第26話 奸智術数【別視点】
会議と言っても、作戦の大筋は既に決定しており、ここでは細かな人員の配置や構成についての調整を行うのみだ。
今回の侵攻作戦では
表向き——作戦自体が表に出ると国の信頼を損ないかねないのだが——は
しかし、今回の侵攻作戦が成功した場合、末端ではあるが銀河の覇権に関わる力を得られるとなれば、なんとしても利権に食い込みたい諸侯の参加は半ば必然であると言える。
実は今回の侵攻作戦に投入される軍事力に占める貴出水侯爵家の割合は十分の一以下である。貴出水家当主
中には当主自らが軍を率いて参加している家もある。——もちろん、彼らはココにはいない事になっているが……。
会議室に集まる面々には、悪い噂が絶えない当主も散見され……いや、良い噂を聞かない家でフィルターをかければすべて引っかかりそうだ。
今回の作戦はある意味、一線を超えたものだ。普通の貴族家なら敬遠する。
つまり、ここには健全な感性をもつ家は存在しないといえよう——あくまで貴族的にはだが……。
そんな彼らが、本格的な出撃の陣容を話し合う場に集結している。
当然、会議室は主張と家の力がぶつかり合うだけの不毛な場と化している。
何が彼らを引き付けるのか。理由のひとつは貴出水侯爵の前に置かれた金属製の眼球にある。
「貴出水卿。卿のおっしゃるとおり、その真祖の目が
「冴澄国の王の件は事故だ。我々はそれによる混乱を未然に防ぐために止む無く、少々強硬な手段に出ただけだ。知ってのとおり、冴澄国が治める
「それならば、尚の事、卿の軍のみが陰星へ降りるというのはどうであろうな? 十万のユニットを消し飛ばす武力に曝されて卿の軍が生き残るとは到底思えない。神威という小国には過ぎた武力を、我が国で確実に管理するためにも、ここは協力して事に当たるべきではないか?」
「貴出水卿、十三年前に卿の一群がもう片方の真祖の目を持って、陰星に降り立った後、消息を立っているのでしょう? 失礼ながら今回も同じことにならない保証はあるのですか?」
全くの平行線の議論中、外から戻ってきた貴出水家の家令が貴出水に何やらささやいた。
貴出水が頷いて立ち上がる。
「失礼、只今新しい情報が入った。十三年前の魂砕きの悪魔の一人海賊ジンバの拠点に向かった部隊、八十二ユニットが現地展開の直後に消息を断った。実戦闘時間は一分未満。卿達はこれをどうとらえる?」
会議後、自室の隣のサロンでくつろぐ貴出水は満足していた。
「予定通りですな。邪魔な諸侯は皆小惑星へ向かい、陰星へ降りるのは我々のみ」
サロンに集まったのは、貴出水の派閥の関係者と表向きの敵対派閥の長達。
「神威はないが世界樹はある。連中にも夢を見せてやっているのだ、罰は当たらんよ。全ては明日の出陣で決まる」
そう言って貴出水は一気にグラスをあおる。強いが香りのよい酒だ。祝いの時に開けると決めている。天然物の逸品だ。
※【以下胸糞注意 飛ばしても展開に影響ありません】※
「これで、来年の花見も楽しめそうですな」
「三年前の前回の会では貴出水卿の一人勝ちでしたからな」
「あまり勝ちすぎても、良いものではないよ。子の管理が大変だ。どいつも吹けば飛ぶような家ばかりだぞ? 儂の血を引く者に無様を晒させる訳にはいかないからな。匙加減で苦労する」
貴出水の花見。侯爵家から要請があった家は細君と娘を手伝いに出さねばならない。手伝いに出された者は高い確率でその年に子を身ごもり、その子を跡取りにした場合に限り、援助がなされるという。
誰が誰の子を身ごもったのか、または自害したのは誰なのか。それらはすべて賭けの対象となっており、四年に一度貴出水の派閥の者を楽しませるのだ。
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