第131話――再興


「え?」


 高倉たかくらが思わず九十九つくもの方を向いた。


 彼は思い出していた。

 岡彩乃おかあやのの交際相手である、半田義就はんだよしなりから聞いた話を。


『私……大変なことをしてしまった』


「頼んだわけじゃない! あの女が、勝手にすすんでやったことだ!」


 急に、石原いしはら教授の顔つきが別人の様に険しいものに変わり、彼は声を張り上げた。


「私が、最初にを見つけた! 最初は、私だけが!」


 その言い回しに、その場にいた全員が目を見開いた。


「……そだてるって……一体……何人、殺してきたんだ……」


 九十九つくもが茫然としながら、かすれ声を漏らした。


 ふと、由良ゆらは山小屋の作業日誌に書かれた内容を思い出した。


『人の骨を発見。……鑑定により、この骨は埋葬されたものと判明……』


「まさか……あんたが……」


 由良は目をきながら石原教授を見つめた。

 彼はそれを全く気に留めないように、得意気に話し始めた。


「ああ。最初は、流石にビビったよ。まだ小学生だったからな。でも人間慣れるもんで、何も感じなくなった」


 石原は手錠をつけられたまま首元をいた。首には紫の腫物はれものが所々にできていた。


「最初は、彩乃あやのに捧げるつもりだった! 生贄いけにえの予定だった! 数年前だ! 大学のゼミの生徒達をここに連れてきた。その中に彩乃もいたが、彼女だけ後から遅れてやってきて、今回のように、見られてしまった! 仕方がないと思い、その場で彼女も殺すつもりだった」


 刑事を前にしてその衝撃的な内容を悪びれもせず話す石原を見て、九十九と高倉は目を開いたままだ。


「でも、彩乃は逃げるどころか近寄ってきて、磐座いわくらを見つめてこう言った――」

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