第123話――過剰反応


 弓削ゆげ半田はんだは、顔を上げて辺りを見回した。


 見ると黒の防護服ぼうごふくを着た者達が、広場の両方向から挟みうちをするように銃を構えていた。


警察けいさつだ! 今すぐ全員じゅうを捨てろ!』


 マイクから発せられた声が、広場全体に響きわたった。

 数で言うと、オレンジよりも倍近い人数だ。


 ミナカのメンバー達は、抵抗することを諦めた。

 銃をゆっくりと地面において、全員両手を上げた。


 警察の部隊は、素早く彼らの元に歩み寄って来た。

 警官の一人が、弓削ゆげに銃を向けて言った。


「拉致した警官は、どこだ!?」


 弓削は、ほくそ笑みながら答えた。


「……一体、何の話です?」


 嘲笑うかのような彼の表情を見て、警官は怒りをこらえるように、周囲の仲間達に合図をすると、声を上げた。

 

「銃器所持の容疑で、全員逮捕する――」

 

 弓削は不敵な笑みを浮かべながら一切抗わず、両手に手錠をかけられた。

 他のオレンジの防護服を着た者達も、次々と手錠をかけられていき、その中に半田や安田社長もいた。


 隊長と見られる警官が、広場の奥にある大岩を指しながらマイクに向かって声を張り上げた。


『あの大きな岩には触れるな、と報告を受けている! 近づかないように!』


 警官の一人が、何も知らず由良ゆらにも手錠をかけようとした。


 それを遠目で見ていた九十九つくも高倉たかくらが銃を構えながら、広場に足を踏み入れようとした、その時だった。


『ビビビビビビビビビビビビ――――――』


 その激しいアラーム音で、その場にいた全員が振り返った。


 黒の探知機装置から発せられており、さっきよりも大きな音だ。

 手錠を繋がれた安田やすだ社長は、その場で目を見開いた。


「……そんな……バカな……」


 傍にいた警官が彼の表情を一瞥いちべつすると、機器についていたモニターを覗き込んだ。


 思わず眉をひそめた。


「……何だ、これは……」


 画面には、長方形の棺桶かんおけのようなグラフィックが映っていた。

 その棺の隙間から、まるで漏れるようにが飛び出しているのが見えた。


 よく見ると、棺ののがわかった。


 次の瞬間だった。


 広場全体に、銃の構える音が響きわたった。


「今すぐ手錠てじょうを外せ!」

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