第142話――奇声


「キィィィィィィィィィィィ――――――――――――――――」


 異様で、その甲高いに、由良ゆらは思わず目を開けた。


 目前で、そのわずかに吊り上り、中にある白いのようなものが、ちらついたのがわかった。


 唖然としながら、自分のかみつかんでいるを見上げた。


 青白く太いうでがあり、その先に白いすそが見える。


 はずだった。


 しかし、前腕部ぜんわんぶから上は続いておらず、途切れた先にが見えた。


「……!」


 思わずその腕を両手で掴み、払いけた。

 途切れたそれは、頭から離れ、重そうな音を立てて地面に落ちた。


 何が起きているのかわからず、由良ゆらはもう一度前方に視線をった。


 すると、腕から、き出したのがわかった。


 その顔は震えていた。

 分厚いまぶたが、ほんの少しだけ開き、中ののようなものが見えそうになった。


 その瞬間、


『目を合わせるな』


 どこからともなく聞こえてきたで、由良は咄嗟に目をつぶった。


 と、同時だった。


 由良の周囲に生えていた木々の葉が、みるみるうちにと、一斉にゆらゆらと舞い降りてきた。


 木々の幹が、ミシミシッときしむような音を立てながら、せ細っていく。

 

 また、そのの声が聞こえた。


『彼女と目を合わせたものは、


「ィィィィィィィィィィィィィィィィ――――――――――――――――」


 その音で、由良は吃驚びっくりしたように目を開けてしまった。


 が、広場の中で転がり、のたうち回っているのが見えた。


 それまでの


 まるで、殺虫剤をまかれた幼虫が、急に暴れまわるかのごとく、聞いたことのない奇声を発しながら。


 うつぶせになっていた由良は、そのあまりの異様さに恐怖を覚え、咄嗟に身を起こした。

 尻をついたままり、両手を地面に突いた。


(……何が起こった?)


 目を泳がせていた、その時だった。


『早く逃げろ』


 男性の声が言った。


 由良は気付いたように、すぐそばにあるの方を見上げた。


(……まさか……)

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