21
「宮本佑子・・ほんとに浩と同棲してるの?」
夏実は布団をかぶり、闇に潜って身もだえた。
「だって、浩は、あたしと秀雄さんのこと、嫉妬してたじゃない? 顔を赤くして、嫉妬してたよね?」
爪を噛んで、浩の言葉を思い出していると、半年くらい前、この家で二人きりになった時のことを思い出した。
夏実が乙女の危機に怯えたあの時、
「おれは、本当に好きな、この世で一番の人にしか、そんなことせんけん」
と浩は言ったのだ。
「あんたに、そういう人、いると?」
と夏実が問うと、
「いるよ」
と、はっきり答えた。
「どんな人ね?」
と聞いたら、
「年下のくせに、生意気な娘」
なんて言う。
「生意気なのに、いつから好きなの?」
「中学生の時から」
そんな会話を強烈に覚えているのは、時々思い出して、もしかしたらその生意気な娘って自分のことじゃないかと、胸を熱くしたこともあったからだ。
いつしか布団は涙で濡れていた。
「ああ、あたしの勘違いだったよお。あいつが中学時代から好きだった娘は、あの佑子だったんだ。輝くような色白で、目と鼻が大きくて、華やかで・・そういや、あの娘、生意気そうだったわ。やさしいあたしとは比較にならないくらい、生意気そうだった・・ちくしょう、それなのに、浩のやつ、彼女がいるなんて、そんな気配見せなかった。それどころか、あたしを好きなふりをしてた。間違いないよ。いつもあたしに、一途そうな雰囲気だったじゃない。なのに同棲してたなんて・・知ってたら、こんな気持ちにはならんかったのに・・こんなに好きに、ならんかったのに。きっとあたしの心をもてあそんでいたのよ。もう、許せん、許せん。あんなやつがこの地球上に存在するなんて、絶対許せん」
キジトラ猫のミャアが、むせび泣く娘の枕元で目を光らせていた。
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