第128話――五十七年前のきっかけ


 石原いしはら教授は、遠くを見つめるような目で、また話し始めた。


「私がと出会ったのは、五十七年前。例の失踪しっそう事件があった時だ。私は、まだ小学生だった。たまたま祖父の家に夏休みの里帰りで、この島に来ていたんだ。森の中で虫を捕ったりして一人で遊んでいる時だった。白装束しろしょうぞく姿の者達が、ひつぎを持って樹海に入っていくのが見えたんだ。追いかけると、この山の前まで来た」


 石原は数回せきをすると、また話を続けた。


「すると、が、この山に入って行くのが見えた。追いかけると、この広場に辿り着いた。私は目を疑った。この大きな岩の周りを取り囲むように、からだ。今思い出すと、十人、いや……それ以上か。その人達は生きているかどうかもわからなかった。私は、咄嗟に彼らの方に向かって走っていこうとした。すると――」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る