第19話 アースガイヤに帰宅


 ティリオは久々に実家のアースガイヤへ帰還する。


 ティリオ達四人は、自分達の時空戦艦で時空転移回廊を通過しながら、アースガイヤへ向かう最中

「あと、どれくらいで到着しそうか?」


 操縦室にいるティリオ達と共に、グランナとその仲間であるラドとシェルテ達五人もいた。

 グランナ達は、ティリオ達と共に同行する約束をしていたので、当然のようにいる。


 操縦席でアースガイヤの到着を時間をティリオが確認して

「一時間後には、アースガイヤ星系内の時空ゲートから出るよ」


 グランナが頷き

「順調だって事か…」


「ああ…」とティリオが頷いたそこへ

「まだ、着かないの?」

と、ドアからエアリナが入ってきた。


 ティリオが呆れた顔で

「あと、一時間後に到着するから」


 エアリナが仁王立ちで

「もう、座り疲れたわ」


 その後ろから

「まあまあ、もう少しだから」

と、ファクドが顔を見せ


「到着したら、どんな感じになるの?」

と、ルビシャルが


「少しガマンを憶えたら」

と、レリスが


 ティリオとグランナは微妙な視線で、エアリナ達を見つめる。


 グランナが

「お前等…迷惑をかけるなよ」


 ルビシャルが

「アタシ達は問題ないわよ。こっちのお姫様が…ねぇ…」

と、エアリナを横見する。


 エアリナが堂々と胸を

「私は、嫁の実家に挨拶に行くんだから! 当然であり、問題なんてないわ」


 エアリナ以外、ええ…という呆れた感じだ。


 ぶっちゃけるなら、グランナがティリオと一緒に行こうとした時に、エアリナが

「私も! 嫁の実家に挨拶にいくわ!」

と、言い出して、それを…問題にさせないストッパーとしてファクド、ルビシャル、レリス達が一緒に行く事になった。


 ティリオは額を抱える。

 全速力で問題を起こしそうで頭が痛くなってきた。


 ◇◇◇◇◇


 ティリオ達が乗る時空戦艦がアースガイヤの時空に到着して、アースガイヤ星系内に入る。


 巨大な時空回廊のリングからティリオ達の時空戦艦が飛び出して、アースガイヤ星系内を航行する。


 時空戦艦の全方位画面からグランナが

「ティリオ、あれ…」

と、メガデウス惑星アラガミを指さす。


 ティリオが

「ああ…人工惑星だよ」


 ファクドが

「他にもあるのかい? 惑星サイズの…」


「そこ」とティリオが指さす。

 そこには、全長一万二千キロの惑星サイズの建造物がある。

 幾つもの階層がスライスで積層している惑星サイズの建造物は北の極点部分に数千キロサイズの機神が鎮座して翼を伸ばし、スライス積層の惑星を包んでいた。


 レリスが

「惑星規模の建造物を作る技術力と資源があるんだね」


 ティリオが淡々と指さした惑星規模の建造物に

「アレ、ウチで作ったの」


「はぁ?」とティリオ達全員の視線が集中する。


 ティリオが淡々と

「他にも、ここから離れた星系軌道に、十倍くらい大きい直径十五万キロの生産工業惑星があってね。まあ、この時空に色んな生産物を供給する必要が出てきて、ウチで作ったんだ。作るのに父さんやぼく達、兄弟姉妹みんなでやったのは、良い思い出だよ」


 ルビシャルがナリルに

「マジなの?」


 ナリルが頷き

「マジ、そして…アレもティリオのお父さんの所有物」

と、惑星アースガイヤの軌道上に浮かぶ全長五万キロの軌道エレベーター型コロニー・ミリオンを指さす。


 惑星規模の傘の骨のように広がるコロニー達を持つ、巨大な軌道エレベーター型コロニー・ミリオンを見つめて、ルビシャルが

「アンタ達って何者?」


 ティリオが淡々と

「ただ、単に小さな工場を持つ家内工業の家だよ」


 ティリオ達がやっているのは、惑星規模の巨大産業を家内工業と言っている。


 グランナが納得気味に

「なるほど、色々と持っている訳だ」


 ファクドが

「まあ、とにかく…珍しいモノが見られそうだから、ね」


 エアリナがニヤリと笑み

「期待できそうだわ」


 ティリオ達が乗る時空戦艦がミリオンの港に入り、ティリオ達一行は、ごった返す港を通り過ぎて、特別なティリオ達だけが通れるゲートを潜りつつ、ゲート内にある魔導探査のエネルギーにてチェックを受けて、問題なしとなり、通過してミリオンにある実家へ通じる空間ゲート、ヤヌスゲートを潜り

「ただいま…」

と、ティリオが先頭に入る。

 それにみんなが続く。


「お邪魔します」「失礼します」とみんな、かけ声をして入る。


 潜ったゲートの前には

「おかえり、ティリオ」

と待ち構えている母親達がいた。


 銀髪エルフのソフィアママ

 黒髪でエキゾチックな長身のクリシュナママ

 金髪でイタズラ笑みの長身のクレティアママ

 赤髪に穏やかな笑顔の貴族風のゼリティアママ

 

 四人のティリオの母親達が迎えてくれた。


 ティリオが

「ただいま、ソフィアママ、クリシュナママ、クレティアママ、ゼリティアママ」


 ジュリアが

「お義母様、皆様でお出迎えなんて、ありがとうございます」


 ナリルも

「ありがとうお義母様」

 

 アリルも

「何時もありがとうございます。お義母様」 


 ソフィアが

「気にしないで、貴女達も私達の大切な娘達なんだから」

 クレティアが

「ティリオの後ろにいるのが…」


 ティリオが

「はい、自分と一緒に勉強に励んでいる学友達です」


 みんなが挨拶しようと伺っているのを無視して、エアリナが一歩前に出て、四人のティリオのママ達に

「どうも、ティリオの花婿のエアリナ・シュルメルムです」

と、堂々と挨拶をした。


 え?という疑問符が四人のママ達の頭に浮かぶ。

 そして、ティリオ達と学友達を見ると、全員が同時に首を横に振っている。

 違います…と。


 四人のママ達は察した。

 最近、ティリオやジュリアとナリルとアリルの話に出てくるティリオを嫁にしようとする強引な乙女、エアリナという人物が彼女であるのを理解して、ゼリティアが

「ともかく、皆、歓迎するぞ」


 ファクドが

「ありがとうございます」

と、お辞儀して、他もそれに続く。


 ソフィアがティリオに耳打ちで

「アンタも大変ね」


 ティリオが渋い顔で

「うんん…まあ、色々とね」


 クリシュナが

「あ、それとリリーシャが」


 ドンと、屋敷の外へ通じる玄関が開かれて

「なんで、アタシの所へ先に来ないのよ! ティリオ!」


 子供を抱えた黒髪の女性が現れた。ティリオの兄妹であるリリーシャが自分の子供を抱えて現れた。


 ティリオが

「また、面倒くさいのが…」


 リリーシャがティリオ達に近づき

「ナリルとアリル、ジュリア、元気だった?」


 ジュリアが微笑み

「うん、リリーシャは?」


 アリルが

「ああ…こんにちは、リシャナちゃん」

と、リリーシャの抱える子供に挨拶して


 ナリルが

「相変わらず、リリーシャ元気だよね」


 リリーシャがティリオに、自分の娘であるリシャナを抱っこさせ

「早く、この子に仲間を増やしてあげなさいよ! ゼティアなんて、もう六ヶ月後には産まれるんだから、アンタも早くしなさいよ」


 ティリオが嫌そうな顔で

「それってセクハラにならない?」


 リリーシャが迫り

「アンタは関係ない」


 そこへエアリナが入り

「初めまして、ええ…お姉様でよろしいでしょうか。ティリオの花婿のエアリナ・シュルメルムです」


「え?」とリリーシャは、アイコンタクトで、お前…いつ、嫁を増やした?と会話すると、ティリオ達全員が首を横に振る。


 ティリオは額を抱えて

「これ以上、現場を混乱させないでよ」

と、漏らした。




 ◇◇◇◇◇


 グランナ達やファクド、ルビシャル、レリス、エアリナは、ティリオの他の兄妹姉妹達と遭遇する。

 女の子達は、母親似だが…多くいる男の子の弟達を見て、全員が思った事をエアリナが言う。

「ティリオが、どうやって成長していったのか…分かるわ」


 そう、下は五歳からティリオの十七歳の総勢二十名の弟達は、ティリオと似ていて、成長年齢順に並べると分かりやすい程に成長記録のようになる。

 バラバラに四人のママ達から産まれたにも関わらず、男の子達は一緒だ。


 そこへ

「ただいま」

と、父親のディオスがナトゥムラと一緒に帰ってくる。

 父ディオスも揃って、ティリオ達、子供達も一緒にいるとそっくり家族すぎて逆に納得しかない。


 そして、ティリオ達の実家の屋敷で食事となるが、まあ…大人数だ。

 ゴタゴタと大家族の食事で、屋敷を維持する女中さん達も一緒に食事だが、大家族の食事風景で賑やかだ。

 何十人近い大きな食事風景だが、そこにディオスの家族以外の少女や少年がいる。


 ファクドがそれとなく聞いてみるとディオスが

「ああ…女の子達はウチの男児達の許婚達で、ウチに遊びに来て食事をする事があるんだよ。他の子達は、こっちで色々と教えている子達さ」


 ルビシャルが

「どういう感じの繋がりで?」


 ディオスが「知り合いさ」と答える。


 ルビシャルの隣にいるナリルがヒソヒソと

「全員、このアースガイヤ惑星に根付く王族や大貴族の血縁なのよ」


 ルビシャルは無言で驚きの溜息を吐く。


 そんな感じで食事が終わり、各人に部屋が用意されて宿泊する事になった。


 グランナとファクドにレリスの三人は同じ部屋で、三人が宿泊する屋敷は、ディオスの屋敷とは別にあるもう一つのディオスの屋敷であるオルディナイト邸宅の部屋だ。

 そこは、ディオスの屋敷と比べて何倍も大きいので大人数が止まれる。

 三人がいる部屋は、ホテルのスィートのように豪勢で広い部屋だ。


 ファクドは部屋の装飾品を見ながら

「文化レベルも高い。どう思うグランナ?」


 グランナが

「オレは、目的を遂げられたから良い」


 グランナの目的、それはディオスの屋敷で暮らす桜花…シュンカとの挨拶だ。

 シュンカは、グランナの時空へ超越存在のエネルギーを融通するゲイオルの妹で、ゲイオルと同じく超越存在であり、将来はゲイオルの時空、セレソウム時空で超越存在のエネルギー供給を手伝う事になる。

 グランナの血筋からすれば、ゲイオル達は本家、総本山にあたり、グランナは幾つもある分家達の一つだ。


 グランナが桜花と挨拶をすると、桜花がグランナの手を握り

「畏まらなくていいわ。ティリオから色々と聞いている。ゆっくりとチャンと成長して、将来は一緒にお互いの時空を支えましょう」


「はい」とグランナは頷く。


 桜花は微笑み

「そして、ティリオの友人でいてくれて、ありがとう」


 ティリオと友人であるという事は、将来的にはティリオも父親の聖帝の跡継ぎか、それに相応する何かにもなるし、それはグランナの目的である自分達の時空を支えるという未来に通じる。

 ティリオとの繋がりは、一生モノなんだなぁ…とグランナは噛みしめる。


 真剣なグランナにファクドは微笑みつつ、ファクドはレリスに

「レリスは淡々としているね」


 レリスは溜息をして

「内心、驚いているよ。あの聖帝の一族にここまで入れたんだ。自慢どころじゃあない」


 そう、それ程までに聖帝ディオスの権勢は強くなっている。

 聖帝ディオス、多くの超越存在や宇宙王達の纏め役、それはその時空のトップ達との繋がりを持っている人物との接触ないし、近づけるという事は、計り知れない。


 レリスは

「ファクドは、落ち着いているんだね」


 ファクドは笑み

「まあ、こういう時はジタバタしても意味は無いさ」


 ◇◇◇◇◇


 ルビシャルは、リリーシャに連れられて、夫である充人の屋敷で宿泊する。

 充人がルビシャルに

「シュルメルム宇宙工業学園では、面倒な出迎えをしてくれたが。ここでは必要ない。お前は、オレにとって遠縁の親戚の子だ」


 ルビシャルが頭を下げ

「はい。郷に入っては郷に従う…で」


 充人のもう一人の妻の獣人族のレディナが

「さあ、入って、歓迎するわ」


 レディナの後ろから充人の息子達であるジュードと、ジュダス、三女のジュリエッタの三人が顔を見せる。


 ルビシャルが三人に微笑み

「よろしくね」


 ジェダスが

「お姉ちゃんは、どんな機神を持っているの?」


 機神人類の始祖、充人の血を引く子供達には、同じ機神人類であるルビシャルがどんな機神を持っているのか…気になるのだ。つまり、機神を持っている気配を感じられるのだ。


 ルビシャルが

「今日は遅いから、明日、見せ合いっこしようぜ!」


 そんな感じで賑やかになる。



 ◇◇◇◇◇

 

 ティリオは、久しぶりのアースガイヤの自室で、みんなが纏めた宇宙戦艦に必要な設備の設計図を書いていた。

 魔法の力で様々な要望を立体映像の設計図に変えて、それを空中で組み合わせて、必要な設備の増設や、不必要なシステムの引き算をしていると…ドアがノックされて

「ティリオ、入るわよ」

と、アリルの声がした。


 アリルが飲み物を入れた陶器のボトルとコップを持って来て入り、ティリオが

「ありがとう」


 アリルが飲み物を注ぎながら

「あんまり根を詰めないでね。疲れるわよ」


 ティリオが

「あと少しで終わる。それと…エアリナは?」


 アリルが苦笑いで

「ティリオに飲み物を持って行こうとして、何かを混ぜているのをジュリアとナリルが…」


 ティリオが引き気味に

「うわぁ…変な事をやろうとして…」


 アリルが

「エアリナは、別の方向では頭が良いけど…こっちの方向は、ちょっと残念ね」


 ティリオが

「どんな事をしても変わらないけどね」


 ティリオはエアリナの考えが読めてしまった。

 要するに、実家で男女な問題を起こせば…言い逃れ出来ず、強引にエアリナにゲットされるという流れるになると…。

 マキナでは、色んな装備を自在に動かす天才なのに、こっちの方向では残念バカすぎるエアリナを垣間見るのであった。


「エアリナってかわいいんだけどね。残念だ」

と、ティリオがぼやく。


 アリルは知っている。

 かわいいだけじゃあ、絶対にティリオは落ちない。

 ティリオは、かわいいだけが大好きなバカな男ではないのを分かっている。

 かわいいだけじゃあ、もてはやされるが、本当に好きになってはくれないのだから。

 

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