第146話――刹那
低く、太く、重みのある声。
それは、
彼の耳に、その内容がはっきりと入ってきた。
「
由良は、その姿を探そうと、必死に目を泳がせた。
しかし、声だけが独り歩きするように、その文言が、しっかりと淀みなく唱えられていく。
「
眼前で立っていた彼女が、その声を追いかけるように、再び広場に足を踏み入れた。
その時だった。
崩れ落ちた
それが、独りでに倒れたのが見えた。
隣に生えていた大木へ勢いよく接触し、その
まさに、
ドミノ倒しのごとく、
まるで、広場にいる彼女を取り囲むかのように。
『離れるんだ。今すぐ、ここから』
頭の中で聞こえたその声と共に、由良は咄嗟に起き上がろうとした。
しかし、力が入らず、全身の力を振り絞って、腹這いで
一歩でも、遠くへ逃げようと。
背後から、灼熱の熱風が吹きこんできた―――
由良が振り返った瞬間だった。
突風が巻き起こり、その紅蓮の龍は、天に向かって、
「ギぃぃぃぃぃぃぃぃァァァァァアアアアア――――――――――――」
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