第139話――対面


 砂を踏みしめるような音が、徐々に近づいてくる。


 うつぶせの由良ゆらは、震えながら視線を前にった。


 「ア――――――……ア――――――」


 り足で、まるで、無機質な音を発しながら、はゆっくりとした足取りでこちらに向かって来た。

 時折、ブルドーザーのごとく、地面に横たわったしかばね達を押し退けながら。


「ア――――――……ア――――――……ア――――――……」


 ここから見える限り、そのは動いていない。

 どこから、そのような音を発しているのか、見当すらつかなかった。


 が、地面に転がっていたじゅうに当たった。

 銃は地面の上をこする音を立てて、こちらへ滑って来た。


 すると、倒れ込んでいる由良ゆらの目と鼻の先で、それは止まった。


 足は、まるで銃が当たったことなど気づきもしていないように、で近づいてくる。


 由良は、最後の力を振り絞るように、目の前に転がっているそのじゅうに手を伸ばそうとした。


――――――――」


 頭の真上で、が止まった。


 血の臭いが、鼻に突いた。


 震えながら、顔を上げた。


 目尻の下がった、が、こちらを見下ろしていた。


 由良が銃に触れる前に、の手が、頭の上から伸びてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る