第149話――証人


 取調べで、松村まつむら刑事は知っている限りの事を自供した。


 彼がミナカメディカルワークという名の組織に脅され、捜査中の物的証拠を持ちだし拘束された事、そして、へ強制的に連れられて行った事。


 そこに足を踏み込むと、を目にしたとも。


 黒の防護服を着た三十人ほどの警官と、オレンジの防護服を着たミナカの隊員達全員が、そこに横たわっていたと。


 咄嗟に状況を悟った彼は、広場から足を踏み戻した。


 すると、向こうの方で、九十九つくも刑事と男が争っているのが目に入った。

 彼を助け出そうと駆け寄ると、信じられないものを見た。


 土の中から、が飛び出してきたと。


 そこからはもう、SFの世界だった。

 なかなか筆舌には尽くしがたい。


 警察は、九十九つくも刑事が助けた青年をヘリで救い出すことはできなかった。

 あの炎の中で生きていられるのは、まず不可能だろう。


 広場にあった遺体は全て焼け焦げ、骨だけが残っていた。

 そこから全員の身元を特定するのは、困難だった。

 無論、松村刑事が見たというの痕跡を見つけることも、至難の業だった。


 ただ、ミナカミディカルワークの隠れアジトを抑えることはできた。

 そこに拘束されていた幼い松村まつむら刑事の娘を無事救出することができた。


 だが、すぐにその後、松村刑事は、また家族とともに忽然こつぜんと姿を暗ました。

 現在、行方を追っているが、手がかりはつかめないままだ。


 彼が事件の唯一の証人だった。


 もう一人の証人である九十九刑事の相棒であった高倉たかくら刑事は、依然として、集中治療室で意識不明のままだった。

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