第147話――脱出


「……! 何をやってるんだ! 戻れ!」


 黒い防護服姿の相川あいかわ刑事が声を上げた。


「まだ、中に一人いる!」


 松村まつむらは黒タイツ姿のまま、炎が燃え盛り、黒い煙が充満する木々の中へ飛び込んで行こうとした。


「無茶だ! よせ!」


 すんでのところで、背後から彼を取り押さえた。

 そうしている間にも、自分達の顔面に熱い煙が覆いかぶさってきた。


 咄嗟の判断だった。


 相川は素早く救助装置の輪を松村の体に通し、ロープに接続すると、即座に上空に待機しているヘリに向かって合図を送った。


「……! 待て! 彼を見殺しにするつもりか――!」


 両腕を振り回し暴れる松村を、相川は全身全霊の力をこめて取り押さえた。


「引き上げろ――――――!」


 二人は炎と煙に包まれた森の中から紙一重で抜け出し、ロープでヘリの中へと吊り上げられていった。

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