第127話――最後の力
「……そうだ」
「彼女……? 一体……何の事を言ってる!?」
「触れたら、全て持っていかれる」
由良は夢の中で聞いた、その言葉を口に出した。
「……何だって?」
石原教授は由良の顔を観察するように眺めると、言った。
「君が、彼女の言ってた人物か」
「山下さん達は、本当は、ここで死んだのか……」
数秒の
「そうだ。彼女に触れたものは全員死ぬ。例外なく」
聞いていた九十九がまだ状況を理解できずに、興奮した声を上げた。
「……ここで死んだだと? じゃあ……あの……あの別の場所の遺体は? あれは……あれは、一体、誰なんだ!?」
すると、石原教授は手錠を繋がれたまま、大岩の方を軽く指差して言った。
「あれは、彼女の嘘だ」
九十九と高倉は思わず眉を
「……
――その女は、嘘をつく――
石原教授は、ゆっくりとした口調で語り始めた。
「……彼女は、兄達を本当に心から尊敬していた。自分には彼等のような『治める才』はなかったから。でも必死にそこから
石原は
「しかし、いつまで経っても兄達は来ない。だから声を出して呼ぼうとした。でも、いくら全身に力を込めても、口が塞って出せなかったんだ」
九十九と高倉は、まだ何の事を話しているのかわかっていない様子で、表情を強張らせたままだ。
「彼女は恐怖に震えた。一人、この淋しい誰もいない山奥で。そして、広場から出ようとした。突然、滝のような大粒の雨が降り出し、彼女の体に激しく叩きつけた。彼女は慌てて反対方向から出ようとした。すると、ものすごい突風が起こり、彼女を広場の中央へ引き戻した。それでも必死に逃げ道を探そうと、広場の一番奥から外へ出ようとした。今度は、炎が燃え盛り、彼女は全身に火傷を負った。その炎に触れた瞬間に、わかったんだ。その三つの呪いの中で、一番憎しみを感じたのが、火だった」
石原教授は、
「彼女は悟った。彼が兄達を
目を見開いて、尚も強く言い放った。
「彼女が最後に兄達から
その場が静まり返った。
九十九は旅館で、女将から聞かされた神話を思い出した。
(……まさか……本当に起こった事なのか……)
しかし、とてもじゃないが、
「でも……何故、あんたが?」
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