが話しかけてきた。
「ねぇ、お姉ちゃん。お話ししてもいい?」
「えっと……。ジェイクさん、いいですか?」
私は判断を
「あぁ、構わないぞ!」
ジェイクさんは快く了承してくれた。
「やったぁ!」
ユグはとても喜んでいた。早速、カーファの木の1本に近付いていく。
「こんにちは!わたしの名前は、ユグだよ!」
ユグが元気よく挨拶する。すると、その木は枝葉を下げ、屈むように応えた。
──《あら、可愛い子だね。ユグちゃんっていうのかい?》
「うん!そうだよ!」
《ははっ……!元気の良い子だねぇ!》
カーファは、女性のような声で笑った。枝葉が楽しげに揺れている。
《そっちの子は、なんていう名前かな?》
今度は私に問いかけてくる。
私は緊張しながらも自己紹介をした。
「初めまして。私はフタバと言います……」
《そんなに緊張しなくても大丈夫よ。フタバちゃん、だね。よろしく!》
「は、はい!こちらこそ!」
《ふふっ……!》
私が返事をすると、また楽しそうに笑い声を上げた。
(なんか……気さくな人だな……)
私はホッと息をつく。
《フタバちゃんたちは、何しに来たのかな?私に用事?聞きたいことがあれば、何でも聞いてちょうだいね!》
「はい!」
私は笑顔で答える。それから、ユグが質問を始めた。
「あのね!この周りに生えてる木は、みんなカーファなの?」
ユグは周りの木を指差して言う。
《そうよ。みんな、私の仲間たち。ずっと一緒に育ってきたの》
カーファは穏やかな口調で言う。
私も、質問してみることにする。
「あの、何か困っていることはありませんか?」
すると、カーファは少し考えるような仕草を見せたあと、話し始めた。
《実はね……。最近、虫が
「虫?」
私は疑問を口にする。すると、カーファは続けて話す。
《そう。私たちの葉とか実を狙う虫たちが多くて……。枝を揺らして追い払っているんだけど、キリがなくてね……》
「そうだったんですか……」
私は相槌を打つ。そこへ、ユグが提案してきた。
「お姉ちゃん!虫さんが来ないようにしたらどうかな!?」
「あっ……なるほど!」
私は納得する。確かに、それが手っ取り早いかもしれない。
《えっ……?そんなことができるのかい?》
「はい!殺虫剤があるので、それを
《へぇ……!フタバちゃんは凄いんだね!わかった。それじゃあ、お願いできるかしら……?》
「はい!」
私は笑顔で答えた。
それから、私は早速殺虫剤をカーファの木に撒いていった。
「これで、今までより虫が寄ってきにくくなるはずです!」
私は笑顔で説明する。
《そうか……。それはありがたいな!フタバちゃん、ありがとう!》
「いえ!お役に立てて嬉しいです!」
私は笑顔で答える。それから、私は他の木にも同じように対処していったのだった───。
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