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 携帯電話で佑子が110番通報した。

 五分後には二人の警官がパトカーで到着した。

 娘の夏実が拉致されたという警察の連絡を受け、真一がうどん店を閉めて帰って来た。店員で夏実の友だちの優もついて来た。

 犯人の手掛かりは、佑子が目撃した黒っぽいワゴン車、二人の角刈り頭の大男、そして正太が言う「ひておさん」だ。

「ひておさん、なっちゃんに、ふろほーす、する」

 と正太は繰り返した。

「その人なら、夏実に何度か聞いたことがあります・・」

 と優が言った。

「たぶん、東京の美術商で、北野秀雄、っていう人です。そう、北野秀雄です」

 それで警官は、署に連絡して、その人物を調べてもらった。

 署から報告を受けた警官の表情が急変した。

「我々の方で捜査いたしますので・・」

 と真一に告げ、パトカーは去った。

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